【詳細】ロシア ウクライナに軍事侵攻(3月21日の動き)

ロシアによるウクライナに対する軍事侵攻が続いています。

ウクライナの各地でロシア軍とウクライナ軍が戦闘を続けていて、大勢の市民が国外へ避難しています。戦闘の状況や関係各国の外交など、ウクライナ情勢をめぐる3月21日(日本時間)の動きを随時更新でお伝えします。

(日本とウクライナとは6時間、ロシアのモスクワとは6時間の時差があります)

キーウなどに大規模ミサイル攻撃 少なくとも13人けが

ウクライナでは21日、首都キーウなどにロシア軍による大規模なミサイル攻撃があり、迎撃したミサイルの破片が落下して少なくとも13人がけがをするなど被害が相次いでいます。

ウクライナ空軍は21日早朝、ロシア軍が首都キーウなどに対し31発のミサイルで攻撃を仕掛け、これを迎撃したと発表しました。

ミサイルは、ロシア軍のツポレフ95長距離戦略爆撃機から発射され、ロシア側が極超音速ミサイルだとするキンジャールも含まれていたとしています。

キーウのクリチコ市長は、迎撃したミサイルの破片が幼稚園の敷地に落下したり、住宅に落ちて火災が起きたりするなど各地で被害がでているとしていて、地元の当局者によりますと子どもを含む少なくとも市民13人がけがをしたということです。

首都キーウのクリチコ市長によりますと、21日の攻撃によって、市内の3つの地区で被害が出たということです。

このうち少なくとも6人がけがをした住宅街では、交差点の真ん中に落下したミサイルの一部によるとみられる直径5メートル、深さ2メートルほどの穴があき、捜査当局がミサイルの破片を集めるなどしていました。

周りでは集合住宅のほとんどの窓が窓枠ごと吹き飛んだり、止めてあった車の形がひしゃげたりするなど、爆発による衝撃の大きさをうかがわせていました。

近所に住む39歳の男性は「寝ていたときに大きな音がしたので、子どもたちを守るためとっさに覆いかぶさった。その後、2度目の爆発が起き、窓ガラスが粉々に割れた。とても怖かった」と話していました。

キーウでは先月7日も集合住宅に無人機が突っ込み火災が起きるなど、ロシア軍の攻撃の脅威にさらされ続けています。

ゼレンスキー大統領 防空システムのさらなる支援訴え

ウクライナのゼレンスキー大統領は21日、SNSで「キーウに対してロシアが新たなミサイル攻撃を行った。負傷者も出ている。毎日、毎晩、こうした恐怖がある」としてロシア軍の攻撃を非難しました。

そのうえで「世界が結束し、われわれを防空システムで助けてくれたら阻止することができる。ロシアのテロリストはパトリオットなどを回避できるミサイルは持っていない。ウクライナはいま、こうした防御を必要としている」として、地対空ミサイルシステム「パトリオット」など各国に防空システムのさらなる支援を訴えました。

ウクライナ側からの越境攻撃とみられる動き続く

一方、ウクライナと国境を接するロシア西部のベルゴロド州ではウクライナ側からの越境攻撃とみられる動きが続いていて、プーチン大統領はロシア大統領選挙に対する妨害行為だとして報復を示唆していました。

また、ロシアのショイグ国防相は20日の会議で、ウクライナ軍がベルゴロド州とクルスク州への侵入を試みたとしたうえで「過去8日間の戦闘で3500人以上の損失を与えた。敵はすべて撃退され、ロシア領土から追い出された」と主張しました。

ただ、ロシア国防省は21日もベルゴロド州でウクライナ側がロケット弾を打ち込むなど越境攻撃があったとしていて、攻防が続いているとみられます。

プーチン大統領 選挙圧勝弾みにウクライナ侵攻進める姿勢強調

ロシアの大統領選挙で圧勝したプーチン大統領は20日、モスクワのクレムリンで、選挙戦を支援した代表たちを前に演説しました。

この中で、ウクライナと国境を接するロシア西部ベルゴロド州で、ウクライナ側からの越境攻撃とみられる動きが続いていることに言及し、「第一の目標は安全を確保することだ」と述べ、国境地帯の対策を強化する考えを示しました。

そのうえで「大統領選挙での勝利はロシアが必ず実現する勝利の序章にすぎない」と述べ、選挙での圧勝も弾みにウクライナへの軍事侵攻を進める姿勢を強調しました。

また、プーチン大統領は前日の19日もクレムリンに議会の各党の代表を招いて会合を開き、結束を強調しました。

この会合でロシア共産党のジュガーノフ党首が「あなたの最初の訪問が西側ではなく東側であることを願っている。中国の習近平国家主席はあなたの訪問を待っている」と述べたのに対し、プーチン大統領は「必ず検討する」と応じました。

これに先立ち、ロイター通信は複数の関係者の話として、プーチン大統領がことし5月、通算5期目の就任式に臨んだあと、初めての外遊先として中国を訪問し、習主席と首脳会談を行う見通しだと伝えています。

米大統領補佐官 “軍事支援やり遂げられると確信”

アメリカ ホワイトハウスで安全保障政策を担当するサリバン大統領補佐官は20日、ウクライナの首都キーウでイエルマク大統領府長官と会談したあと、会見しました。

この中でサリバン大統領補佐官は、アメリカ議会で野党 共和党の一部がウクライナへの軍事支援に消極的な姿勢をとり、追加支援のための緊急予算が暗礁に乗り上げていることについて、「議員、そしてアメリカ国民の間には、今もウクライナへの深く、強い支持がある。現在、可決に向け下院と取り組んでいるが、必ずやり遂げられると確信している」と強調しました。

一方、イエルマク大統領府長官は、ウクライナが各国と進めている2国間の安全保障協定について、すでに40か国近くと結んだことを明らかにした上で、アメリカとも署名の準備を進めているとし、「歴史的な合意になるだろう」と述べました。

EU “ロシア凍結資産の利子でウクライナ支援” 加盟国に提案

EU=ヨーロッパ連合は、ウクライナ侵攻を受けて凍結してきたロシア中央銀行の資産から得られる利子をウクライナへの支援に活用する方針をまとめ、加盟国に提案しました。

EUの執行機関にあたるヨーロッパ委員会は20日、ウクライナへの軍事侵攻を受けて、制裁として域内で凍結してきたロシア中央銀行の資産およそ2100億ユーロ、34兆円余りから得られる利子をウクライナへの支援に活用する方針をまとめ、加盟国に提案しました。

年間25億から30億ユーロ、4000億円から5000億円程度が見込まれていて、EUは、このうち90%を軍事支援に、残りの10%をウクライナの復興や防衛産業強化のための資金支援に活用したい考えです。

ロシアの凍結資産をめぐって、アメリカは資産そのものを没収し、活用することに積極的ですが、EUは、フランスやドイツなど一部の加盟国から没収についての合法性を問う声やロシアによる報復措置を懸念する声などがあがっていると報じられ、慎重な姿勢を示しています。

凍結資産そのものではなく利子をウクライナ支援に活用する今回の提案をめぐっては、21日から行われるEUの首脳会議でも話し合われる予定です。

ヨーロッパ委員会はできるだけ早くすべての加盟国の合意を得て、ウクライナ支援につなげたい考えです。

この提案について、ロシア大統領府のペスコフ報道官は20日、記者団に対し「ヨーロッパの法律と国際法の法的基盤を破壊するものだ。このような決定は自国の経済やイメージ、評判に悪影響を及ぼすと十分わかっているはずだ。決定を下した人々や国々は間違いなく何十年にわたり訴訟の対象となるだろう」と述べ、強く反発しています。

欧米支援でロシアの優位性低下の可能性 米専門家が調査

ウクライナ情勢について分析、発信を続けているアメリカの軍事専門家マイケル・コフマン氏は、前線の状況を現地で調査した結果について19日、SNSで公表しました。

この中でコフマン氏は、ウクライナが厳しい局面に立たされている理由として、兵士と弾薬の不足を挙げています。

兵士は、攻撃するだけでなく防衛戦やざんごうを保持するためにも必要で、増員しなければならないと指摘しています。

また、弾薬不足も深刻で、これを補うためウクライナは無人機の生産を拡大していますが、無人機の攻撃だけでは陣地を制圧する力に欠けるとしています。

ロシアは、2024年の夏以降に東部のアウディーイウカで行ったような大規模な攻撃を仕掛けてくることも考えられるとして、欧米諸国からの弾薬などの軍事支援が不可欠だと強調しています。

一方、ロシア軍については、5対1か6対1の割合で、ウクライナに対して火力の優位性があるとしていますが、ウクライナ側にとっての問題は、威力の強い滑空爆弾が一日平均で30発以上使われるなど頻度が上がっていることだとしています。

ただ、ロシア側の兵力も万全ではなく、装備品の多くは倉庫から引き出されたもので、ソビエト製の兵器などを少しずつ使い続けているということです。

新しく生産しているものは全体の2割ほどにとどまっているため、損失の程度によっては2025年以降不足する可能性もあると指摘しています。

ウクライナが今後数か月のうちに欧米諸国から支援を受けるなどして、2024年にロシアの攻撃から持ちこたえることができれば、ロシアの優位性は時間の経過とともに低下する可能性があるとして、改めて支援の必要性を訴えています。