春の“睡眠の日” 子どもの睡眠時間は?実態調査

3月18日は春の「睡眠の日」とされています。腕時計型のウェアラブル端末を使って子どもたちの睡眠の実態を調べる大規模なプロジェクトを進めている東京大学などのグループが中間報告を公表し、小学生から高校生までのすべての学年で睡眠時間が不足する傾向があることがわかりました。

東京大学の上田泰己教授などのグループが進めているこのプロジェクトは、小学生から高校生までの子どもたちに腕時計型のウェアラブル端末を1週間つけてもらい、睡眠時間や睡眠のリズムなどを詳しく調べるもので、およそ2万人分のデータを集めることを目標としています。

グループは、中間報告として、これまでに集まった全国およそ7700人分の結果をまとめました。

小学生から高校生 学年上がるにつれ睡眠時間短い

それによりますと、平均の睡眠時間は、
▽小学6年生が7.9時間(474.4分)
▽中学3年生が7.1時間(425.9分)
▽高校3年生が6.5時間(387.4分)
などとなっていて、学年が上がるにつれて眠りにつく時間が遅くなり、睡眠時間が短くなっていたということです。

厚生労働省の「睡眠ガイド」では、睡眠時間は▽小学生は9時間から12時間、▽中学生・高校生は8時間から10時間が推奨されていますが、すべての学年でこれを下回っていました。

平日と休日で睡眠リズム乱れる“社会的時差ぼけ”も

さらに、平日と休日で寝る時間帯がずれて睡眠のリズムが乱れる「社会的時差ぼけ」と呼ばれる状態の子どもも学年が上がるほど増える傾向があり、中学3年生から高校3年生の20%近くで2時間以上ずれていたということです。

グループによりますと、「社会的時差ぼけ」が大きくなると授業中に眠くなったり集中力が欠けたりするなど、生活や健康に影響がでるおそれがあるということです。

東京大学 上田泰己教授
「睡眠不足は健康や学習に悪い影響を及ぼすリスクがあるので、夜のスマートフォンの利用を控えるなどして、睡眠時間を確保してほしい」。

中学生85人が睡眠時間計る端末を付けて生活

プロジェクトに協力している滋賀県の彦根市立西中学校では、1年生と2年生の生徒のうち希望した85人が睡眠時間を計る腕時計型の端末を身に付けて生活しています。

中学2年の男子生徒
「サッカーのパフォーマンスアップにつなげたいと思い参加しました。端末をつける前は午前0時ごろ寝ていましたが今は午後10時に寝るようにしています。朝はすっきり起きられるしこれまで眠くなっていた4時間目の授業に集中できて生活が変わってきました」。

中学2年の女子生徒
「今までは午前1時に寝ていたので睡眠時間が短いと感じて参加しました。午前0時までに寝られるようスマホを使う時間を削るようになりました。毎日違う時間に寝ていたり昼寝をしていたりしたことにも気が付いたので、今後、時間の使い方を工夫していきたいです」。

今回のプロジェクトの前にこの学校が独自に行った調査では、生徒の半数以上は寝る時間や起きる時間が定まっておらず、睡眠時間も推奨されている8時間から10時間を確保できていなかったということです。

彦根市立西中学校 幸美砂子校長
「保健室で寝たいと言ったり、授業中にうとうとしていたりする生徒や睡眠不足が原因で遅刻や欠席をしがちな生徒もいます。パソコンやスマホが身近になったり、習い事も遅い時間まであったりと、中学生の睡眠時間はどうしても削られてしまう傾向にあります。家庭と協力しながら改善していきたいですが、いまの社会でどう工夫すればよいのかよい手だてが見つからないのが現状です」。

“よりよい睡眠”に取り組む小学校

子どもたちの睡眠不足が問題となる中、よりよい睡眠のあり方を考えてもらう取り組みを進めている小学校があります。

さいたま市北区にある「さとえ学園小学校」では去年10月から、大手通信会社の協力を受け、4年生の児童78人を対象に睡眠を計測する機器を使って自分の睡眠について調べる総合的な学習を行っています。

子ども自身がデータ分析 睡眠改善を考える

この機器は、寝るときに腰の付近に装着して睡眠時間や眠りの深さの変化、寝ているときの姿勢などを記録するもので、授業では得られたデータを子どもたち自身が分析し、どうすれば睡眠が改善するかを考えてきました。

学校などによりますと、子どもたちが睡眠の重要性を認識することにつながっているということで、取り組みを始めてから毎月の平均の睡眠時間は徐々に増え、1月は当初に比べて40分以上長くなっていたということです。

睡眠の質を高めるアイデアも

また、子どもたちからはリラックスできるよう寝室に花の香りを漂わせたり、壁紙を淡い色にしたりするなどの睡眠の質を高めるさまざまなアイデアが出され、今月は子どもたちからの提案で校内にあるプラネタリウムの施設で部屋を暗くして昼休みに仮眠できるようにする取り組みが実現し、これまでに3回行われたということです。

4年生女子児童
「睡眠はただ寝るだけなので、どうでもいいと思っていましたが、睡眠を変えることで次の日を楽しい気分で過ごすことができるので、睡眠の大事さを考え直すことができました」。

さとえ学園小学校 小野田正範校長
「子どもたちが自分で睡眠の課題を見つけて、解決の方法を考えたことが成果だと思っています。それぞれに合った睡眠のあり方を自分自身で探れるようになってほしい」。