高校野球 センバツ 熊本国府 甲子園初勝利 近江に延長サヨナラ

センバツ高校野球、大会1日目の第3試合は春夏通じて甲子園初出場の熊本国府高校が滋賀の近江高校に延長10回タイブレークの末、2対1でサヨナラ勝ちし、2回戦に進みました。

熊本国府は1点を追う3回に1アウト二塁として3番の内田海選手の左中間を破るタイムリーツーベースヒットで同点に追いつきました。

投手陣では先発の坂井理人投手がボールを低めに集めて打たせて取るピッチングで7回1失点でマウンドを降り、8回からは2人目の植田凰暉投手が3イニングを無失点に抑えました。

試合は4回以降、両チームの投手の好投が続き、1対1のまま延長に入りました。

ノーアウト一塁、二塁から始まるタイブレークで行われた延長で、熊本国府は10回、1アウト満塁として近江のエース、西山恒誠投手のワイルドピッチで三塁ランナーがかえり、2対1でサヨナラ勝ちしました。

春夏通じて甲子園初出場の熊本国府が2回戦に進みました。

近江は西山投手が力強いストレートと曲がり幅の大きいスライダーを武器に10回途中169球を投げ、14個の三振を奪う力投を見せましたが、最後は粘りきれず準優勝したおととしの大会以来の初戦突破はなりませんでした。

《熊本国府 監督・選手談話》

山田監督「自分たちらしく戦えたことを誇りに思う」

熊本国府の山田祐揮監督は、春夏通じて甲子園初出場で初勝利をつかんだことについて「甲子園に出場するチームは強豪ぞろいの中で、初勝利を達成できてよかったです。守り勝つ野球を目指してきましたが、この舞台で自分たちらしく戦えたことを誇りに思います」と笑顔で振り返りました。
また、2回戦に向けて「これからも応援してくれる人に勇気を与えられるような試合をしたい。基本の繰り返しを徹底して鍛えた守備力で、自分たちらしい戦い方を続けていきたいです」と話していました。

野田希 主将「甲子園を楽しもうと意識」

熊本国府のキャプテン、野田希選手は「甲子園を楽しみながらやっていこうと意識していました。序盤は緊張している選手もいましたが、4回以降、緊張感がなくなり、自分たちの野球を展開することができました」と振り返りました。
その上で「投手陣がフォアボールを少なくして、打たせて取るピッチングを続けてくれたので守りやすかったです。次の試合も自分たちらしく守り勝つ野球で戦っていきたいです」と話していました。

坂井理人 投手「アルプス席から歓声が聞こえて心強かった」

熊本国府の先発ピッチャー、坂井理人投手は「チームの守備力には自信があるので、打たせて取る投球を続ければ絶対に相手打線を抑えられると思っていました。自分らしい形で抑えていけば、勝てると信じていました」と試合を振り返りました。
春夏通じて初めての甲子園で初勝利をつかんだことについて「応援してくれた人に初勝利を届けることができてよかったです。相手の打者を抑えるたびにアルプス席から歓声が聞こえて心強かったです」と話していました。

《近江 監督・選手談話》

近江 多賀監督「もう一度ゼロからチームを再建」

近江の多賀章仁監督は「チャンスを作ることはできましたが、得点につなげることができませんでした。初回に得点できなかったのが特に痛かったです」と、言葉を絞り出すように話しました。
チームの課題について問われると「たくさんありすぎます。こういう試合を経験できたことを夏に生かしたい。もう一度ゼロからチームを再建していきたいです」と話していました。

大石尚汰 主将「また甲子園に戻ってきたい」

近江のキャプテンで4番の大石尚汰選手は「西山投手が頑張っていたのに、自分たち野手陣が助けることができず、とても悔しいです」と振り返りました。
そして「自分がチャンスを潰して負けてしまったので、チームを勝たせられるようなバッティングをしたいです。きょうの試合を力に変えて、また甲子園に戻ってきたいです」と、夏の大会に向けての決意を話しました。

西山恒誠 投手「自分のリズムではなかった」

力投しながらも敗れた近江の西山恒誠投手は「相手は初球を振ってこなかったので、自分のリズムではなかったです。初球ボールだったり、フォアボールが多かったり、なかなか3人で終われなかったのでそこがよくなかったです」と振り返りました。
また、14個の三振を奪ったことについては「スライダーで相手のリズムを崩せたので、そこはよかったと思います」と話しました。
そして「後半体力が落ちてきていたので、体力面をしっかりと強化したいです」と話し、夏に向けて課題の克服を誓っていました。

熊本国府 「守り勝つ野球」を甲子園でも発揮

春夏通じて初出場の熊本国府高校は、身上とする「守り勝つ野球」を甲子園でも発揮し、初勝利を手にしました。

31歳の山田祐揮監督は、低反発の金属バットの導入の検討が進められていた数年前から「打球が飛ばなくなり、ゴロなどが増える」として守備力の高い中学生の勧誘を行ってきました。

そして入学後、内野手には最も広い守備範囲が求められるショートのポジションを経験させ、下半身を使って守る癖をつけることや、選手どうしが守備への理解を深めるよう取り組んできました。

18日の試合でも内野を守った4人は全員ショートを経験していて、随所に堅実な守備を見せました。

1回、2アウト一塁三塁で相手がダブルスチールを試みた場面では、キャッチャーの二塁への送球を受けたセカンドの野田希選手が即座に投げ返し、ホームを狙った三塁ランナーをアウトにしました。

また、ショートの山田颯太選手は、同点の4回2アウト二塁のピンチでセンター前に抜けそうな鋭い打球に素早く反応してアウトにしました。

さらにタイブレークとなった延長10回には、1アウト一塁二塁の緊迫した場面で、ショートゴロを冷静に処理してダブルプレーにするなど、内野陣が試合を通じて好プレーを見せました。

試合後、山田監督は「プレッシャーがかかる場面がたくさんありましたが、選手はいつもどおり守っていて成長を感じましたし、うれしかったです。低反発の金属バットになってより作戦面が重要になると改めて感じました」と話していました。

山田監督は熊本工業の選手として2009年の夏に甲子園の舞台を踏み、1回、レフトのポジションで打球をファンブルするエラーをして、失点につなげてしまった苦い経験があります。

守備力を鍛えて臨んだ甲子園で選手たちのプレーを見た山田監督は「『こうやって守るんだぞ』って選手から言われている気分でした。私は当時、延長10回サヨナラ負けで甲子園をあとにしましたが、選手は延長10回サヨナラで勝ったので、不思議な気持ちになりました」と笑顔を交えて話していました。