【詳細】ロシア ウクライナに軍事侵攻(3月17日の動き)

ロシアによるウクライナに対する軍事侵攻が続いています。

ウクライナの各地でロシア軍とウクライナ軍が戦闘を続けていて、大勢の市民が国外へ避難しています。戦闘の状況や関係各国の外交など、ウクライナ情勢をめぐる17日(日本時間)の動きを随時更新でお伝えします。

(日本とウクライナとは7時間、ロシアのモスクワとは6時間の時差があります)

ロシア大統領選 反発の動き 投票所に放火も

ロシアの大統領選挙には、プーチン大統領などあわせて4人が立候補していて、15日から3日間にわたる投票は17日、最終日を迎えました。

ロシアの中央選挙管理委員会は17日の朝の時点で、有権者の60%以上が投票したと発表していて、日本時間の18日午前3時に締め切られたあと、直ちに開票されます。

一方、各地の投票所では、建物の中で放火したり、投票箱に染料を流し込んで投票用紙を汚したりと選挙への反発とみられる動きが相次ぎ、独立系メディアは少なくとも15件について当局が捜査を行っていると伝えています。

さらに、先月死亡した反体制派の指導者ナワリヌイ氏の妻のユリアさんや支援団体は、現地時間の17日正午にあわせてプーチン大統領以外の候補者に投票したり、投票用紙にナワリヌイ氏の名前を書いたりして、プーチン政権に抗議の意思を示すよう支持者に呼びかけています。

独立系メディアは、ロシア第3の都市、シベリアのノボシビルスクの投票所では抗議活動に参加するため市民が長い列を作ったなどと伝えています。

プーチン政権側は、選挙での圧勝を演出したい考えで、抗議の動きが広がらないよう警戒を強めているとみられます。

立候補認められなかったナデジディン氏が投票

ロシアの大統領選挙で、ウクライナへの軍事侵攻を批判し立候補を表明していたものの認められなかったナデジディン元下院議員は17日の正午を前に、モスクワ市内の投票所で投票しました。

ナデジディン氏は、投票後、地元メディアに対し「きょう、ロシアの国民は、わたしと同じようにプーチンではなくほかの誰かに投票することで、起きていることに対する態度を示すチャンスがある」と述べ、プーチン大統領以外に投票するよう呼びかけました。

ナデジディン氏は、これまでに政党「新しい人々」のダワンコフ下院議員に投票するつもりだと明かしていました。

また、ロシアのSNS上では、ナデジディン氏が授業を行っていた大学に設けられた投票所に17日の正午、若者の行列ができていて、中にはナデジディン氏の名前を連呼する姿も見られました。

ビラ燃やす 偽のロシア紙幣ばらまく クリミアでも抗議

ロシアは10年前に一方的に併合したウクライナ南部クリミアでも選挙だとする活動を行っていて、ロイター通信が15日に撮影した軍港都市セバストポリの映像では投票所とみられる場所に制服姿の複数の男性が訪れている様子や、高齢の女性が投票している様子が写っています。

これに対しクリミアではウクライナ側による抗議の活動も広がっていて、ウクライナメディアによりますと、地元の活動家たちはこの1週間でロシア側が配布した投票を呼びかけるビラなど2000枚以上を燃やしたということです。

また、クリミアの中心都市シンフェロポリやヤルタでは、投票箱に緑色の液体をかけるなどしたということです。

さらに、「クリミアはウクライナ」という文字やロシアの軍艦が沈没する絵が描かれた偽のロシア紙幣を1000枚以上つくってばらまいたとSNSで写真付きで公開し、ロシアによるクリミアの一方的な併合に対し抗議の意思を示しています。

ウクライナは、これまでに外務省が声明で現地のウクライナ国民に対して選挙だとする活動に参加しないよう求めているほか、シュミハリ首相が今月(3月)行われた会見で「国際社会はロシアによる『偽の選挙』の結果を認めないと信じている。各国にはロシアの活動を非難し、否定してほしい」と呼びかけています。

ウクライナ首都キーウでは冷めた声や怒りの声

ウクライナの首都キーウの広場では、ロシア軍がおととし(2022年)キーウに迫った戦闘の際、ウクライナ軍が破壊した戦車などが展示されています。展示を見に訪れた市民からは、ロシア大統領選挙への冷めた声や怒りの声が聞かれました。

電気技師の男性は「ロシアの政治体制は腐敗しているので、プーチン以外の候補者にチャンスはない。まるでショーのようなものだ」と話していました。

また、日系の自動車会社に勤める女性は「ウクライナでは私たちが選挙で大統領を選んだが、偽の選挙しか行われないロシアでは国民が選ぶことはできない。プーチンが再び大統領になるだろうが、権力を永遠に握り続けることは不可能だ。いつか審判が下ることを信じている」と話していました。

ロシアが10年前、一方的に併合したクリミア出身の薬剤師の男性は「クリミアには今も母や家族がいるが、治安機関に傍受され危険が及ぶおそれがあるので、今回の『選挙』と称する活動については話していない。占領地域にいるウクライナ人は力ずくで投票させられることもある。ロシアは民主国家ではなく完全に独裁国家で、プーチンは私のふるさとを奪った犯罪者だ」と憤っていました。

ロシア国防省 “8つの地域が無人機の攻撃を受けた”

ロシア国防省は17日、モスクワ州や、ウクライナと国境を接する南部クラスノダール地方、西部ベルゴロド州など8つの地域があわせて36機の無人機による攻撃を受けたと発表しました。

このうちモスクワにはあわせて5機の無人機が飛来し、ソビャーニン市長はSNSでモスクワ郊外のドモジェドボなどで無人機を撃墜し、破片などが落下したもののけが人はいないとしています。ただ、この影響で近くにあるドモジェドボ国際空港など3つの空港で一時、航空機の運航が制限されたということです。

一方、クラスノダール地方では17機の無人機が飛来し、地元当局は製油所が無人機による攻撃を受け1人が死亡したとしているほか、ベルゴロド州でも1人が死亡したとしています。

また、ロシアが軍事侵攻によって一方的な併合を宣言したウクライナ東部と南部の4つの州でも選挙だとする活動が強行されていますが、南部ザポリージャ州のロシア側の幹部はベルジャンシクの投票所近くで爆発物が爆発したとし「ウクライナ側のテロリストが妨害行為を行った」と主張しました。州内の別の地区でもウクライナ側が無人機を使い投票所に攻撃を行い、建物で火災が発生したとしています。

いずれもけが人などはでていないということです。ウクライナ側はこのところ国境を接するロシア側の地域への越境攻撃を続けているとみられるほか、各地で無人機による攻撃も行っています。これに対し、プーチン大統領は15日から行われているロシア大統領選挙に対する「投票への妨害だ」と非難してウクライナへの報復を示唆しています。

ロシアとウクライナの国境地帯で攻撃の応酬が激化か

ウクライナと国境を接するロシア西部のベルゴロド州では、16日、ウクライナ側からとみられる越境攻撃が続き、地元の知事によりますと、少なくとも2人が死亡したということです。

一連の攻撃について関与を表明しているウクライナ側に立って戦うロシア人義勇兵の組織は16日、SNSで声明を発表し、ロシアで投票が行われている大統領選挙を「茶番劇だ」と批判した上で、プーチン大統領の退陣などを要求しました。

また、ベルゴロド州と国境をはさんで接するウクライナ北部のスムイ州でも、15日にロシア側からの攻撃で少なくとも3人が死亡したほか、住民が集団で退避を始めたと地元当局が明らかにしていて、国境地帯で双方による攻撃の応酬が激しくなっているとみられます。

一方、ロシアの石油関連施設に対する無人機攻撃も相次いでいて、中部のサマラ州の知事は16日、地元にあるロシア最大の石油企業「ロスネフチ」の2つの製油所が攻撃を受け、このうちの1つで火災が発生したと明らかにしました。

ウクライナメディアは、ロシアの戦闘継続を支える経済力をそぐことをねらったウクライナ保安庁による攻撃だと伝えています。

706人を選挙監視員に ロシア側一部の受け入れ認めず

ロシアの国営通信社によりますと、中央選挙管理委員会は15日、106か国の706人を選挙監視員として認定したと発表しました。

監視員は、選挙を実施する国の同意を得て各国や国際機関が派遣するもので、公正で民主的な選挙が行われているか、投票や開票作業などを監視します。

ロシアメディアなどは、今回、監視員は、アメリカや中国、中東のイラン、シリア、南米のウルグアイなどから訪れていると伝えています。

旧ソビエト諸国でつくるCIS=独立国家共同体によりますと、ベラルーシやカザフスタンなど各加盟国からも派遣されるということです。

また、ロシアの国営メディアは、今回、監視員は、ロシア国内だけでなくウクライナ東部や南部のロシアが支配する地域にも入っていると伝えています。

一方、外務省によりますと、今回、日本からは監視員を派遣しないということです。

日本はこれまでもロシアで行われる選挙に監視員を派遣し、前回、6年前の大統領選挙ではロシア政治が専門の学識経験者と総務省選挙課の職員を派遣していました。

また、OSCE=ヨーロッパ安全保障協力機構はこれまでも監視員を派遣し、立候補の受け付けから、選挙期間中のメディアによる候補者の扱い、投票所や開票所の担当者が手順に従って作業を進めているかに至るまで監視し問題点を指摘してきました。

OSCEによりますと今回、ロシア側は監視員の受け入れを認めなかったということで「大変遺憾だ」とする声明を出しました。これに対してロシア外務省は「OSCEの監視がなくても国際監視活動の質は損なわれない」などと主張しました。