春闘 連合と全労連 回答あった企業の賃上げ額などの状況を公表

ことしの春闘で、労働組合の中央組織の「連合」が、これまでに回答があった700社余りを集計したところ、賃上げ額は平均で月額1万6469円、率にして5.28%と、1991年以来、33年ぶりに5%を超えたことがわかりました。去年の同じ時期と比較しても1.48ポイント上回る水準となっています。

また、労働団体の「全労連」はこれまでの回答状況を公表し、賃上げ額は平均で月額7447円、率にして2.52%と、およそ25年ぶりの水準となりました。ただ、物価高騰の中で生活を支える水準には至っていないとして、交渉を続ける構えです。

連合 賃上げ額33年ぶり5%超 “社会全体に流れつなげる”

連合は、13日に集中回答日を迎えたことしの春闘について、15日午前10時までに経営側から回答が示された771社の労働組合の状況について公表しました。

それによりますと、定期昇給分とベースアップ相当分をあわせた賃上げ額は平均で月額1万6469円、率にして5.28%となり、1991年以来、33年ぶりに5%を超えました。

去年の同じ時期と比較しても賃上げ額は4625円、率にして1.48ポイント上回っています。

また、非正規で働く人たちの時給の引き上げ額は平均で71.10円と、連合が集計を始めた2013年以降で最も高くなっています。

13日の集中回答日には、自動車や電機、鉄鋼などの大手企業で満額を含む高い水準の回答が相次ぎ、中には組合の要求を上回る賃上げとなった企業もありました。

中小企業の多くは今後、交渉が本格化する予定で、賃上げの流れを波及させることができるかが焦点となっています。

連合は今後、労使交渉を行う企業を含めた最終の集計結果をことし7月に公表する予定です。

連合の芳野会長は15日の記者会見で「現時点では要求に対して満額、あるいは要求を超える回答を引き出した組合の数は、去年以上という印象だ。33年ぶりの5%代の賃上げ率は、日本のステージ転換にふさわしいスタートが切れたと判断している。ことし、有意義な交渉が行われたことは、来年以降の持続的な賃上げにつながる重要な意味合いがある」と述べました。

その上で「今回の流れを中小企業や労働組合のない職場にどれだけ波及できるかということが、私たちに課せられた使命で、これからが本当の正念場だ。社会全体にこの流れをつなげていくことが、先行した組合や連合の役割ではないかと思っているので、引き続き精いっぱいサポートをしていきたい」と述べました。

全労連 賃上げ額 約25年ぶり水準も “生活支える水準に至らず”

およそ70万人の組合員がいる労働団体の「全労連」は、ことしの春闘で賃金の10%以上、月額にして3万円以上の要求方針を掲げ、ストライキの実施を含めて経営側と交渉を行ってきました。

全労連はこれまでに回答があった383の労働組合の状況を発表し、賃金の引き上げ額は定期昇給分とベースアップ相当分を合わせて平均で月額7447円、率にして2.52%となりました。

去年の同じ時期を1802円、率にして0.45ポイント上回り、およそ25年ぶりの引き上げ水準となりました。

しかし、要求水準とは大きな開きがあり、妥結した組合はおよそ1割にあたる40組合にとどまっていて、今後も多くの組合で交渉を続けていくとしています。

産業別では、卸売業や小売業では比較的高い水準の回答もあった一方で、医療分野では去年を下回る回答が多いということです。

黒澤幸一事務局長は「高水準で妥結する大手企業が目立つが、ほんの一握りで、中小企業の賃上げは厳しい。生活を支えるうえで最低限必要としていた要求に遠く及ばず、実質賃金のさらなる低下から逃られない水準だ。納得いく回答が得られるまで、たたかい抜く」と話していました。

新藤経済再生相 “力強い賃上げの流れ 労使の努力心強い”

ことしの春闘について、新藤経済再生担当大臣は閣議のあとの記者会見で「非常に力強い賃上げの流れができており、労使の努力を心強く思っている。この流れを中小企業などに広げるため、赤字の企業が黒字に転換できるような経営面での支援、そして設備投資への支援を手厚くしていく必要がある」と述べました。

そして、来週開かれる日銀の金融政策決定会合について、「日銀には政府と密接に連携を図りつつ、賃金上昇を伴う形での物価安定目標の持続的、安定的な実現に向けて、適切な金融政策運営を行うことを期待している」と述べました。

鈴木財務相 “政府としても賃上げを後押し”

鈴木財務大臣は閣議のあとの記者会見で、ことしの春闘で大手企業を中心に高い水準の賃上げで妥結が相次いでいることを受けて、政府としても賃上げを後押ししていく考えを強調しました。

この中で鈴木財務大臣は「大手企業を中心に力強い賃上げの流れができている。こうした流れが中小企業にも波及し、去年以上の賃上げが進むことを期待している。政府としても賃上げの流れが継続できるよう、あらゆる政策を総動員していきたい」と述べました。

一方、来週開かれる日銀の金融政策決定会合をめぐり、春闘の状況がマイナス金利の解除に追い風ではないかと問われたのに対して、鈴木大臣は「賃上げの状況は大企業を中心に去年を上回り、去年10月から12月までのGDP=国内総生産の改定値も2四半期ぶりのプラスとなったが、金融政策の具体的な手法や背景にある経済や金融情勢の解釈は日銀に委ねられている。政府として何か申し上げるのは控えなければならない」と述べるにとどめました。