【詳細】イスラエル首相 ラファへの地上作戦の準備強調

イスラエルのネタニヤフ首相は、ガザ地区南部ラファへの地上作戦について「近く、住民の避難計画を承認する」と述べ、準備を進めていると改めて強調しました。
こうした中、アメリカは地上作戦に代わる計画の検討に向けてイスラエルへの働きかけを続けています。

※イスラエルやパレスチナに関する日本時間3月21日の動きを随時更新してお伝えします。

イスラエル首相 ラファへの地上作戦「住民の避難計画承認する」

イスラエルのネタニヤフ首相は20日、国民向けの演説で、避難者を含む150万人近くが暮らすガザ地区南部ラファへの地上作戦について「近く、住民の避難計画を承認する。ラファに入る準備をしていて、これにはまだ時間がかかるだろう」と述べて、準備を進めていると改めて強調しました。

アメリカ 地上作戦に代わる計画の検討働きかけ

国際社会の懸念が強まる中、アメリカのバイデン大統領は地上作戦に代わる計画についての協議をネタニヤフ首相に要請し、イスラエル政府の高官がアメリカを訪れて来週にも協議が行われる見通しです。

こうした中、アメリカのオースティン国防長官は20日、イスラエルのガラント国防相と電話会談し、イスラム組織ハマスの打倒という共通の目標を強調する一方、ラファへの地上作戦に代わる計画を検討することの必要性を提起したということです。

一方、イスラエルとハマスとの間の戦闘の休止と人質の解放などをめぐる交渉について、アメリカのブリンケン国務長官は20日、サウジアラビアのメディアに「双方の間の溝は埋まりつつあり合意は可能だ」と述べて、期待を示しました。

ただ、ハマスの幹部は20日の会見で「イスラエルの反応は否定的で、私たちの要求には応えていない」と述べていて、交渉は依然、難航しているものとみられます。

“戦闘休止などめぐる交渉難航” ハマス幹部

イスラエルとイスラム組織ハマスの戦闘休止などをめぐる交渉について、ハマスの幹部は記者会見で交渉は難航しているという認識を示しました。

中東のカタールではイスラエルとハマスの間の戦闘休止と人質解放などをめぐる交渉が行われていますが、20日、ハマスの幹部、ハムダン氏は、レバノンの首都ベイルートで開かれた記者会見で「イスラエルは否定的で、私たちの要求には応えていなかった」と述べ、イスラエル側を批判しました。

イスラエル軍 ガザ地区最大の病院で戦闘員約90人殺害と発表

イスラエル軍はガザ地区各地での攻撃を続けていて、南部ラファでは、ハマスの作戦指揮などを担っていた戦闘員を殺害したほか、ガザ地区最大のシファ病院では、およそ90人の戦闘員を殺害し160人以上を拘束したと、20日に発表しました。

ガザ地区の保健当局によりますと、20日、過去24時間に104人が死亡し、これまでの死者は3万1923人にのぼると発表しています。

また、パレスチナの水道当局は、攻撃によってガザ地区の水道インフラの4割が使用できなくなり、住民が使える水の量は攻撃前に比べておよそ30分の1にまで減っていると警告しています。

米国務長官 中東地域の訪問開始

人道状況が悪化の一途をたどるなか、中東のカタールでは、イスラエルとハマスの間の戦闘休止と人質解放などをめぐる交渉が行われていますが、ネタニヤフ首相は交渉が再開されたあとも避難者など150万人近くが住むラファへの地上作戦を行う構えを崩していません。

国際社会からはラファへの攻撃は多くの住民の犠牲につながるとして強い懸念が示されるなか、アメリカのブリンケン国務長官が20日にサウジアラビアに到着して中東地域への訪問を始めました。

国務省は、ブリンケン長官が22日にイスラエルを訪れると明らかにし、ラファへの作戦についても協議し、民間人の保護が必要だとする考えを強調するとみられます。

ガザ地区で活動の医師が即時停戦訴える

ガザ地区で医療活動を行った、アメリカ、イギリス、それにフランスのあわせて4人の医師が、19日、ニューヨークで会見を開き、現地の窮状を伝えるとともに即時停戦を訴えました。

このうち、ロンドンの慈善団体から派遣され、ことし中部デルバラハのアルアクサ病院で活動したニック・メイナード医師は、「ある子どもは顔の骨が見えるほどのやけどをしていた。しかし、鎮痛剤がなかったため、彼女は苦しみながら救急外来の床で亡くなるほかなかった」と述べ、ガザ地区の過酷な状況を説明しました。

また、「もし南部ラファに地上侵攻があれば、本当に多くの死者が出る。ラファには集中治療用のベッドがない。状況は計り知れないほど悪化するだろう」と述べた上で、「援助を必要な場所に届けられる唯一の方法は停戦だ」と訴えました。

また、アメリカのNGOに勤めるザヒア・サフール医師は、「この状況に影響を与えることができる国はアメリカだけだ。ホワイトハウスのNSC=国家安全保障会議のスタッフや議員、国務省の関係者と話をして、私たちが知っていることを確実にわかってもらいたい」と述べ、医師団はワシントンを訪れ、バイデン政権などの関係者と面会することを明らかにしました。

UNRWAについて 検証グループが評価の中間報告を提出

ガザ地区の支援を担っているUNRWA=国連パレスチナ難民救済事業機関について、中立性を確保して活動しているかを評価する独立した検証グループが20日、中間報告を国連に提出しました。

UNRWAをめぐっては、一部の職員が去年10月のイスラム組織ハマスによるイスラエルへの攻撃に関与した疑いが出たことを受けて、アメリカや日本などが資金拠出を停止していて、検証グループが調査を進めています。

中間報告の内容は公表されていませんが、国連の報道官によりますと、「UNRWAは中立性と人道主義の原則を守るために、相当な数の仕組みや手続きを導入していることが判明した」と評価する一方で、「重要な分野でまだ取り組むべきことがあることも明確になった」と課題も指摘しているということです。

検証グループのトップを務めるフランスのコロナ前外相は、21日にUNRWAへの資金拠出国などに中間報告の内容を説明するということです。

検証グループでは今後、UNRWAの組織を強化し改善していくための具体的な提言をまとめる予定で、4月20日に最終的な報告を行うことになっています。