米FRB 政策金利「据え置き」決定【パウエル議長 発言詳細も】

アメリカのFRB=連邦準備制度理事会は金融政策を決める会合を開き、20日、政策金利を据え置くことを決定したと発表しました。FRBが金利を据え置くのは5会合連続です。また会合の参加者が示した政策金利の見通しではことし年3回の利下げを行うという想定が維持されました。

政策金利 据え置きを決定

FRBは19日から2日間、金融政策を決める会合を開きました。

20日公表された声明では「経済活動は堅調なペースで拡大している。インフレ率はこの1年で和らいでいるが依然として高い水準だ」と指摘しました。

そのうえで「インフレ率が持続的に物価目標の2%に向かっていると確信が深まるまで利下げは適切ではない」との文言を盛り込みました。

そして、会合の結果、政策金利を現在の5.25%から5.5%の幅と、およそ23年ぶりの高い水準のまま据え置くことを決定しました。FRBが金利を据え置くのは5会合連続です。FRBとしては高い金利水準を維持することでインフレを抑え込むねらいです。

また、今回の会合でFRBは参加者による政策金利の見通しを示しました。

ことし2024年末時点の金利水準の見通しの中央値は4.6%で、政策金利の1回あたりの引き下げを0.25%とすると、年内に3回の利下げが行われる想定です。利下げの想定回数は前回12月時点の見通しと同じとなっています。

会合後の記者会見で、FRBのパウエル議長は「長期的なインフレ期待は依然として定まっていない。物価の指標であるPCE=個人消費支出の物価指数は、ことし2.4%まで低下する。われわれは高いインフレが購買力を低下させていて、特に食費や光熱費などの高値に苦しむ人たちに大きな苦難を与えていると痛感している」と述べました。

パウエル議長 会合後の記者会見 発言詳細

「インフレ率は依然高い」
「経済は目標に向かってかなり前進している。しかし、インフレ率は依然として高く、今後、低下するかは不確かだ」

「高インフレは人々に苦難痛感」
「長期的なインフレ期待は依然として定まっていない。物価の指標であるPCE=個人消費支出の物価指数は、ことし2.4%まで低下する。われわれは高いインフレが購買力を低下させていて、特に食費や光熱費などの高値に苦しむ人たちに大きな苦難を与えていると痛感している」

「早い時期に量的引き締め縮小」
FRBは国債などの金融資産の保有を減らしていく「量的引き締め」を行っています。市場に出回る資金を減らすことで景気を冷やし、インフレを抑え込むねらいです。会合後の記者会見で、FRBのパウエル議長は「きょう決定したわけではないが委員会としてはかなり早い時期に『量的引き締め』を縮小していくのが適切だろう」と述べました。

「確信得るまで利下げせず」
パウエル議長は「リスクは2面ある。もし金融緩和的な政策(利下げ)をしすぎたり、開始時期が早すぎたりすれば、インフレが再燃する可能性がある。また、緩和的な政策が遅すぎても雇用や市民生活に悪影響を及ぼしかねない」と述べました。そのうえで、「インフレ率が持続的に2%に向かって低下しているという確信を持てるまでは利下げの実施は適切でないと考えている。われわれは引き続き会合ごとに意思決定を行っていく」と述べ、会合ごとに経済指標をみて政策判断していく考えを強調しました。

「利下げ開始はことしのある時点」
パウエル議長は利下げの時期について問われ、「会合の参加者が示した政策金利の見通しを見ると、利下げが行われる可能性は高いというのが大半の見方だろう」としたうえで「もし景気が予想どおりの道筋をたどるのであればことしのある時点で利下げを始めるのが適切だ」と述べました。

「早い時期に量的引き締め縮小」
FRBは国債などの金融資産の保有を減らしていく「量的引き締め」を行っています。市場に出回る資金を減らすことで景気を冷やし、インフレを抑え込むねらいです。会合後の記者会見で、FRBのパウエル議長は「きょう決定したわけではないが委員会としてはかなり早い時期に『量的引き締め』を縮小していくのが適切だろう」と述べました。そのうえで、具体的な開始時期について5月かと記者から問われると、「具体的には言いたくない。どのような時期にどのようなやり方がいいのか検討している。『かなり早い時期』というのは文字どおり『かなり早い時期』ということだ」と答えました。

「でこぼこ道をたどり2%に」
パウエル議長は最近、高めの物価指標が出ていることについて「インフレ率は時に『でこぼこ』な道をたどりながらも徐々に2%に向かって低下していくものだ。今は『でこぼこ』を伴っている状況だ」と述べたうえで、「われわれがインフレ率を低下させることはすべての人にとって重要だ」と述べ、一時的なインフレ率の上昇にとらわれることなく、政策対応していく姿勢を強調しました。

今後の見通しは

今回の会合で、FRBは会合の参加者19人による政策金利の見通しを示しました。

参加者がそれぞれ適切だと考える金利が点=ドットで示されることからドット・チャートと呼ばれ、市場ではその中央値がFRBが目指す金利水準だと受け止められています。

それによりますと、2024年末時点の金利水準の中央値は4.6%で、政策金利の1回あたりの引き下げを0.25%とすると年内に3回の利下げが行われる想定です。

去年12月と同じ見通しとなっています。

また、2025年末時点の金利水準の中央値は3.9%で前回より0.3ポイント引き上げられました。

これによって来年の利下げ回数の見通しは去年12月時点の見通しの4回から3回に減る計算となります。

2026年末時点での金利水準は3.1%と前回より0.2ポイント引き上げられました。

個人消費支出の物価指数 上昇率の見通しは

FRBは、インフレの実態を見極める指標として重視しているPCE=個人消費支出の物価指数の上昇率の見通しも示しました。

それによりますと、2024年10月から12月のPCEの物価指数の上昇率は去年の同じ時期と比べて2.4%で前回と同じでした。

価格変動の大きいエネルギーと食品を除いた指数は2.6%で前回より0.2ポイント引き上げられたものの2026年に2.0%とFRBの物価目標に到達する予測は前回から変わりませんでした。

GDPと失業率の予測は

ことし10月から12月のアメリカのGDP=国内総生産の予測は、ことしの同じ時期と比べた実質の伸び率で、2.1%と前回の見通しの1.4%から大きく引き上げられました。

またことし10月から12月の平均の失業率については前回から0.1ポイント引き下げられ4.0%と予測しています。

FRBの金融政策 これまでの経緯

FRBが利上げを開始したのはおととし3月。それまでのゼロ金利政策を解除して金融引き締めへと転換します。

金融引き締めによって景気を冷やすことでインフレを抑えこむねらいでした。

しかし、その後もインフレに収束の兆しは見えず、おととし6月の消費者物価指数は前の年の同じ月と比べて9.1%の上昇と、およそ40年ぶりの記録的な水準となりました。

このためFRBは、おととし6月から11月の会合まで4回連続で0.75%という大幅な利上げに踏み切りました。

これまでの急速な利上げの影響を受けて去年3月から5月にかけては「シリコンバレーバンク」や「ファースト・リパブリック・バンク」など3つの銀行が経営破綻しました。

銀行が保有していた債券の価格が大きく下落したため売却を迫られて多額の損失を抱え経営への懸念が高まったことが要因でした。

こうした中でもFRBはインフレ抑制を優先にする姿勢を示し、去年3月と5月にそれぞれ0.25%の利上げを決定。

6月の会合ではそれまでの金融政策の影響を評価するためなどとして利上げを見送りました。利上げの見送りはおととし3月以降初めてでした。

一方、去年7月の会合では、インフレの要因である人手不足が続いていることなどから0.25%の利上げを決定。これで政策金利は5.25%から5.5%の幅と、2001年以来、22年ぶりの高い水準となりました。

FRBの利上げはこれでおととし3月以降、あわせて11回に及びました。

その後、去年9月からことし1月の会合では物価の上昇が落ち着き、インフレの要因となっていた人手不足に改善の兆しが見られることなどから4会合連続で利上げを見送りました。

FRBのパウエル議長は今月7日、議会上院で証言し、「物価上昇率が持続的に2%になると確信できるまで遠くない」などと発言し市場ではFRBがいつ利下げを始めるかが焦点となっています。

FRB見通し受け円相場は一時 値上がり

20日のニューヨーク外国為替市場では、FRB=連邦準備制度理事会が示した今後の金利の見通しやパウエル議長の会見を受けて、2024年利下げが想定通り行われるとの見方から日米の金利差の縮小が意識され、円相場は一時、1ドル=150円台後半まで値上がりしました。

20日のニューヨーク外国為替市場では、FRBの会合の参加者による政策金利の見通しは年内に3回の利下げが行われるという内容で、従来の見通しと変わらなかったことや、パウエル議長の会見での発言を受けて、2024年利下げが想定通り行われるとの見方が広がりました。

このため、日米の金利差の縮小が意識されて円買いドル売りの動きが出て、会合前に1ドル=151円台だった円相場は一時、1ドル=150円台後半まで値上がりしました。

また、ニューヨーク株式市場では利下げへの期待から買い注文が増え、ダウ平均株価は一時、300ドルを超える値上がりとなりました。

林官房長官「世界経済への影響 引き続き注視」

林官房長官は午前の記者会見で「各国の金融政策による影響を一概に申し上げることは困難だが、日本経済や世界経済にどのような影響が生じるか、引き続き注視していく」と述べました。