「日本版DBS」法案 国会提出 性犯罪歴の照会 最長20年などが柱

政府は子どもに接する仕事に就く人に性犯罪歴がないか確認する制度「日本版DBS」を導入するための法案を、19日の閣議で決定し、国会に提出しました。犯罪歴を最長で20年照会できることなどが柱となっています。

「日本版DBS」は学校や保育所、それに学習塾など、子どもに関わる施設で性犯罪の被害が後を絶たないのを受けて、政府が導入を目指しています。

法案では子どもに接する仕事に就く人に性犯罪歴がないか、事業者がこども家庭庁を通じて法務省に照会できるようにするとしています。

学校や保育所などには照会を義務づけ、学習塾やスポーツクラブなどといった施設については、制度に沿って照会手続きをとっているか利用者にわかるよう認定制度を設けます。

そして、性犯罪歴を照会できる期間は、禁錮刑以上の場合は刑の終了後20年、罰金刑は10年とするなどとしています。

また、照会の対象となる性犯罪歴は刑法犯罪にとどまらず、痴漢や盗撮などの条例違反も加え、対象者については新たに採用する人だけでなく、すでに雇っている人も含めるとしています。

政府は雇っている人に犯罪歴があれば、事業者が配置転換をすることや、どうしても安全確保が難しい場合は解雇することも許容されるとの考えを示していて、制度の運用に際しては事業者向けにガイドラインを策定する方針です。

政府は19日の閣議で法案を決定したあと、国会に提出しました。

今の国会で成立を図る考えです。

子どもの性被害 後を絶たず

子どもが身近な大人から性被害にあう事例は後を絶ちません。

教育の現場では中学受験塾の大手「四谷大塚」で、25歳の元講師が去年3月から8月にかけて、都内の校舎で教え子の女子児童合わせて12人の下着を繰り返し盗撮したとして、逮捕、起訴されています。

去年9月には、練馬区の区立中学校の元校長が勤務先の中学校の校長室で女子生徒のわいせつな動画などを所持していたとして逮捕・起訴されたほか、東京都内の中高一貫校の元教諭が男子生徒にわいせつな行為をした上、その様子を撮影したとして逮捕・起訴されました。

さらに、小さな子どもを預かる施設でも、3人の園児に対してわいせつな行為をしたなどとして3回逮捕・起訴された都内の27歳の元保育士が、勤務先だった墨田区の認可保育所でも園児の女の子にわいせつな行為をしたなどとして4回目の逮捕をされました。

林官房長官「子どもを性暴力から守るために必要」

林官房長官は閣議のあとの記者会見で「子どもに対する性暴力は被害者の心身に生涯にわたって回復しがたい重大な影響を与えるものであり、あってはならない。この制度は子どもを性暴力から守り、安全を確保するために必要なもので、憲法上の職業選択の自由との関係においても許容されるものだ」と述べました。

その上で、「政府としてはこの制度の創設を含め、子どもの性被害を防止するための取り組みを総合的に進めていく」と述べました。

加藤こども相「社会全体で意識高める」

加藤こども政策担当大臣は閣議のあとの記者会見で、「社会全体で子どもたちを性暴力から守る意識を高めていくとの観点からも大変重要な法案だ。子どもの性被害防止のための総合的な取り組みの推進も図りつつ、法案の成立に向けて最大限努力をしていく」と述べました。

全国学習塾協会会長「多くの事業者が歓迎している」

閣議決定された「日本版DBS」の法案では「認定制度」を設けて、民間などの事業者も一定の条件をクリアした場合は前科の有無を確認する対象となるとされ、認定を受けた事業者は国が公表する方針です。

これについて、およそ400の塾が加盟する全国学習塾協会の安藤大作会長は「採用時に人間性を見抜くのは限界があり、DBS制度に民間事業者も参加できることは大変ありがたい。新たに生じる負担もあるが、子どもの安心、安全を守るためには必要な取り組みで多くの事業者が歓迎している」としています。

一方、制度に参加する事業者には情報を適正に管理する義務が課されるほか、漏えいした場合の罰則が設けられるとされ、今後、政府がガイドラインを示すとしています。

これについて、「情報管理に求められる内容によっては、コストとの兼ね合いで個人や中小の事業者が参加できない可能性もあり、そうなると子どもたちの教育環境に偏りが生まれてしまう。安全性を担保しながら、より多くの事業者が制度の対象になるよう、ガイドラインを策定する際には、現場の声を反映してほしい」と求めていました。

そして、「子どもにとっては大手でも個人経営でも塾は塾なので、業界全体として子どもを性犯罪から守るという風潮を作れるよう、DBSに参加できない事業者に対しても、協会として独自に安全対策を講じていきたい」と話していました。