輪島の朝市通り 火災の焼け跡からヒヤシンス “生きる希望に”

能登半島地震に伴う石川県輪島市の大規模な火災で自宅を失った夫婦が、焼け跡の庭から母親が大切に育てていたヒヤシンスを見つけ、仮設住宅に持ち帰って水につけたところ、青色の花を咲かせました。生活再建の見通しもたたない中で、かれんな花は夫婦にとって生きる希望となっています。

輪島市の福島義浩さん(62)と妻の裕見子さん(55)は、元日に「朝市通り」で発生した大規模な火災で住み慣れた自宅を失いました。

帰省していた子どもたちや市内の介護施設に入所していた義浩さんの母、清美さん(92)はけがもなく無事でした。

ただ、以前から体調を崩していた清美さんは、最期は自宅で迎えたいという願いをかなえられないまま今月10日、亡くなりました。

火災で自宅を失ったうえ、大切な母親も亡くし悲しみに暮れる中、義浩さんと裕見子さんは家族の思い出の品を探し求めて自宅の焼け跡にたびたび足を運びました。

すると今月18日、清美さんが生前、さまざまな草花を植え大切に手入れをしてきたかつて庭だった場所で、小さなつぼみをつけたヒヤシンスを見つけました。

葉の一部は黒く焦げていましたが、2人はヒヤシンスを入居している仮設住宅に持ち帰り、焼け跡で見つけた湯飲み茶わんに水を入れてつけてみたところ、翌日、青色の花が咲き始めたということです。

2人はそのヒヤシンスを清美さんの遺影の前に供え、こまめに水をかえるなど清美さんにかわって大切に育てています。

義浩さんは「炎の中でよく耐えたと思います。諦めずに頑張れと言われているような気がします」と話していました。

また、裕見子さんは「1月1日から気持ちが止まったままでしたが、生きていればまた花は咲くのだと、勇気づけられました」と話していました。

地震からまもなく3か月。

生活再建の見通しもたたない中で、2人にとってヒヤシンスのかれんな花は生きる希望になっています。

ヒヤシンスが見つかった場所の近くでは今、新たにスイセンが黄色の花を咲かせ、チューリップも土の中から葉を広げ始めていて、2人はこれからもこの場所に通い続けたいと考えています。

裕見子さんは「これからどれくらいの花が咲くのか、それが今の唯一の楽しみかもしれません。毎日ここに来て、1日1回、希望をもらえたらと思っています」と話していました。