小林製薬 「紅麹」の成分含む健康食品を自主回収

大阪市に本社がある「小林製薬」は、「紅麹(べにこうじ)」の成分を含む健康食品を摂取した人が腎臓の病気などを発症したことが報告されたと明らかにしました。会社では「健康食品が原因となった可能性がある」として、この成分を含む3つの健康食品を自主回収するとともに、使用を中止するよう呼びかけています。

会社が自主回収することを発表したのは、「紅麹」の成分を含む、
▼「紅麹コレステヘルプ」
▼「ナットウキナーゼさらさら粒GOLD」
▼「ナイシヘルプ+コレステロール」の
3つで、いずれもコレステロールや血圧を下げる効果を記した健康食品です。

会社の発表によりますと、ことし1月、「紅麹コレステヘルプ」を摂取した人が腎臓の病気などを発症したことが報告されたということです。

その後、体調不良が報告された患者の数は13人に増え、このうち6人が入院が必要となり、一時、人工透析が必要になった人もいるということです。

会社によりますと、腎臓の病気を発症した人が摂取した製品には同じロットの原料が使われていて、分析の結果、想定していない成分が含まれている可能性があることがわかったということです。

「紅麹コレステヘルプ」は2021年に販売を始めて以降、ことし2月までにあわせて106万袋が販売されています。

会社では「健康食品が原因となった可能性がある」として、商品およそ30万個を自主回収するとともに、持っている人には今後使用しないよう呼びかけています。

「腎疾患で一時6人が入院 現在も7人が通院」会見で

小林製薬は22日午後6時から大阪市内で記者会見を開きました。

会見の冒頭で小林章浩社長は「商品の成分分析をした結果、本来想定していない成分が含まれていることが判明しました」と述べた上で、商品を自主回収すると発表しました。

そして「健康を害されたお客様に深くおわびを申し上げるとともに、使用しているお客様には直ちに使用の中止をお願いいたします。このたびは申し訳ございませんでした」と述べ、謝罪しました。

記者会見で渡邊淳 信頼性保証本部長は、「腎疾患などによって一時6人が入院したほか、現在も7人が通院している」と明らかにしました。

腎疾患を発症したのは40代から70代の男女です。むくみやけん怠感、それに尿の色が濃くなるといった症状を訴えていて、このうち2人は一時、人工透析が必要な状態になったということです。会社側は詳しい病名を明らかにしていませんが、腎臓の機能が低下したと説明していて、入院した6人のうち5人はすでに退院しているということです。

渡邊 信頼性保証本部長は、腎疾患と製品との関連は調査中だとした上で、「腎疾患を発症した人が摂取していた製品にはいずれも同じロットの原料が使われており、分析したところ、私たちが想定していない成分が含まれている可能性があることがわかった。この成分がなにかまだ特定できていないが、紅麹を培養する過程で作られるという報告があるシトリニンという毒素は検出されなかった。大学の研究室とともに調査を進めていて、人体への影響が分かりしだい伝えたい」と説明しました。

また、小林社長は、今回の公表や自主回収のタイミングについて「事実確認や原因究明にかなり努力したが、結果として時間がかかり、大変申し訳なく思っている。判断が遅かったと言われたら、そのとおりだと感じている」と述べました。

そして「品質に関しては万全だと考えていたが、品質管理体制のうえで結果としては不足と言わざるをえない状況だと思う。必ず原因を究明し、再発防止に努めたい」と述べました。

小林製薬の対応の経緯

小林製薬が記者会見で明かした経緯です。

それによりますと、ことし1月から2月にかけて、医師や患者本人から会社に対して、あわせて6人の症例について連絡があったということです。

2月5日、小林製薬は社内で対応を協議し、原因として、製造過程でできる、▽「米紅麹ポリケチド」や▽「シトリニン」、それに、▽「異物または不純物の混入」、▽「アレルギー」の、4つの可能性を検証するよう、研究部門に対し指示したということです。

中でも、紅麹を作る過程でできることがある「シトリニン」という毒素については、医師からも製品に含まれていないかと問い合わせがあったということですが、原料となった紅麹からは検出されませんでした。

このため会社は、紅麹が作る化合物の「米紅麹ポリケチド」が原因ではないかと考え、2月22日に医師と面談したものの、医師からは「米紅麹ポリケチドによるものではなく、アレルギー反応による症状の可能性が高い」という見解が示されたということです。

その後、腎臓の病気を発症した人が摂取していた製品の製造過程をさかのぼって調べたところ、いずれも同じロットの原料が使われていることが分かったということです。

そのため、3月16日に、製品に使われたすべての原料の生産時のデータや、原料を使った製品を改めて分析したところ、一部の製品と原料に製造過程で意図していない成分が含まれている可能性があるという結果が出たということです。

この成分が何かはまだ特定できていないということで、大学の研究室とともに調査を進めているということです。

この結果を受けて、小林製薬は3月18日に緊急対策本部会を開くなどしたほか、22日の臨時の取締役会を経て、公表しました。

「紅麹」とは

「紅麹」は、米などの穀類に紅麹菌を繁殖させてつくられたもので、古くから食品の着色料などとして使われてきました。

紅麹の「ロバスタチン」という成分にはコレステロールを低下させる作用があるとされ、紅麹由来の健康食品などが多く販売されています。

一方、紅麹菌の中には「シトリニン」というカビ毒をつくるものもあり、腎臓の病気を引き起こすおそれがあるとされています。

国の食品安全委員会によりますと、ヨーロッパでは紅麹由来の健康食品による健康被害が報告されていて、EU=ヨーロッパ連合は健康食品に含まれる「シトリニン」の基準値を設定しているということです。

小林製薬によりますと、今回の報告を受けて成分を分析したところ、「シトリニン」は検出されなかったということです。

一方で、「シトリニン」とは別の未知の成分の存在を示す分析結果が得られたということで、「意図しない成分が含まれている可能性が判明した」としています。