高校野球 センバツ 健大高崎が学法石川に勝ち2回戦へ

センバツ高校野球、大会2日目の第3試合は群馬の高崎健康福祉大高崎高校が、福島の学法石川高校に4対0で勝って、2回戦に進みました。

健大高崎は6回に相手ピッチャーのワイルドピッチで1点を先制しました。

7回には9番の佐々木貫汰選手のタイムリーで1点を追加し、さらに2本のタイムリーを打ってこの回に3点を奪いリードを広げました。

投げては2年生の「二枚看板」と言われる1人でエースナンバー「1」をつける佐藤龍月投手が、角度のあるストレートと落差の大きいチェンジアップなどの変化球を織り交ぜて、7回まで毎回の9つの三振を奪い、得点を与えませんでした。

8回から2人目で登板した「二枚看板」のもう1人、石垣元気投手も、140キロを超える力のあるストレートを軸に投げて無失点で抑えました。

健大高崎は4対0で学法石川に勝ち2回戦に進みました。

33年ぶりに出場した学法石川は先発した背番号「10」の左投げ、佐藤翼投手が、コースをつく丁寧なピッチングで健大高崎の強力打線を苦しめましたが7回につかまり、打線もヒット5本に抑えられました。

《健大高崎 監督・選手談話》

青柳監督「甲子園で勝つのは難しいな」

健大高崎の青柳博文監督は「甲子園で勝つのは難しいなと感じた」と振り返りました。7回無失点と好投した先発の佐藤龍月投手について「きょうは佐藤のピッチングに尽きる。本当によく頑張ってくれた」とねぎらいました。
一方、打線については、3点をあげた7回の攻撃が「大きかった」と振り返ったうえで、反発力を抑えた、いわゆる「飛ばないバット」について「なかなか長打が出にくいと感じた」と話していました。
そのうえで大分の明豊高校との2回戦に向けては「きょうのように粘り強くやっていきたい」と話していました。

佐藤龍月投手「平常心で投げることができた」

7回を投げて9つの三振を奪い無失点に抑えた佐藤龍月投手は「調子自体はよくなかったが、チームのために投げきれて、初戦を絶対に勝ちきるという目標を達成できてよかったです」と振り返りました。好投の要因については「平常心で投げることができました。ランナーを出しても粘り強く投げられる自分の持ち味を発揮したピッチングができたと思います」と話しました。
試合前にはキャプテンでキャッチャーの箱山遥人選手と「どんどん打たせて楽に投げていこう」と話していたということで、佐藤投手は反発力を抑えた、いわゆる「飛ばないバット」が導入されたことを踏まえ「強気に投げることができている」ことを明かしていました。
そのうえで今大会の目標については「全試合無失点と全国優勝です」と力強く話していました。

箱山遥人主将「守備でチームに貢献できてよかった」

健大高崎の守りの要のキャッチャーとして相手打線を無失点に抑えた2人の投手をリードしたキャプテンの箱山遥人選手は「守備でチームに貢献できてよかったです」と振り返りました。好投した先発の佐藤龍月投手については「本調子ではなかったようにみられたので、リードでは慌てず、変化球をうまく使いながら、バッターの打つタイミングをずらすことができました」と話していました。
また9回、2アウト満塁で、ホームランが出れば、同点という場面でマウンドに向かった場面について2人目で登板した石垣元気投手に緊張をほぐすために「大丈夫っしょ」と声をかけたことを明かしました。
そして、2回戦の大分の明豊高校との試合に向けては「甲子園の経験値が高いチームなので粘り強く戦って、1点でも多く得点を取る野球をしたいです」と意気込んでいました。

《学法石川 監督・選手談話》

佐々木監督「最後まで笑顔で全力で戦ってくれたことに感謝」

学法石川高校の佐々木順一朗監督は「前半はこれ以上はないというくらいいい展開を見せてくれた。負けない野球するには0点に抑えるだけだが、勝つためには点数をなんとか取らないといけない。ただ、今回はそれが見えなかった」と振り返りました。そして「0対0の展開の中で『セカンドにランナーを進めて仕掛けよう』と声をかけていたが、それができなかった。今後はそのあたりを煮詰めていかなければならない」と話しました。
そのうえで選手について「試合でうまくいってもいかなくても、最後まで笑顔で、全力で戦ってくれたことに感謝したい」とねぎらっていました。

佐藤翼投手「『笑顔』を心がけた」

学法石川高校の2年生で先発で登板した佐藤翼投手は「点を取られたあとは『まじでごめん』という気持ちでしたが、先輩たちに落ち込んでいる姿を見せないように、佐々木監督が大事にしている『笑顔』を心がけていました」と振り返りました。
そのうえで、甲子園球場について「グラウンドに入って観客の多さに驚きました。この中で目立てたことが一番楽しくて、夏もこのマウンドに戻ってきてまた目立ちたいと思いました」と話していました。

◇学法石川 敗れるも“最後まで真剣に笑顔で”

敗れた学法石川は「投打の主力」がケガで先発出場できない中でも、経験豊富な指揮官の「教え」を徹底して優勝候補に最後までくらいつきました。

33年ぶりとなる大会の1回戦、学法石川の先発メンバーには背番号「2」の2年生、大栄利哉選手の名前がありませんでした。大栄選手は、2023年秋の公式戦で4番を務め、ピッチャーとしては最も長いイニングを投げた「投打の柱」ですが、2月下旬に左足のひ骨を痛めていたのです。

大会直前に訪れた苦境。タクトを振る佐々木順一朗監督は6年前の就任当初から大切にし続けてきた「チームの決まり事」を改めて徹底しました。

それが「笑顔でのプレー」です。

仙台育英高校時代に2回、甲子園で準優勝した経験がある指揮官は何より、大舞台でのプレッシャーや戦い方を知り尽くしています。その監督が求める「笑顔」に、選手たちはしっかり応えました。

「笑顔にしか運は来ない。うまくいかなくても笑顔」

そう声を掛け合いながら優勝候補の一角、健大高崎との初戦に臨みました。

先発の2年生、佐藤翼投手はヒットを打たれても、ワイルドピッチを出しても、マウンド上では常に笑顔でした。2023年秋の公式戦でチーム打率3割9分7厘と出場校トップの健大高崎打線相手に「楽しむことで力が出せる」と臆することはありませんでした。7回途中まで投げて3失点と、先発投手の役割をしっかり果たしました。

4点を追う展開となった土壇場の9回。それでも選手たちは笑顔で声を掛け合っていました。

「大栄選手に代打での出場機会を作りたい」という思いが1つとなっていたことの現れでした。

先頭バッターから、この試合初めての連続ヒット。1アウトになったあと、その時が訪れました。

大栄選手の名前が甲子園にコールされたのです。

結果はサードへのファウルフライで後続も倒れ、得点はなりませんでしたが、試合を終えた学法石川の選手たちには温かい拍手が送られていました。

選手たちが試合後の取材に対して口をそろえたのは「笑顔を貫いて自分たちの野球ができました」ということば。

試合には敗れても、チームで徹底してきたことを実践できたことへの充実感からだと感じました。

これに対して佐々木監督もねぎらいのことばを発しました。

「最後まで真剣に笑ってくれました」と。

学法石川は1時間58分の試合中、常にスタンドやテレビの前の人たちに爽やかな印象を残して甲子園をあとにしました。