高校野球 センバツ 神村学園が作新学院に勝ち2回戦へ

センバツ高校野球、大会5日目の第1試合は、鹿児島の神村学園が栃木の作新学院に6対3で勝って2回戦に進みました。

神村学園は2回、2番の増田有紀選手のタイムリーツーベースで1点を先制し、3回には4番の正林輝大選手のライトポール際への今大会第2号となるソロホームランで1点を追加しました。

さらに、5回には1アウト満塁からキャプテンの川下晃汰選手のタイムリー内野安打で、リードを4点に広げました。

投げては、先発の上川床勇希投手からの小刻みな継投で相手の強力打線を3点に抑え、神村学園が6対3で勝って2回戦に進みました。

作新学院は6回、5番の柳沼翔選手がタイムリーヒットを打つなど、相手を上回る13本のヒットを打ちましたが、決め手を欠いて敗れました。

《神村学園 監督・選手談話》

小田大介 監督「みんな全身全霊で自分の持ち味を発揮」

4人のピッチャーの投手リレーで勝った神村学園の小田大介監督は「粘り強く攻撃していくしか勝機はないと思っていました。大会を通して『魂の継投』でいこうと話していたので、みんな全身全霊で自分の持ち味を十二分に発揮してくれた」と振り返りました。
また、新基準のバットについては「バットが変わったからといってやることは特に変わりません。思ったよりも飛距離が出ているなと思います。飛ばすことが野球ではなく、細いバットの芯にどう当てるかだと思っています」と話していました。
次の試合については「きょうは勝ったので100点です。ただ、勝ったなかでも、まだまだできたことがあるので守備のミスは修正して次の試合に臨みたい」と話していました。

正林輝大 選手「HRをことしは打ててよかったです」

大会第2号のホームランを打った神村学園の正林輝大選手は「1打席目は自分のペースで入ることができなかったのですが、2打席目は自分のペースをしっかり意識して立つことができました。ホームランを打ちたいと思っていましたが、去年はかなわなかったのでことしは打ててよかったです」と話していました。
8回のヒットについては「中盤苦しい場面もありましたが、ピッチャーも粘ってくれていたのでその期待に応えられてよかったです」と話していました。
また、応援に来ている家族については「家族は自分が全力でプレーする姿を一番喜んでくれると思うので、見せることができてよかったです」と話していました。

上川床勇希 投手「久々のマウンドが甲子園でうれしかった」

指の骨折があり1年生の秋以来の登板だった神村学園の上川床勇希投手は「緊張もありましたが、久々のマウンドが甲子園でうれしかったです。自分が投げるとは親も思ってなかったと思うので、びっくりしたかなと思います」と話していました。
次の試合については「どのチームとあたるかまだ分かりませんが、勝ったチームのデータをしっかりとって、万全な状態で臨みたいです。みんなでつないでいくという神村野球をもう一度展開して、日本一という目標に向かっていきたいです」と意気込みました。

《作新学院 監督・選手談話》

小針崇宏 監督「あと1本を打たせてやれなかった」

作新学院の小針崇宏監督は「ヒットを重ねてチャンスを作ったが、あと1本を打たせてやれなかった。タイムリーが出れば点差が縮まったと思う」と敗因について語りました。
また、神村学園の印象について「先発投手は、大事な場面で制球がよく、キレや伸びがあり、よいピッチャーだと感じた。バッターもスイングスピードが速く、振りが鋭いし、走力もあった」としたうえで「うちもスピードを上げるなど宿題を持ち帰りたい」と前を向いていました。
また、エースの小川投手については「球が浮くなど制球がいつもよりよくなかった。全国で負けを経験し、反省を生かして、これから何をしていくかが大切だと思う」と、エースの成長に期待を寄せていました。

小森一誠 主将「準備不足だった」

作新学院のキャプテン、小森一誠選手は「序盤のところで相手に主導権を握られてしまいました」としたうえで、神村学園の先発投手については、「全く想定していないピッチャーだったので、なかなか対応できなかったです。強くて低い打球を打てれば自然と打線がつながってくると思いましたが、スピードも打ちごろの球だったので、逆に欲が出て、フライなどが多くなってしまいました」と試合を振り返りました。
また、課題については「初回からマックスでプレーができなかったところに、準備不足だったという思いがあります。私生活や野球にのぞむにあたって、準備のところをしっかりやっていきたいです」と話していました。
そして「2024年初めての公式戦をここでできたことはものすごくよい経験だなと思ったので、自分たちの高校野球人生がまた甲子園で終えられるように頑張りたいです」と前を向いていました。

エース 小川哲平 投手「夏に必ず戻ってくる」

作新学院のエース、小川哲平投手は、22日の自分の投球内容を40点として「作新学院のエースを背負っている以上、9回を投げぬいて、チームの勝利に貢献するのが前提だと思うので、そこができなかったのが、自分の中で課題になりました」と話しました。3回にホームランを打たれた場面については「カットボールが少し甘く入ってしまいました」と振り返りました。
そして「多くの人に支えられて甲子園でプレーできています。勝利で恩返ししたいので、夏に必ず甲子園に戻ってきて、恩返ししたいです。チームの勝利に貢献できるピッチャーになりたいし、1番を背負っている以上、精神面や技術面など全体的にレベルアップしたいです」と今後に向けた決意を語りました。

◇作新学院 目を引く吹奏楽部の赤いユニフォーム

およそ1000人の応援団がかけつけた作新学院のアルプス席。目を引いたのが吹奏楽部の赤いユニフォームです。

実はこのユニフォーム、元日の地震で大きな被害が出た能登半島の先端にある石川県珠洲市の高校から縁があって譲り受けたものです。

もともとこのユニフォームを使っていた珠洲実業高校は2010年3月に閉校し、吹奏楽部も長年にわたる活動に終止符を打ちました。

生徒たちの思い出が詰まった吹奏楽部のユニフォームは、ひっそりと倉庫で眠っていましたが、かつて顧問を務めていた喜多忠男さんが思い入れのあるユニフォームをそのままにしておくのはもったいないと、譲り先を探しました。

そこで縁があったのが作新学院の吹奏楽部。喜多さんは「野球の名門校に託せば、甲子園で使ってもらえる夢と希望がある」と考え、2019年に譲ることを決めました。

作新学院吹奏楽部の部員たちに「絶対に甲子園で輝かせて」と伝えた喜多さん。

その夢はついに去年、実現しました。

甲子園を訪れ、実際にユニフォームで演奏する部員を見た喜多さんは「ユニフォームを着て演奏する姿を10数年ぶりに見て、涙が出た」と話します。

喜多忠男さん

そして、ことしも作新学院のアルプス席には、喜多さんの姿がありました。

現在、石川県能登町で暮らす喜多さんは、自宅で地震に襲われ、家の倒壊は免れたものの、1か月余り断水が続き、お風呂には入れず、給水所に通う日々だったと言います。

喜多さんは「地震で能登に大きな被害が出ている。ユニフォームを着て演奏しているところを珠洲の皆さんにテレビを通じて見てもらい、思い出してくれたらうれしい。能登の人たちを元気づけられたら」と話していました。

作新学院の吹奏楽部の宮田心春部長は「このユニフォームは丈夫で温かい。つないでくださった人たちの思いものせて、演奏したい」と話していました。

吹奏楽部の演奏は、選手たちだけでなく、被災地の人たちへも思いを届けます。

神村学園 上川床勇選手 去年は打者 ことしは投手でも

およそ1年ぶりの公式戦のマウンドとなった神村学園の上川床勇希投手。

去年夏の甲子園での躍進を打者として支えた「背番号7」が投手としても力を発揮し、チームに勝利をもたらしました。

試合30分前に行われた監督取材。

神村学園の小田大介監督は先発投手を問われた際、「上川床でいきます」と答え、去年秋の大会で登板がなかった「背番号7」の抜てきは、報道陣を驚かせました。

それは本人も同じでした。

試合開始1時間前のメンバー発表で初めて先発を言い渡されたいうことで、「野手として出場するものだと思っていました。相手の好投手をどのように打つかばかり考えていたのでびっくりしました」と振り返りました。

実は上川床投手、もともとピッチャーとして神村学園に入学しましたが、去年の夏、鹿児島大会の決勝の前日、練習中に中指を骨折するアクシデントに見舞われました。

それでも打撃力を買われ、去年夏の甲子園では全5試合に野手として出場し、打率5割の成績でベスト4進出に貢献しました。

その後、秋の大会になっても指のケガは完治せず、冬場もほとんど投げ込みができないまま野手に専念して練習を重ねてきました。

ことしに入って投手をする機会があり、準備はしていたといいますが、去年の春以来、1年ぶりの公式戦でのマウンドが甲子園の大舞台となりました。

ストレートの球速は130キロ前後と決して速くはありませんが、カーブやスライダーといった変化球を使って緩急をつけ、打たせてとるピッチングに徹しました。

3回のノーアウト満塁のピンチでは変化球を続けたあと、最後はストレートで空振り三振。

6回に味方のエラーが重なって失点しマウンドを譲りましたが、7個の三振を奪う堂々のピッチングでチームの勝利につなげました。

試合後「去年、外野から見ていた憧れのマウンドだったので楽しかったです。またピッチャーをやれるといううれしさが大きいです」と話した上川床投手。

全国ベスト4に輝いた去年夏の成績を超えるため、ことしは打者だけではなく、投手としてもチームに貢献する決意です。