「涙が出ました、おいしかった…」輪島の老舗食堂が仮店舗で

カツ丼を食べながら、涙を流す人がいました。

地震で半壊し、営業休止を余儀なくされていた石川県輪島市の老舗の食堂。

21日から仮店舗での営業を再開しました。

地震の被害を受けた店舗

輪島市の中心部で、昭和初期からおよそ100年続く「萬正食堂」は、元日の地震で店舗が半壊するなど大きな被害を受け、営業休止を余儀なくされました。

4代目の店主、萬正光さん(36)は、2キロほど離れた事務所を幼なじみから提供してもらい、地元の仲間たちの協力も得て仮店舗での営業再開にこぎ着けました。

開店前の萬正さんは、こう話していました。

「天候が天候なので、どのくらいのお客様が来てくれるかっていうのは不安であり、ワクワクであり、ドキドキであり、っていう感じですね」

そして、午前11時半に開店。

営業再開を聞きつけた常連客が次々に訪れました。

「いらっしゃいませ~」

(お客さん)
「3人入れそう?」

「はい、3人どうぞ~」

(お客さん)
「じゃあ車止めてくる」

地震の影響で食材の仕入れが難しいため、メニューは当面日替わりのみの提供です。

初日の日替わりメニューはカツ丼です。

訪れた常連客はなじみの味に顔をほころばせ、中には涙を流す人もいました。

店を訪れた30代男性
「久しぶりすぎて涙が…。おいしいです。最高です。去年以来ですよね。4ヶ月くらいですかね。ちょっと日常を取り戻したかなと思いました」

「味は全然違いますか」とたずねると。

「違いますね。あったかい食事を食べられるっていうのは、震災の感じとは全然違いますね。やっぱり一歩ずつみんな進んで、日常を取り戻そうとしてるんやなっていうのは実感できますし、それが伝わって「じゃあ、自分たちも頑張ろうかな」って思います」

訪れたお客さん

別のお客さんにも聞きました。

「おいしいです。待っとったもん、ずーっと。早くやらんかなと。来年の夏以降やと言っとったもんね。ショック受けて。来年の夏かぁって。だって毎週通ってました」

「いやホントおいしい。輪島の食堂なんか、しばらく食うとこないんだろなって。いつも炊き出し行ったり、コンビニ行ったり。うれしいね、ほんとに。ご飯とお汁ついとるの、うれしい」

食堂では、今後クラウドファンディングで資金を集め、元の店舗での営業再開を目指していくということです。

萬正さん
「課題がいっぱいありすぎて、どれから手を付けていいかまだ分からないので、ここで料理をしながら解決していければと思っています。徐々に徐々にでいいので、またこうやって昔のお客様であったり、そういった方が訪れてくれればなと。そういった顔を見るだけでもうれしいですし、そうなってくれれば一番うれしいです」

(能登半島地震取材班 有坂太信)