JR芸備線 全国初の再構築協議会 路線存続やバスへ転換など議論

広島県と岡山県を結ぶJR芸備線で厳しい経営が続く中、路線の存続やバスへの転換などを話し合う再構築協議会の初会合が、26日、広島市で開かれました。再構築協議会の開催は全国で初めてです。

広島市で開かれたJR芸備線の再構築協議会の初会合には、中国運輸局をはじめ、広島県や岡山県と沿線の自治体、それにJR西日本やバス協会、学識経験者などが参加しました。

はじめに中国運輸局の益田浩局長が、「利用状況は大変厳しく、現状をどうしていくのか、鉄道の廃止・存続の前提を置かずに、ファクトとデータに基づき、議論を進めていく。ローカル鉄道を抱える全国の自治体からも注目される中、意味のある議論をしていきたい」とあいさつしました。

備後庄原駅~備中神代駅 68.5キロ「特定区間」集中的に議論

協議会では、広島県庄原市の備後庄原駅と、岡山県新見市の備中神代駅を結ぶ68.5キロの「特定区間」について集中的に議論を行うことにしています。

26日の会議では、幹事会を設けて、鉄道の利用促進やバスに転換した場合の効果を検証するための実証事業を検討することを決めました。

再構築協議会の開催は全国で初めてで、実証事業の結果などを踏まえて、鉄道を存続させるか、廃止してバスに転換するかなど、地域の実情に沿った形で公共交通のあり方が話し合われます。

協議会では3年以内をメドに結論を出すことにしています。

存続や廃止の前提置かず 地域実情にあった公共交通のあり方議論

再構築協議会では鉄道の存続や廃止という前提は置かずに、鉄道の利便性を高めたり、バス転換の効果を検証したりする実証事業を行って、地域の実情にあった公共交通のあり方を考えていきます

具体的に想定されている実証事業としては、鉄道の増便やダイヤ変更、それに駅舎や駅前広場の活用など、利便性を高めることで実際に利用者が増えるのか検証することにしています。

また、鉄道が走る区間をバスに転換した場合の効果を検証するために、並行して走る路線バスの本数を増やしたり新たなバス路線のルートを作ったりして、利用者の増減や生活への影響などを検証することにしています。

国はこうした実証事業に年間に最大5000万円を補助することにしています。

一方、沿線の住民や利用者の意見を聞く場を設けることも検討するとしています。

協議会では、こうした実証事業の結果や利用状況のデータなどを利便性や持続可能性という観点から検証した上で、今後の公共交通のあり方を「再構築方針」として3年以内をメドにまとめることにしています。

住民「本数が増えれば利用しやすくなる」

野馳駅から歩いて1分ほどの場所に住んでいる矢田谷弥重美さん(61)です。

日常の生活では芸備線は使っておらず、買い物は県境を越えてマイカーで10分ほどのところにある広島県庄原市のスーパーなどを利用しています。

芸備線は平日でも往復11本しかなく、矢田谷さんは「芸備線を使って買い物に行く場合、最低でも往復で5時間以上かかってしまうので、現実的ではない」と話しています。

大学時代を除いて生まれてからずっと野馳駅の近くに住み続けている矢田谷さん。

自分自身も高校時代に芸備線を利用していたこともあり、本数が増えれば、周辺に住んでいる人も利用しやすくなると訴えます。

再構築協議会で議論が始まることについて矢田谷さんは、「もし無くなる場合、困るというより、さみしい。車が無い人のために、いま芸備線が走っている区間の交通手段はちゃんと考えてほしい」と話していました。

協議会参加者は

JR西日本「ニーズ踏まえ 便利で持続可能性高い交通体系に」

JR西日本広島支社 広岡研二支社長
「今後見込まれる人口減少などの環境変化、地域の移動ニーズ、特性などを踏まえ、今よりも地域にとって便利で持続可能性の高い交通体系の実現に向けた議論をしたい」

広島県庄原市「まちづくりに欠かせない」

沿線の広島県庄原市 大原直樹副市長
「高校生や高齢者などの移動を支え、まちづくりを進める上で欠かせない。日常の利便性向上に加え、交流人口の増加や地域産業の活性化など、ほかの交通モードに代えがたい新たな価値や役割を最大限追求したい」

広島県「費用負担重いが 地域の持続可能性が大きな観点」

広島県 玉井優子副知事
「中山間地域では少子高齢化による人手不足で、地元の交通事業者や自治体にとって、公共交通にかかる費用負担は重く、地域の持続可能性が大きな観点になる。移動の利便性の向上や潜在需要の掘り起こしなど、あらゆる取り組みを展開し、芸備線の可能性を最大限追求することが必要だ」

岡山県「JRが現行通り運行するのがベスト」

岡山県 上坊勝則副知事
「引き続きJRが現行通り運行するのがベストだと考えている。地域住民の生活を守ることを第一に考えながら、具体的な方策について幅広く検討しながら議論していきたい」

岡山県新見市「なくてはならない移動手段」

岡山県新見市 野間哲人副市長
「新見市は鉄道とともに発展してきた。現在も高校生や高齢者にとってなくてはならない移動手段となっている」と存続を求めました。
そして、協議会の対象が芸備線全線となり、広島県内の区間が長くなっていることを念頭に、「協議の中で地域間での偏りが出ないよう配慮をお願いしたい」と述べました。