高校野球 センバツ 阿南光が豊川に快勝 豊川は今大会1号HRも

センバツ高校野球、大会2日目の第1試合は徳島の阿南光高校が愛知の豊川高校に11対4で勝って2回戦に進みました。一方、敗れはしたものの、豊川は今大会注目の強打者、モイセエフ ニキータ選手が今大会第1号となるツーランホームランを打ちました。

阿南光 9回に6得点 豊川を突き放し2回戦へ

32年ぶりにセンバツに出場した阿南光は2点をリードした2回、2アウト満塁から2番の西村幸盛選手が走者一掃のタイムリーツーベースヒットを打って、リードを5点に広げました。

豊川は1点を返して迎えた8回、今大会注目の強打者、3番のモイセエフ ニキータ選手が今大会第1号となるツーランホームランを打ちました。

ことしから反発力を抑えた、いわゆる「飛ばないバット」が導入された中、それを感じさせない強烈なライナー性の打球をライトポールぎわのスタンドに運び、評判通りのパワーを見せました。

しかし、阿南光は9回に6点を加えて豊川を突き放し、11対4で勝って2回戦に進みました。

豊川は阿南光の先発ピッチャー、吉岡暖投手に対して7回以降は毎回得点して追い上げましたが、大量失点が響きました。

《阿南光 監督・選手談話》

高橋監督「選手たちの努力が実を結んだ結果」

阿南光高校の高橋徳監督は「勝負どころでしっかり抑えられたのが勝利の理由の一つだと思う。選手たちの努力が実を結んだ結果だと思うので、まずは彼らに感謝したい」と話しました。
また、熊本国府高校と対戦する2回戦に向けて、「きのうの試合も観戦しましたが、ピッチャーもしっかりしていて打線も粘り強いので、毎試合、気が抜けない相手だと思います。今回は1試合目ということで朝型のリズムに合わせていましたが、次は3試合目なので、帰ったら次の試合に向けてコンディションを整えたい」と話していました。

吉岡暖 投手「地元の方々に恩返しがしたい」

阿南光高校のエース、吉岡暖投手は「モイセエフ選手は対応力のあるバッターなので、相手が待っていないと思うスライダーやカットボールを使うなど1打席ごとに配球を変えるようにしました」と話しました。
また、中学時代からバッテリーを組むキャプテンの井坂琉星選手がデッドボールを受けたことについて聞かれると、「心配もありましたが、またすぐ戻ってきてくれると信じていました。けがをして自分もつらいなかで、それでも周りに声をかけていて、キャプテンが井坂でよかったと改めて思いました」と話していました。
2回戦については「次の試合は最後まで粘り強く、最少失点で抑えられるように頑張って、応援してくれる地元の方々に恩返しがしたいです」と話していました。

西村幸盛 選手「父のことばどおりに実践できた」

タイムリーツーベースヒットを打った阿南光高校の西村幸盛選手は「打席に立ったときは『頭は冷静に、体は熱くいけ』という父のことばを思い出していました。きょうはそのことばどおりに実践できたのでよかったです」と振り返りました。
反発力を抑えた新たな基準のバットについては、「これまでもピッチャーに投げてもらったりマシーンで練習してきました。強く振るよりも、まずはバットの芯にしっかり当てることを意識しました」と話していました。

《豊川 監督・選手談話》

長谷川監督「主軸が機能しなかった」

敗れた豊川高校の長谷川裕記監督は「モイセエフ選手がホームランを打ったが、そのほかの打席は完全に抑えられたし、主軸が機能しなかった」と敗因を振り返りました。
長谷川監督は試合前に、徳島の阿南光の吉岡暖投手について、「低めの変化球を見送れるかが勝敗を分ける」と話していましたが、試合後には「吉岡投手の落ちる変化球を振ってしまった。腕をしっかり振っていていいボールだった」と振り返りました。
また、大会第1号となるホームランを打ったモイセエフ選手については「2点差となる貴重なホームランだった」とたたえた一方で、最終回の2アウト満塁の場面で空振り三振で終わったこともあり、「最終打席のような場面でも打たなくてはいけない。好投手から打てなかった打席をふまえて、夏に向けてさらにレベルアップしてほしい」と話していました。
そして、夏に向けてチームとして成長したいことを問われると、「もう投手力です」ときっぱりと言い切ったうえで、「投手陣には阿南光のような、1人で投げきれる絶対的なエースを目指してほしい」と話していました。

モイセエフ ニキータ選手「チームが勝てず悔しい」

大会第1号となるホームランを打った豊川のモイセエフ ニキータ選手は「うれしい思いもありますが、それ以外の打席でとらえられず、最終的にチームが勝てなかったのがいちばん悔しいです」と振り返りました。
ホームランを打った場面については、「ツーストライクと追い込まれて、開き直ってボールに食らいついて、次のバッターにつなごうという意識でした。2点差になり、絶対に勝てると思ったし、本当にうれしかったです」と振り返りました。
また、新たな基準のバットが採用され飛ばなくなったとされるなか、「芯を外したときに飛ばない。ホームランを打った場面のように芯でとらえたときは飛距離は変わらないと思う。芯でとらえることが本当に大切だと思いますし、1球でしとめる難しさがあると思います」と話していました。
そして、「さらにレベルアップして、夏にもう一度戻ってこられるように全力でやっていきたいです」と話していました。

◇注目のスラッガーが強烈なツーランホームラン

今大会注目のスラッガー、豊川高校のモイセエフ ニキータ選手。ことしから反発力を抑えた、いわゆる「飛ばないバット」が導入された中で、今大会第1号となる強烈な当たりのツーランホームランを打ち、甲子園球場ではどよめきも起きました。

ロシア出身の両親を持つモイセエフ選手は愛知県出身。去年秋の公式戦では打率5割7分6厘をマークしたほか、6本のホームランと33打点はいずれも出場校の選手で最多で、東海大会の決勝では対戦相手の愛工大名電高校が外野を4人で守る極端な守備シフトを敷いたことでも話題を集めました。

この試合でも阿南光高校の外野陣は、「シングルヒットはOK」と言わんばかりにフェンスギリギリの深い守備位置をとってモイセエフ選手を警戒し、バッテリーも1打席ごとに配球を大胆に変えて対応。第3打席までは三振2つとライトフライに抑え込まれました。

それでも4点を追う8回、モイセエフ選手は追い込まれてから、甘く入った変化球をとらえてライトポールを巻き込むツーランホームランを打ち、右手をたかだかとあげてダイヤモンドを1周しました。

キャプテンの鈴木貫太選手から「力んでいるから自分で打とうと思わずに次につなごう」と声をかけられた打席でうまく開き直ることができたそうです。

7点を追う9回、2アウト満塁の場面では三たび三振に倒れて最後のバッターになり、初の甲子園は5打数1安打、3三振。モイセエフ選手にとっては悔しさの残る大会となりましたが、試合後には「バットの芯を外した時は飛ばないが、芯でとらえたときはそこまで飛距離は変わらない」と自身のパワーには自信ものぞかせました。

大会はまだ2日目。このあとも「飛ばないバット」を克服して何本のホームランが飛び出すのかはまだ分かりませんが、モイセエフ選手が打った大会1号のホームランが強烈な印象を残したことは間違いありません。

◆阿南光 部員わずか2人の音楽部「甲子園で演奏」の夢かなえる

阿南光高校のアルプス席では徳島県内の5つの中学校や高校、そして大学から集まったおよそ60人の即席ブラスバンドが「チーム徳島」で応援を盛り上げました。

高校野球の応援の花形のひとつがブラスバンドの演奏ですが、阿南光高校の音楽部の部員はわずか2人

「甲子園で演奏するのが夢だった」という部員の思いを聞いた葉久かおり先生は徳島県内の中学校や高校、そして大学にも声をかけて、センバツに向けた即席のブラスバンドを結成しました。

阿南光 葉久かおり先生

集まったのは61人。

合同で練習ができたのは本番直前の1回だけでしたが、それでも19日の第1試合では得点が入るたびにおなじみの「阿波踊り」が息の合った演奏で流れました。

即席のブラスバンドがチームの快勝を後押しし、アルプス席は熱気に包まれました。

演奏を指揮した葉久先生は「夢だったという部員の願いをなんとかかなえてあげたいという思いでした。楽しそうに演奏していて、目は楽譜ではなく試合を追っていましたね。これだけの人数が集まってくれたことに感謝して、甲子園でしかできない演奏をしていきたい」と話していました。

阿南光高校音楽部の2年生、渡川実花さんは「こんなに大人数で演奏できるのは久しぶりで、張り切って、いつもより大きな音を出しました。演奏で少しでも選手の力になれればと思います」と話していました。