【詳報】ロシア大統領選 プーチン氏圧勝 “過去最高の得票率”

ロシアの大統領選挙は17日に開票が終了し、プーチン大統領が87%余りの得票率で圧勝しました。

国営メディアは得票率、投票率のいずれもロシアの大統領選挙としては過去最高だと伝えていますが、欧米からは公正な選挙ではないという批判が相次いでいます。

今月15日から17日にかけて投票が行われたロシアの大統領選挙は中央選挙管理委員会によりますと開票が終了し、プーチン氏は7627万票余りを獲得し得票率は87.28%で、ほかの候補を圧倒して勝利しました。

投票率は18日の時点で77.44%で国営メディアは、旧ソビエト崩壊以降のロシアの大統領選挙で得票率、投票率のいずれも最も高くなったとしています。

首相時代を含めておよそ四半世紀にわたって実権を握り続けてきたプーチン氏は、大統領としては、通算5期目に入ることになります。新たな任期は、2030年までの6年間です。

極東の中心都市ウラジオストクではプーチン氏の勝利を歓迎する声が聞かれ、このうち50代の男性は「プーチン大統領は国を正しい方向に導いてくれると思います。ウクライナの状況についても賛成しています。大統領に感謝しています」と話していました。

一方、今回の選挙では、各地の投票所で放火など選挙への反発とみられる動きや先月、刑務所で死亡した反体制派の指導者ナワリヌイ氏の妻のユリアさんや支援団体の呼びかけで抗議の意思を示す投票も行われました。

欧米や人権団体などからは対立する主要な候補の立候補などが認められず、公正な選挙ではないという批判が相次いでいます。

プーチン氏は日本時間の18日午前行った勝利宣言で「誰が私たちを威嚇し、抑圧しようとしても国民がまとまれば、成功することはない」と述べ、欧米との対決姿勢を改めて鮮明にしていて、選挙で圧倒的多数の国民から信任を得たとして、ウクライナへの軍事侵攻などこれまでの路線を続けるものとみられます。

“ウクライナ東部や南部4州でもプーチン氏 9割前後得票”

ロシアのプーチン政権は、軍事侵攻によって一方的に併合を宣言したウクライナ東部や南部の4つの州でもロシアの大統領選挙だとする活動を強行し、中央選挙管理委員会は開票の結果、プーチン大統領がそれぞれ9割前後を得票したと発表しました。

これを受けて、ウクライナ東部ドネツク州の親ロシア派の代表プシリン氏はロシア国営メディアに対し「プーチン大統領は、この地域の住民にとって、真の祖国の擁護者で、責任を恐れない人だ。その行動によってロシア全土を結束させた」などと述べ、地域の住民からも支持された結果だと主張しています。

ロシアがウクライナ東部や南部で大統領選挙だとする活動を行ったことについて、日本やアメリカなど55か国以上は共同声明で「国際法上、何の効力も持たない」として、ロシアを非難しています。

プーチン大統領 勝利を宣言

プーチン氏は、日本時間の午前5時半すぎ、首都モスクワ市内にある選挙対策本部で、支持者の前に姿を見せ「私たちは1つのチームで家族だ。この選挙は、国民からの信頼の結果だ。感謝する」と述べ、勝利を宣言しました。

また、ウクライナへの軍事侵攻について「特別軍事作戦における主導権は、ロシアにあり、日々前進している」と述べ、継続する考えを改めて示しました。

また、反体制派らがプーチン政権への抗議の意思を示す行動を実施したことについて「投票の呼びかけは称賛する。しかし影響は何もなかった」と述べ、効果はなかったとする見方を示しました。

そのうえで、各地の投票所で建物の中で放火したり、投票用紙を汚したりと選挙への反発とみられる動きが相次いだことを念頭に「投票用紙を台なしにした人は人々を混乱させるもので民主主義ではない。罰せられるべきだ」として、非難しました。

このほか、ロシアの反体制派の指導者ナワリヌイ氏が死亡したことについて「ナワリヌイ氏の死は悲しいことだ」と述べ、名前に言及し、死を悼む姿勢を示しました。

そのうえで、ナワリヌイ氏が死亡する前に、欧米側で拘束されている人と交換する交渉があったとして「私は同意すると言った。しかし、死亡し、できることは何もない」と述べました。

ナワリヌイ氏については、支援団体の幹部がナワリヌイ氏が死亡する前日、ドイツに収監されているロシアの元工作員の受刑者と交換し、釈放する交渉が最終段階にあったと主張していました。

さらに、ウクライナ侵攻をめぐりフランスのマクロン大統領が地上部隊の派遣の可能性を言及したことについて問われたのに対し「今の世界ではあらゆることがあり得る。これが第3次世界大戦の瀬戸際になりうる」と述べ、けん制しました。

一方、「ロシアは和平交渉に賛成しているが、敵の弾薬不足のためではない」と述べて、和平交渉に応じる構えを示しました。プーチン大統領は、これまでもロシアの安全保障を前提にした和平交渉に応じる構えを示していて、欧米側に揺さぶりをかけています。

プーチン大統領 他候補を招いて会談 国民の結束示すねらいも

通算5期目の当選を決めたプーチン大統領は、18日、選挙に立候補していたほかの3人の候補を首都モスクワのクレムリンに招き、会談しました。

この中でプーチン大統領は「われわれは議会での共同作業を継続する必要があり、そうすることで国が直面する課題の解決に近づくことができるだろう」と述べ、国の発展のために結束が必要だと強調しました。

3人はいずれもプーチン政権に協力的で「体制内野党」とも指摘される政党の幹部で、プーチン大統領の考えに賛同しました。

プーチン大統領としては、大統領選挙でウクライナ侵攻反対などを掲げた有力な対立候補を排除し、9割近い得票率で圧勝を演出後、ほかの候補も含め国民の結束を示すねらいもあるとみられます。

専門家「かなりの部分が消極的な支持に向かったか」

ロシア政治に詳しい静岡県立大学の浜由樹子准教授は、今回のロシア大統領選挙の結果について「必ずしも『圧力一辺倒』の結果ではなく、一定の国民からの支持もある」と述べ、旧ソビエト崩壊後の社会の混乱とプーチン政権下での経済成長を経験した高齢者を中心に、プーチン大統領への根強い支持が反映されていると指摘しました。

一方で、90%近いプーチン氏の得票率に関しては「今回の選挙ではウクライナ侵攻の是非が争点にならないよう、候補者のコントロールがされたが、それを考慮しても高い得票率だ。その1つの要因として、かなりの部分が消極的な支持に向かったことが考えられる」と述べ、政権への批判的な言動が厳しく監視される中、プーチン氏に投票した方が安全だと考えた有権者が少なくないという見方を示しました。

また、70%を超える投票率について「数だけ見ると非常に高いが、さまざまな形で投票に行くよう政権から圧力がかかっていたという報道を踏まえれば、もっと高くなっていてもおかしくなかった」として、投票に行かないことで 間接的にプーチン政権への反対の意思を示した有権者も一定数存在したと分析しています。

一方、今回の投票率と得票率がウクライナへの軍事侵攻にどう影響するかという質問については「攻撃を強化するとか第2波の動員をするというシナリオもあり得るが、プーチン政権は基本的に世論の動向に非常に敏感だ。特に、第2波の動員については相当反対が強く、何かの拍子に反政府活動に火をつけるリスクを政権は無視できない」として、プーチン政権が直ちに侵攻の規模を拡大させたり新たな動員を行ったりする可能性は低いという見方を示しています。

岸田首相「四島交流事業再開が当面の最優先事項」

岸田総理大臣は、総理大臣官邸で記者団に対し「他国の選挙の結果について具体的に申し上げることは控えなければならない」と述べました。

そのうえで「ロシアによるウクライナ侵略によって平和条約交渉をはじめとする交渉は全くめどが立たない状況にあるが、北方領土問題を解決して平和条約を締結していく方針は堅持していく」と述べました。

そして「現実には北方墓参などの四島交流事業を再開することが当面の最優先事項になると考えている。元島民の高齢化や切実な思いを考えると、ロシアに対して事業の再開を働きかけていかなければならない」と述べました。

中国 習主席が祝電 関係強化の姿勢強調

中国国営の新華社通信によりますと、習近平国家主席はロシアのプーチン大統領に18日祝電を送り、今回の選挙結果について「プーチン大統領に対するロシア国民の支持を十分に反映している。ロシアはプーチン大統領のリーダーシップのもとで大きく発展すると信じている」としています。

そのうえで「中国は中ロ関係の発展を非常に重視しており、中ロの新時代に向けた包括的で戦略的なパートナーシップを安定的に発展させたい」としてプーチン大統領とともに両国関係をさらに強化していく姿勢を強調しました。

インド モディ首相 再選に祝意示す

インドのモディ首相は「両国が時の試練を経て構築してきた特別かつ特権的な戦略的パートナーシップを今後さらに深めていくことを楽しみにしている」とXに投稿し、プーチン氏の再選に祝意を示しました。

インドにとってロシアは伝統的な友好国で、ウクライナ侵攻をめぐってもロシアを支持も非難もしない中立的な立場をみせています。

またインドはロシアから原油の輸入を大幅に増やすなど経済的なつながりを強化する姿勢もみせています。

ベラルーシ ルカシェンコ大統領も祝意伝える

ベラルーシの国営通信によりますと、ルカシェンコ大統領は18日、同盟関係にあるロシアのプーチン大統領に電話で祝意を伝えたと明らかにしました。

また、ルカシェンコ大統領は記者団に対し「欧米側がわれわれに揺さぶりをかけていたが非常にいい結果となった。われわれも2025年の選挙に向けて慎重に準備しなければならない」と述べ、盟友でもあるプーチン大統領が続投を決めたことを歓迎するとともに自身も大統領選挙に向けて準備を進める考えを示しました。

ベラルーシでは、来年大統領選挙が行われる予定で、1994年から30年にわたり大統領を務めるルカシェンコ大統領は7期目に向けて立候補する考えを示しています。

4年前に行われた大統領選挙では市民がルカシェンコ大統領の不正を訴えて大規模な抗議活動に発展し、先月行われた議会選挙でも反政権派がボイコットを呼びかけていて、ルカシェンコ政権は国内の引き締めを強めていくとみられます。

北朝鮮メディア “キム総書記がプーチン大統領に再選の祝電”

北朝鮮は、キム・ジョンウン(金正恩)総書記が18日プーチン大統領に再選の祝電をおくったと国営テレビを通じて発表しました。

このなかでは、ウクライナ侵攻も念頭に「国の主権と安全を守り、国際的な平和と正義を実現するための偉業の遂行において、必ず勝利すると固く信じる」としています。

そのうえで「私はあなたと固く手を握り、時代の要求に応え、両国の親善の新たな転機を作り出す」としてロシアとの関係をさらに強化する姿勢を強調しました。

キム総書記は先月プーチン大統領からロシア製の乗用車、アウルスが贈られ、先週15日に初めて公開行事で使ったと伝えられるなど、両首脳の蜜月ぶりは際立っています。

ロシア大統領府はことし1月、大統領選挙以降プーチン大統領が北朝鮮を訪れるとの見通しを示しています。

ナワリヌイ氏の妻 ドイツロシア大使館の前で抗議

ロシアの大統領選挙の投票最終日となった17日、ドイツの首都ベルリンでは、在外投票が行われている現地のロシア大使館の前に、2月に死亡した反体制派の指導者ナワリヌイ氏の妻ユリアさんら多くの人が集まり、プーチン政権への抗議の意思を示しました。

ベルリンにあるロシア大使館の前には17日、在外投票に訪れた人たちの長い行列ができ、中にはプーチン政権の批判を続け、先月死亡した反体制派の指導者ナワリヌイ氏の妻、ユリアさんの姿もありました。

訪れた人たちは「ユリア。私たちは共にある」と声を上げて連帯を示したり「戦争を直ちに止めろ」などとウクライナ侵攻に反対するシュプレヒコールを繰り返したりしていました。

ユリアさんや支援団体は、投票用紙にナワリヌイ氏の名前を書くなどして、プーチン政権への抗議の意思を示すよう呼びかけていて、ユリアさんは訴えに賛同する人たちから握手を求められていました。

ユリアさんは、多くの支持者らを前に「私と一緒に並んでくれてありがとうございました」と話し、プーチン政権への抗議の意思を示す行動に参加した人々に謝意を示しました。

またユリアさんは「ナワリヌイ」と書いて投票したことを明かしたうえで「大統領選挙の1か月前に、すでに投獄されていたプーチンの主要な政敵が殺害されることなどありえない」などと述べ、改めてナワリヌイ氏はプーチン政権によって「殺された」という認識を示し、強く非難しました。

投票に訪れた26歳の男性は「これまでの大統領選挙で在外投票にこのような長い行列ができたことはないと思います。ほとんどの人はプーチン氏に反対していると思います」と話していました。

また、25歳の女性は「プーチン氏は本当に悪い人物で多くの人の命を奪いました。ロシアで本物の選挙が行われないことをとても残念に思います」と話していました。

一方、ロシアの人権団体によりますと、投票を妨害したなどとして17日に国内21の都市で少なくとも85人が当局に拘束されたということです。

キーウ市民 “選挙は公正なものではない”

ロシアの大統領選挙でプーチン大統領が当選する見通しとなったことについて、ウクライナの首都キーウでは、市民から選挙は公正なものではないなどと指摘する声が聞かれました。

このうち63歳の男性は「武装した人間に『ここにサインしろ』と言われそうしない人がいるだろうか。民主主義の国に住む私たちには理解できない」と話し、選挙は当局の圧力のもとで行われたとして批判しました。

48歳の女性は、プーチン氏が9割近い得票率を得たとされていることについて「そんなのはうそだ。ありえない。ロシア国民は彼のことを恐れているのだ」と話していました。

その上で「ロシアで変化が起きることを信じている。革命のようなものが必要だ」と話し、ウクライナへの軍事侵攻を正当化しているプーチン政権を終わらせる必要があると主張しました。

また、23歳の男子学生は「あまり注目していなかった。私たちにとっては、アメリカ大統領選挙のほうが関心がある」と話し、ウクライナへの軍事支援が1つの争点となる、ことし11月のアメリカ大統領選挙のほうが重要だという見方を示しました。

ゼレンスキー大統領 “正当性などあるはずがない”

ロシアの大統領選挙でプーチン大統領が当選する見通しとなったことについて、ウクライナのゼレンスキー大統領は17日新たな動画を公開し「この選挙まがいの行為に正当性などあるはずがない」と述べ、選挙に正当性はないと非難しました。

そして「この人物が、ただ権力に溺れていて、永遠の支配を手にするためあらゆる手段を講じているということを、世界中の誰もが理解している。個人的な権力を長引かせるために、悪事を尽くしている」と述べたうえで、プーチン大統領は戦争犯罪で裁かれるべきだという考えを改めて示しました。

ホワイトハウス NSC “選挙 自由でも公正でもない”

アメリカ・ホワイトハウスのNSC=国家安全保障会議の報道官は17日、声明で「結果は驚くものではなかった。プーチン氏が政敵を投獄し、対立候補が立候補するのを妨げてきたことを考えれば、選挙が自由でも公正でもないことは明らかだ」としました。

イギリス キャメロン外相「自由で公正な選挙とは言えない」

ロシアの大統領選挙について、イギリスのキャメロン外相は17日、SNSに投稿し「ロシアで投票が締め切られた。 ウクライナ領内で違法に選挙が実施された。有権者の選択肢は限られ、独立した監視もなかった。これでは自由で公正な選挙とは言えない」として、軍事侵攻によって一方的に併合を宣言したウクライナ東部や南部でも選挙だとする活動を強行したなどとして、選挙の正当性に疑問を示しました。

フランス外務省「反対を表明した多くのロシア市民の勇気に敬意」

フランス外務省は18日、声明を発表し「市民社会や政権に反対する人たちなどへの弾圧の強化、表現の自由に対するこれまで以上の制限、そして独立系メディアの活動の禁止などを背景に行われた」と批判しています。

そのうえで「今回も自由で多元的かつ民主的な選挙の条件は満たされなかったが、フランスは基本的な政治的権利への攻撃に対して、平和的に反対を表明した多くのロシア市民の勇気に敬意を表したい」としています。

ヨーロッパ各国から批判相次ぐ

G7=主要7か国の議長国、イタリアのタヤーニ外相はXへの投稿で「ロシアの選挙は、自由でも公正でもない。選挙は不法に占領されたウクライナの領土でも行われた」と批判しました。

またドイツ外務省はXへの投稿で「偽の選挙であり、誰も結果に驚きはしない。プーチン大統領の統治は権威主義的で、検閲と抑圧、暴力に頼っている」と指摘しました。

ポーランドの外務省もホームページで声明を発表し、「ロシアでは、ロシア側が、大統領選挙だとする選挙が実施された。ウクライナの一時的な占領地域で選挙を実施するというクレムリンの不法な決定は、特に非難に値する」と強く批判しました。

EU ボレル上級代表「有権者は真の選択できず」

EU=ヨーロッパ連合の外相にあたるボレル上級代表は18日、EUを代表して声明を発表し「今回の選挙は政治的な活動を行う余地がますます制限される中で行われ、ロシアの有権者は真の選択をすることができず、正確な情報へのアクセスも大幅に制限された。EUは今後もロシアの市民による活動や人権擁護に取り組む人々、そして独立系メディアを支援していく」と述べました。

また、ロシアが一方的に併合を宣言したウクライナの地域でも大統領選挙だとする活動を強行したことについて「ロシアによるさらなる国際法違反で、ウクライナの独立と主権、領土の一体性を損なうものだ」と強く非難しました。

そして「ウクライナの領土で行われた選挙と称するものも、その結果も、EUは決して承認しない。これらは無効で何の法的効力もない」と強調しています。

ヨーロッパ各地で抗議の声

17日、ヨーロッパ各地でプーチン政権に抗議の意思を示す集会などが開かれました。

このうち、フランスのパリでは、エッフェル塔前の広場におよそ80人の市民などが集まり、プーチン大統領について非合法な活動をしていると非難したり「ウクライナと連帯を」などと声をあげたりしていました。

このあと、参加者たちはプーチン大統領と違い「ロシア人は戦争に反対だ」などと書かれたプラカードを掲げながらパリ市内を行進しました。

また、イギリスのロンドンでは在外投票が行われている現地のロシア大使館前に大勢の市民などが集まり「ロシアに自由を。ウクライナに平和を」などと声をあげていました。

投票のために大使館を訪れたロシア人の女性は「ウクライナへの支持を示すため、ウクライナの国旗を身に着けて来ました。私はこの戦争に反対です」と話していました。

林官房長官“ウクライナ国内でも『大統領選挙』認められない”

林官房長官は、午前の記者会見で「わが国としてロシアで実施された選挙についてコメントすることは差し控えたい」と述べました。

そのうえで「ロシアは違法に併合したウクライナ国内の地域でも、いわゆる『大統領選挙』を実施したとしているが、明らかな国際法違反で決して認められない。1日も早くウクライナに公正かつ永続的な平和を実現するべく、国際社会と連携して厳しい対ロ制裁と強力なウクライナ支援にしっかり取り組んでいく」と述べました。

北方領土の元島民 “交渉の進展を”

ロシアの大統領選挙でプーチン大統領が圧勝したことを受けて、北海道の根室市に住む北方領土の元島民からは領土問題の解決に向けて交渉の進展を望む声が聞かれました。

歯舞群島の勇留島出身で千島歯舞諸島居住者連盟 根室支部の角鹿泰司 支部長(86)は、プーチン政権継続の是非について明言を避けました。

そのうえで、ロシアが一方的に中断すると表明した北方領土問題を含む平和条約交渉について「プーチン大統領は安倍元総理大臣とも20回以上にわたり会談をしているので、交渉を続けるうえでは北方領土問題をよく知っているのだと思う」と話していました。

そして「今生きている元島民は一日でも早く島に渡って墓参がしたいと願っている。このままこう着状態を続けるのではなく日本とロシアの双方が打開のために声をかけ合ってほしい」と話していました。

日本に住むロシア人 “プーチン氏に投票16.2%” 東京で出口調査

ロシアの大統領選挙は、世界各地で在外投票が行われ、東京にあるロシア大使館によりますと日本では大使館や総領事館など合わせて4か所で1488人が投票したということです。

今回、欧米などに住むロシア人が選挙の実態を明らかにしたいとして出口調査の実施を呼びかけ、日本に住むロシア人のグループもこれに加わりました。

グループは大使館から出てくる人たちに声をかけ、投票した候補者や本人の年齢などを聞き取っていました。

調査を行ったイスラム・ヌルトディノフさんは「高い年齢層がプーチン氏を支持する傾向だ。若い世代ほどプーチン氏に投票しなかった人が多く、ナワリヌイ氏の妻の呼びかけが大きな影響を与えたことも見て取れた」と話していました。

東京の調査は600人以上を対象に行い、回答した人のうち
▽政党「新しい人々」のダワンコフ氏が最も多い45.8%
▽プーチン氏が16.2%
▽無効票が14.6%などとなっているということです。

このうち無効票を投じたという30代の会社員、ミハイルさん(仮名)は、おととしロシアによるウクライナへの軍事侵攻が始まったあとに日本に移り住みました。

ロシアの選挙で監視員を務めた経験があるということで、今回の大統領選挙について政権に不都合な候補者が事前に排除されているとして「プーチン大統領が内外に自分の権力を示すためのパフォーマンスに過ぎない」と批判していました。

また、プーチン政権への抗議運動を率いてきたナワリヌイ氏が亡くなったことで「近いうちにロシアに変革が起きるという望みは薄くなった」と肩を落としています。

それでもミハイルさんは17日、ナワリヌイ氏の妻の呼びかけに応じて正午に合わせて大使館に向かい、投票を行いました。

ミハイルさんは「自分たちの投票で選挙結果を覆すのは難しいが、多くの人が集まり、同じ考えの人がたくさんいることを知って、将来何か変わるかもしれないと思った」と話していました。

プーチン氏とは

ウラジーミル・プーチン大統領は、71歳。

大学で法律を学んだあと、旧ソビエトの治安機関、KGB=国家保安委員会に所属し情報工作員として旧東ドイツなどでも諜報活動にあたりました。

ソビエトの崩壊後、ロシア第2の都市で生まれ故郷のサンクトペテルブルクの副市長をつとめた後、大統領府の副長官やFSB=連邦保安庁の長官を歴任し、1999年、当時のエリツィン大統領に首相に抜てきされました。

この年、南部チェチェン共和国の武装勢力に対して軍事作戦を行い、その断固とした姿勢が国民に広く支持されました。

この年の12月31日に任期の途中で突然辞任を表明したエリツィン大統領から大統領代行に指名され、翌2000年の選挙で初めて当選を果たし、大統領に就任しました。

大統領就任後は「強いロシアの復活」を掲げてソビエト崩壊後の混乱した政治と経済の立て直しをはかり、国益を前面に押し出した外交を進めました。

3期連続で大統領を務めることが憲法で禁じられていることから、2008年の選挙では側近のメドベージェフ氏を後継者に据え、自身は首相に就任して影響力を持ち続けました。

そして、2012年、プーチン氏はメドベージェフ氏とポストを交換する形で大統領に復帰しました。

この選挙でプーチン氏は、64.2%の得票率で当選しましたが、前年12月の下院議会選挙での政権側による不正疑惑をきっかけに、かつてない批判の声にさらされ、勝利を宣言した際には涙を流す場面もありました。

2012年からは大統領の任期が1期4年から6年に延長され、プーチン氏は2018年に行われた選挙でも当選しました。

ウクライナを巡っては、2014年に南部クリミアを一方的に併合したのに続き、2022年2月に全面的な軍事侵攻に踏み切りました。

軍事侵攻に対して欧米側などは激しく非難し制裁を科しているほか、ICC=国際刑事裁判所は戦争犯罪の疑いでプーチン大統領に逮捕状を出しています。

プーチン氏は、これまで20年余りにわたって実権を握り続けてきましたが、4年前に憲法が改正され、2036年、83歳まで続投することが可能となっています。