美浜原発3号機 運転しないよう求める仮処分 大阪高裁で判断へ

運転開始から40年を超えて再稼働した福井県の美浜原子力発電所3号機について地元などの住民が老朽化による事故の危険があるなどと主張して、運転しないよう求めている仮処分の申し立てに対し、大阪高等裁判所が15日に判断を示します。

原発に反対する福井県や滋賀県などの住民は、48年前の1976年に運転を開始した福井県にある関西電力の美浜原発3号機について、設備の経年劣化に加えて、巨大地震への耐震性が不十分で重大事故が起きる危険があると主張して運転しないように求める仮処分を大阪地方裁判所に申し立てました。

おととし12月、大阪地裁は「関西電力の経年劣化の状況を評価する手法は不合理とはいえない」などとして、申し立てを退ける決定を出し、住民側は大阪高等裁判所に即時抗告しました。

住民側は、原発の老朽化や能登半島地震を踏まえて原発事故に備えた避難計画に不備があることなどを改めて主張したのに対し

関西電力は経年劣化を加味した耐震安全性の評価を行っていることや、避難計画は国の支援を受けて作成したものだなどと主張しています。

原発の運転は東京電力・福島第一原発事故のあと原則40年に制限されていますが美浜原発3号機は、原子力規制委員会の審査で最長60年まで運転延長が認められ、3年前に再稼働しました。

大阪高裁の判断は、15日午後1時半に示され、40年を超えて稼働している原発の安全性について、どう判断するのか注目されます。

関西電力 美浜原子力発電所3号機について

福井県美浜町にある関西電力・美浜原子力発電所3号機は、1976年に営業運転が始まり、運転期間を原則40年とする現在の制度のもと、40年を超えて稼働しています。

発電出力は82万6000キロワットと、一般家庭のおよそ185万世帯が1年間に使用する量に相当します。

2004年には、運転中にタービン建屋の配管が破損して高温の蒸気が噴き出し、作業員5人が死亡、6人が大けがをする事故がありました。

事故の前には、破損した配管が運転開始から28年間、1度も点検されていなかったことを把握していたものの、対策をとらなかった関西電力の対応が問題となり、運転再開までに2年半かかりました。

そのあと、2011年に起きた東京電力・福島第一原発の事故を受け、法律で原発の運転期間が原則40年に制限される中、2016年に、事故後に発足した原子力規制委員会の新たな規制基準の審査と、運転期間の延長に必要な審査の両方に合格しました。

そして、必要な安全対策工事を完了させ福井県などの同意を得て2021年に再稼働し、40年を超えて運転を続けています。

《争点への主張は》

原発に反対する住民側は、美浜原発3号機を運転しないよう求めた仮処分の申し立てを退けた大阪地方裁判所の決定について即時抗告し、老朽化による危険性などを改めて主張しています。

1 老朽化による危険性

争点の1つは、運転開始から40年を超えて稼働している、老朽化による事故の危険性です。

大阪地裁は「関西電力の経年劣化の状況を評価する手法は不合理とはいえず、運転開始後40年以上経過していることをもって、原発の新規制基準が定める対策以上に安全性を厳格で慎重に判断しなければならないとはいえない」などと判断しました。

これに対して住民側は、「老朽化した原発の運転は事故が起きるリスクを飛躍的に高める。劣化対策の難しさは、40年近く稼働する高浜原発でケーブル不良が起きたことや配管がすり減ったことからも明らかだ」などと主張しています。

2 地震に対する安全性

また、地震に対する安全性の確保について、大阪地裁は「美浜原発は、『活断層が極めて近いとは言えない』とした原子力規制委員会の判断は、不合理であるとは言えない」と判断しました。

これについて住民側は「美浜原発は、震源となる活断層との距離が1キロに満たないため極めて近いと言えるのに、耐震設計で考慮されていない。地裁は規制委員会の判断を認定しているだけで、『震源が敷地に極めて近い場合』にあたるか解釈を示しておらず不当だ」などと主張しています。

3 事故時の避難計画

さらに、原発事故が起きた際の避難計画についても争われ、住民側は、ことし1月に起きた能登半島地震を踏まえ、家屋が倒壊して屋内退避ができなかった場合を想定しておらず不備があるとしています。

4 関西電力は住民側の即時抗告退けるよう主張

一方、関西電力は、地裁の決定は会社の主張を認めたものだとしたうえで、経年劣化を加味した耐震安全性の評価を行っていることや、避難計画は国の支援を受けて作成したものであることなどを主張し、住民側の即時抗告を退けるよう求めています。