イスラエルとハマス 協議再開の見通しも ガザ地区で飢きん迫る

イスラエルとイスラム組織ハマスの戦闘休止などをめぐる交渉に向け、イスラエルの交渉団が18日、カタールに到着し、協議が再開される見通しです。一方、ガザ地区では深刻な食料不足から飢きんが迫っていると指摘され、国連は一刻も早い停戦を求めています。

イスラエルとハマスの間で中断していた戦闘休止や人質解放に向けた交渉について、イスラエルメディアは18日、交渉団がカタールに到着し、協議が再開されると伝えました。

また、人質の解放のためにイスラエルの交渉団にこれまでより強い権限が与えられたものの、ガザ地区にいるハマスの指導部と間接的に交渉するには少なくとも2週間はかかるとも伝えていて、双方の主張に大きな隔たりがある中、交渉の行方は予断を許さない状況です。

一方、激しい戦闘が続き、深刻な人道状況に陥っているガザ地区をめぐって、国連機関などが18日、報告書を公表し、ガザ地区北部では飢きんが間近に迫っているうえ、今後、南部ラファへの地上作戦を含め戦闘が激化すれば、地区全体の人口の半数にあたるおよそ110万人が飢きんに直面すると指摘しました。

報告書の公表を受けて、国連のグテーレス事務総長は18日、「到底考えられず、受け入れられず、正当化できない事態が起きるのを防ぐため、私たちは直ちに行動を起こさなければならない」と述べ、一刻も早い人道的な停戦を求めました。

EU 支援の搬入ルートの拡大など強く求める

ガザ地区をめぐる報告書を受けて、EU=ヨーロッパ連合の外相にあたるボレル上級代表と危機管理を担当するレナルチッチ委員が、18日、そろって声明を出しました。

声明では「飢えを戦争の兵器として使うべきではない。これは自然が引き起こしたものではなく、人為的につくられた危機で、われわれにはこれを止める道義上の義務がある。状況はもはや破滅的というレベルを超え、いますぐ対応することが必要だ」と述べ、強い危機感を示しました。

そのうえで「空中からの投下や海上輸送など支援を届けるためのあらゆる手段を試みているが、地上からの無条件のアクセスの効率には遠く及ばない。支援を必要とするすべての人が自由に安全に人道支援を得られるよう、イスラエルに求める」として、支援の搬入ルートの拡大などを強く求めました。

ロンドン ガザ地区の住民に医療物資提供の慈善団体などがデモ

ガザ地区の住民に医療物資を提供している慈善団体などがロンドンでデモを行い、住民は飢きんの瀬戸際にあるとして、食料の搬入を認めるよう訴えました。

18日、ロンドンのイギリス外務省の前には、パレスチナに医療物資などを提供している慈善団体や国際NGOの職員らおよそ30人が集まり、ガザ地区への食料の搬入を訴えました。

参加者は空の鍋をスプーンなどでたたき、「即時停戦」や「支援を運び込ませろ」と声をあげていました。

デモを呼びかけた「メディカル・エイド・フォー・パレスチニアンズ」のワード代表は、「ガザに飢きんが迫っている。北部の同僚たちは馬やロバの飼料を食べ、それが尽きたら鳥が食べる種を食べてしのいでいる。写真で姿を見るたびにどんどんやせ細っていく」と強い懸念を示しました。

そして「必要な量の食料が搬入されず、飢餓が武器として使われている。イスラエル軍が陸路で北部への搬入を認めれば、状況は直ちに改善される」と訴えました。

また、デモに参加したセーブ・ザ・チルドレンも18日、声明を発表し、「飢きんが宣言されれば、多くの住民にとって手遅れだ。これは人為的につくられた危機だ。境界線の片側には食料や水、医薬品を積んだトラックが待機し、反対側では子どもたちや家族が飢えに苦しんでいる」として、即時停戦と人道支援を急ぐよう訴えました。

仲介役のカタール外務省報道官「状況は非常に流動的で困難」

イスラエルとイスラム組織ハマスとの戦闘休止などに向けた交渉で仲介役を担うカタールの外務省報道官が、NHKの取材に応じました。

カタールの首都ドーハでNHKのインタビューに応じた、カタール外務省のアンサリ報道官は、18日にドーハで戦闘の休止に向けた交渉が再開されると認めたうえで、「ハイレベルでの交渉が再開されることを前向きに捉えている」と歓迎しました。

そして「人質への危険とパレスチナ人の流血の事態を止める合意に至るよう、歩み寄りを促したい」と述べ、ガザ地区の人道状況を改善するためにも、一刻も早い戦闘休止が必要だと強調しました。

一方で交渉の見通しについて、アンサリ報道官は「合意に至ることを期待しているが、状況は非常に流動的で困難だ」として、合意に至るかどうかは予断を許さないとの見方を示し、「国際社会は状況の困難さを理解し、双方に歩み寄りを促すことが重要だ」と述べ、双方への働きかけを強めるよう、関係国に呼びかけました。