高校野球 報徳学園 タイブレークで愛工大名電にサヨナラ勝ち

センバツ高校野球、大会5日目の第3試合は、兵庫の報徳学園が愛知の愛工大名電高校に延長10回タイブレークの末、3対2のサヨナラで勝って2回戦に進みました。

第3試合は、いずれもセンバツ優勝経験があるチームどうしの顔合わせとなりました。

23回目の出場となる報徳学園は、去年の準優勝に貢献したピッチャーの1人で背番号「10」の今朝丸裕喜投手が先発し、最速で140キロ台後半の速球とキレのあるスライダーで7回を投げて1点に抑えました。

8回からは、エースナンバー「1」でキャプテンの間木歩投手が延長タイブレークの10回まで投げて、10回の1点だけに抑え、1点を追う展開で10回ウラを迎えました。

その攻撃で報徳学園は押し出しで同点に追いついたあと、続く4番の齋藤佑征選手がセンターにタイムリーヒットを打ち、3対2のサヨナラで勝って2回戦に進みました。

愛工大名電は先発した背番号「10」の伊東尚輝投手が、こちらも力のあるボールを武器に最後まで1人で投げ抜きましたが、129球目の速球が甘く入って力尽きました。

《報徳学園 監督・選手談話》

大角監督「ふだんの練習 大舞台で選手たちが発揮」

報徳学園の大角健二監督は「ロースコアで粘っていこうと言っていたので、うちの流れだった。ふだんから、球際や1球1球を大事に練習してきたが、大舞台で選手たちがそれを発揮してくれて、想像以上にいい守備をしてくれた。また、センター方向にいい打球が飛んでいたが、タイムリーがもう少しでたらよかった」と試合を振り返りました。
そして7回、先発して好投していた今朝丸裕喜投手の打席で、貞岡拓磨選手を代打に起用し、同点のタイムリーヒットにつながったことについては「流れを変えてほしいと思い、何かをしないといけないと感じて代打に送った。賭けだったが、うまくはまった」と話していました。

サヨナラ打 齋藤佑征選手「ホッとした」

10回にサヨナラのタイムリーヒットを打った報徳学園の4番・齋藤佑征選手は「ストライクゾーンにきた球は振るつもりで入ったので、打った時は勝ててよかったというかホッとしました」と振り返っていました。
また、守りでいいプレーが続いたことについては「練習で球際をこだわっていたので、それが出たのは本当によかったと思います。秋は投手の2人に支えられてばかりだったので、センバツは、僕たちが支えるという意識でやりました」と話していました。
そして「応援の声が届いていたので、応援のために絶対に頑張ろうと思いました。日本一しかないと思っていますが、目の前の一戦を意識しないと、簡単に負けてしまうので、目の前の一戦を大事にしていきたいです」と力強く話してました。

今朝丸裕喜投手「最少失点に抑えられよかった」

報徳学園の今朝丸裕喜投手は、22日の投球について「90点」と自己評価したうえで「秋から冬にかけてメンタルを一番変えたので、気持ちの面では余裕がありました。1点を取られた時に、もう1点取られたら、やばいと思っていたので、最少失点に抑えられてよかったです」と振り返りました。
また、バックの堅い守りについては「何個もファインプレーがあり、特にライトの安井選手が好返球で、サードでアウトにした場面が一番『乗れた』というか、うれしかったです」と話していました。
そのうえで、2回戦に向けて「フォークが浮いてしまったので、『絶対に落としきる』ということが課題です。一戦必勝とチームでも決めているので、次の一戦一戦も勝っていきます」と話していました。

《愛工大名電 監督・選手談話》

倉野監督「十分納得できる試合ができた」

愛工大名電の倉野光生監督は「報徳学園の守備の粘りに屈しましたが、選手たちも粘り強く戦いました。甲子園で十分納得できる試合ができたと思います」と振り返りました。
10回途中129球と最後まで投げ抜いた先発の伊東尚輝投手については「ここまで球数を投げるような練習をしてこなかったので、『100球あたりで交代させないと』と思っていましたが、試合の流れを見ても伊東投手の次に登板する投手は大変だと思ったので、最後まで託しました。十分自信になったと思います」とねぎらいました。
そのうえで「非常にいい経験ができたし、私自身もさらに勝ちに対する意欲を持たないといけないと感じました。夏は愛知県の4連覇がかかっているので、まずは甲子園に出て、その上をねらえるように早速あしたから練習をしていきます」と前を見据えていました。

伊東尚輝投手「エースになって甲子園に戻ってきたい」

愛工大名電の伊東尚輝投手は「前半は報徳学園打線を抑えることができてよかったですが、後半失点してチームが負けてしまったので悔いが残る結果となりました」と涙を浮かべながら振り返りました。
サヨナラ負けとなった場面については「10回表にチームが1点を取ってくれたので、その1点を守りたかったのですが、打たれてしまったので悔しいです。ただ、全国でも強いとされている報徳学園に自分のストレートが通用したことは自信になりました」と話していました。
そして、最後の夏の大会に向けて「左バッターに対して空振りが取れるようなフォークやチェンジアップを夏の大会までに習得してエースになって甲子園に戻ってきたいと思います」と意気込んでいました。

◇愛工大名電の打線支えた “プレーしない”3人の部員

愛工大名電高校は接戦の末に敗れましたが、去年の準優勝校を最後まで追い詰めました。その打線を支えたのは「アナリスト」と呼ばれる3人の野球部員たち。野球のプレーはせずに、平日の2日間と休日に練習に参加して、データの分析を専門に行っています。

彼らが分析するデータは、プロも使っている機械で計測した、投手が投げるボールの回転数や変化量、そして打球の速度や角度などです。それらをタブレットを使って選手に共有しているのです。

このうちバッティングでは、新チーム発足以来「角度が15度の打球」を目指してきたといいます。

なぜ15度なのか。理由は、反発力を抑えた「飛ばないバット」です。長打が期待できないとして、シングルヒットを重ねていくために鋭く、そして、ちょうど内野と外野の間に落ちるという角度として「15度」を設定したということです。

また練習では、アナリストが1球1球、打球の角度を伝えてきました。成果は早速、22日の試合であらわれました。

0対0の、6回の攻撃。3番の石見颯真選手がレフト前に鋭い打球を打って塁に出ました。試合後、石見選手は「飛ばないバットなので、『15度の角度』で内野手の頭を越すイメージで打席に立ちました」と、“アナリスト効果”を語りました。

2アウト二塁となって5番・宍戸琥一選手は、しぶとくセンター前に運ぶヒットを打ち、先制のタイムリーとしました。

この打席について、宍戸選手は「どうしても点が欲しい場面だったので、長打をねらうのではなくて『15度の打球』のヒットで次につなぐ意識で打席に入りました。アナリストが1球1球、角度や打球速度を計測してくれてきたことが結果に生きてきたと思います」と話していました。

その雄姿をアルプス席から見守った若きアナリストたち。3人の存在は「高校野球新時代」の到来を感じさせるものとも言えそうです。