【詳細】イスラエル 米の高官 地上作戦に代わる計画協議へ

イスラエルとイスラム組織ハマスの戦闘休止などをめぐる交渉が中東カタールで再開されましたが、ガザ地区ではイスラエル軍による攻撃が続いていて、人道状況が深刻化するなか、交渉を進展させられるかが焦点です。

※イスラエルやパレスチナに関する日本時間3月20日の動きを随時更新してお伝えします。

イスラエルと米の高官 ラファ地上作戦に代わる計画協議へ

パレスチナの地元メディアは20日未明、ガザ地区北部や中部への空爆で数十人が死亡し、多くの人がけがをしていると伝え、現地の保健当局もこれまでの死者が3万1819人にのぼったとしています。

今後、150万人近くが身を寄せるガザ地区南部ラファへの地上作戦を行う姿勢を示すイスラエルのネタニヤフ首相は19日、議会の委員会で「イスラエル軍はラファに残るハマスの部隊を壊滅させると決意していて、そのためにはラファに入る以外に方法はない」と発言し、改めて作戦の必要性を強調しました。

住民の犠牲に対する国際社会からの懸念が高まるなかアメリカのバイデン大統領はネタニヤフ首相に対して大規模な地上作戦に代わる計画を協議するためイスラエル軍の高官などをアメリカに派遣するよう求めています。

これについてアメリカ・ホワイトハウスのジャンピエール報道官は19日、来週初めにもイスラエルとアメリカの高官による協議が行われるとの見通しを明らかにしました。

さらに、イスラエルのガラント国防相も来週、アメリカを訪れ、オースティン国防長官と会談することが発表され、ラファへの地上作戦をめぐるイスラエルとアメリカの協議が活発化しています。

カタール報道官 “交渉は18日に再開された”

イスラエルとハマスの間の戦闘休止と人質解放などをめぐる交渉について、仲介役を務めるカタールの外務省報道官は、イスラエルの交渉団とハマス側の交渉団が参加した上で18日に再開されたと明らかにしました。

イスラエルのメディアによりますと現在、協議されている案は女性や高齢者など一部の人質を解放するかわりに、およそ6週間の戦闘休止を目指すものだということです。

ただ、ネタニヤフ首相は、交渉が再開されたあとも避難者など150万人近くが住む南部ラファへの地上作戦を行う構えを崩しておらず、国際社会からはラファへの攻撃は多くの住民の犠牲につながるとして強い懸念が示されています。

この間もガザ地区各地ではイスラエル軍の攻撃が続いていて、イスラエル軍はガザ地区最大のシファ病院で行った軍事作戦で50人以上の戦闘員を殺害したと19日、発表しました。

一方、ガザ地区の保健当局は19日、過去24時間に93人が死亡しこれまでの死者は3万1819人にのぼると発表していて、深刻な食料不足も続き人道状況が深刻化するなか、戦闘休止などをめぐる交渉を進展させられるかが焦点です。

WHO シファ病院の動画投稿

イスラエル軍がガザ地区最大のシファ病院で50人以上の戦闘員を殺害したとする中、WHO=世界保健機関は19日、SNSでシファ病院の厳しい状況を訴える動画を投稿しました。

動画は、イスラエル軍がシファ病院で今回の軍事作戦を行う前に撮影されたものとみられます。

動画では医療従事者の1人が「私たちは人々と同じように食料・基本的な物資不足に苦しんでいる」と述べた上で、24時間体制で長時間働き、負傷者に対応しているとしています。

そして「精神的にも肉体的にも疲弊している。ここでは1日1食、それも少ない量しか食べることができない」と訴えていました。

動画では、左足を失ったとみられる男性が手のひらほどの食器に入った食事を少しずつ与えられる様子や、足などに包帯を巻かれた多くの人が横たわっている姿がうつっています。

シファ病院をめぐっては今週イスラエル軍が軍事作戦で50人以上の戦闘員を殺害したとしていますが、WHOのテドロス事務局長は18日、「病院は戦場であってはならない。この病院は最近最低限の医療サービスを回復したばかりだ」などと懸念を表明し、病院を攻撃しないよう求めていました。

国連人権高等弁務官事務所のトップが声明

深刻な食料不足から飢きんが迫っていると指摘されるガザ地区の状況について、国連人権高等弁務官事務所のトップ、ターク人権高等弁務官は19日、動画で声明を発表しました。

このなかでターク氏は、イスラエルがガザ地区への人道支援物資を制限したうえで、攻撃を継続していると指摘し、「飢餓を戦争の手段として利用することになるかもしれずこれは戦争犯罪にあたる」と述べて非難しました。

そのうえで、「時間はなくなりつつある。特に影響力のある者は、ガザ地区が飢きんに陥るのを避けるため、イスラエルが支援物資の搬入を認めるよう訴えるべきだ」と、国際社会に呼びかけました。

また、OCHA=国連人道問題調整事務所の報道官も、19日のスイスでの記者会見で、「現地は数週間や数か月の間、動物のえさや雑草を食べて飢えをしのいできた。もう何も残っていない」と述べ、仮に地区全体で飢きんが発生した場合、1日に200人以上が命を落とす危険があると警告しました。