マンション「修繕積立金」が大幅引き上げ?背景と対策は
マンションの所有者が、毎月支払う修繕積立金。この積立金をめぐるある問題が、いま各地で起きています。修繕のための資金不足を理由に、徴収額が大幅に引き上げられたというのです。
中には、新築時の徴収額と比べて、月々の支払いが10倍を超えるケースもあったといいます。こうした事態を受けて、国も対応に乗り出しています。
(経済部記者 米田亘)
中には、新築時の徴収額と比べて、月々の支払いが10倍を超えるケースもあったといいます。こうした事態を受けて、国も対応に乗り出しています。
(経済部記者 米田亘)
積立金不足のマンション各地で
各地のマンション管理組合で起きているという修繕積立金の不足。
国土交通省が2018年度に行った調査では、長期の修繕計画に対して必要な積立金が「不足している」というマンションの割合は34.8%で、5年前・2013年度の2倍以上となりました。
データは少し前ですが、その後も増加傾向は続いているとみられています。
マンションの積立金の徴収方法は主に2通りあります。
国土交通省が2018年度に行った調査では、長期の修繕計画に対して必要な積立金が「不足している」というマンションの割合は34.8%で、5年前・2013年度の2倍以上となりました。
データは少し前ですが、その後も増加傾向は続いているとみられています。
マンションの積立金の徴収方法は主に2通りあります。
1つは、原則、計画当初の設定額で一律に徴収する「均等積立」。
もう1つは入居時は低く設定し、築年数に応じて段階的に引き上げる「段階増額積立」です。
1980年代に建てられたマンションは「均等積立」方式を採用している割合が53.2%と過半数を占めていますが、2010年以降に建てられたマンションは段階増額積立が67.8%と逆転しています。
もう1つは入居時は低く設定し、築年数に応じて段階的に引き上げる「段階増額積立」です。
1980年代に建てられたマンションは「均等積立」方式を採用している割合が53.2%と過半数を占めていますが、2010年以降に建てられたマンションは段階増額積立が67.8%と逆転しています。
徴収額 新築時の10倍超えのケースも
国土交通省は積立金不足の背景に、この「段階増額積立」の増加があるとみています。
国がおととし行った調査では、修繕計画を元に「新築時の徴収額と比べて、最終的な徴収額がどれだけ増えそうか」を尋ねたところ、平均で3.6倍。
中には10倍を超えるマンションもあったということです。
住民が積立金を支払えなくなり、滞納するケースも相次いでいて積立金不足につながっているとみられています。
こうした事態が起きる背景には、マンションの販売事業者側が当初の徴収額を低く設定することで、物件をセールスする際に買い手の負担を軽くし、購入につなげたいという思惑があるとみられています。
さらに、このところの資材価格の高騰によって修繕費がかさんでいることも、積立金不足に拍車をかける結果となっています。
国がおととし行った調査では、修繕計画を元に「新築時の徴収額と比べて、最終的な徴収額がどれだけ増えそうか」を尋ねたところ、平均で3.6倍。
中には10倍を超えるマンションもあったということです。
住民が積立金を支払えなくなり、滞納するケースも相次いでいて積立金不足につながっているとみられています。
こうした事態が起きる背景には、マンションの販売事業者側が当初の徴収額を低く設定することで、物件をセールスする際に買い手の負担を軽くし、購入につなげたいという思惑があるとみられています。
さらに、このところの資材価格の高騰によって修繕費がかさんでいることも、積立金不足に拍車をかける結果となっています。
国も対策に ポイントは“下限”と“上限”の設定
こうした事態をどう防ぐのか。
国土交通省は去年10月専門の有識者会議を設けて検討を重ね、2月、積立金の徴収方法に関するガイドラインとも言える「目安」の案を示しました。
ポイントは徴収額の「下限」と「上限」の設定です。
国土交通省は去年10月専門の有識者会議を設けて検討を重ね、2月、積立金の徴収方法に関するガイドラインとも言える「目安」の案を示しました。
ポイントは徴収額の「下限」と「上限」の設定です。
まず、修繕計画に基づいて必要となる積立金の総額を、徴収期間で割って1か月ごとの「基準額」を算出します。
その上で、新築時の徴収額を少なくとも「基準額の0.6倍」とするよう求めます。
つまり、基準額の0.6倍が徴収の「下限」となるわけです。
一方で、その後、築年数が経過するに従って、徴収額を引き上げる場合も基準額の1.1倍以内とするよう求めています。
こちらが「上限」です。
例えば、50世帯がそれぞれ同じ広さの部屋に住むマンションで向こう30年の修繕計画を組んだケースを想定します。
その上で、新築時の徴収額を少なくとも「基準額の0.6倍」とするよう求めます。
つまり、基準額の0.6倍が徴収の「下限」となるわけです。
一方で、その後、築年数が経過するに従って、徴収額を引き上げる場合も基準額の1.1倍以内とするよう求めています。
こちらが「上限」です。
例えば、50世帯がそれぞれ同じ広さの部屋に住むマンションで向こう30年の修繕計画を組んだケースを想定します。
総額で3億6000万円が必要だと見積もられた場合、これを30年=360か月で割ると1か月あたりの基準額は100万円となります。
これをもとに当初額を下限いっぱいに設定すると60万円。
これを仮に各世帯から均等に徴収したとすると、1世帯あたりの当初の徴収額は1万2000円となります。
のちのち引き上げる場合の上限は2万2000円となります。
1万2000円から2万2000円の範囲内に納める形で1戸あたりの総額=720万円を不足なく積み立てるには、かなり早い段階から計画的に徴収額を引き上げる必要があります。
つまり、徴収額の「下限」と「上限」の幅を狭くすることで、管理組合が平時から「安すぎず、高すぎない」均等に近い形で徴収するよう促していこうということです。
国土交通省は、このように当初から計画的に積み立てれば、修繕費用が予想以上に膨れ上がった場合にも対応しやすくなるとしています。
その上で、「均等積立」の方がより望ましいとしています。
有識者会議は3月中にも再度検討会を開き、この案を正式に決定する見通しです。
(※実際の徴収額は所有する物件の面積などに応じて割りふられます)
これをもとに当初額を下限いっぱいに設定すると60万円。
これを仮に各世帯から均等に徴収したとすると、1世帯あたりの当初の徴収額は1万2000円となります。
のちのち引き上げる場合の上限は2万2000円となります。
1万2000円から2万2000円の範囲内に納める形で1戸あたりの総額=720万円を不足なく積み立てるには、かなり早い段階から計画的に徴収額を引き上げる必要があります。
つまり、徴収額の「下限」と「上限」の幅を狭くすることで、管理組合が平時から「安すぎず、高すぎない」均等に近い形で徴収するよう促していこうということです。
国土交通省は、このように当初から計画的に積み立てれば、修繕費用が予想以上に膨れ上がった場合にも対応しやすくなるとしています。
その上で、「均等積立」の方がより望ましいとしています。
有識者会議は3月中にも再度検討会を開き、この案を正式に決定する見通しです。
(※実際の徴収額は所有する物件の面積などに応じて割りふられます)
会議の座長 横浜市立大学 齊藤教授
「当初の金額を低く設定し、その後、急に徴収額引き上げようとしても、部屋の所有者による総会で反対されるなどして、思うように上げられないケースも相次いでいる。徴収額の目安を示すことで、どのような修繕計画を組めばいいかが分かりやすくなる。全国の管理組合の皆さんはこの会議で議論した結果を生かして計画的に積み立ててもらいたい」
「当初の金額を低く設定し、その後、急に徴収額引き上げようとしても、部屋の所有者による総会で反対されるなどして、思うように上げられないケースも相次いでいる。徴収額の目安を示すことで、どのような修繕計画を組めばいいかが分かりやすくなる。全国の管理組合の皆さんはこの会議で議論した結果を生かして計画的に積み立ててもらいたい」
この目安、どう活用する?
今回の目安はあくまで国が管理組合に示すガイドラインのようなものですが、国土交通省は、さらに実効性を持たせるための施策を検討しています。
マンションの修繕や管理をめぐって国土交通省は2022年に「管理計画認定」という制度を始めました。
マンション管理組合が組織運営や資金計画などを地元の自治体に提出し、この制度にもとづいて認定されれば、共用部のリフォーム費用を住宅金融支援機構から借り入れた場合に、金利が年0.2%引き下げられる優遇を受けることができます。
国土交通省は、この認定の条件として、今回の目安にもとづく徴収計画を盛り込むことも検討しています。
住宅を購入する機会は一生に何度もあるわけではありません。
マンションで長く安全に暮らし続けるためには、老朽化に応じた大規模修繕は避けられません。
今回の動きをきっかけに、全国の管理組合でどれだけ計画の見直しが進むかが注目されます。
(2月28日「おはよう日本」などで放送)
マンションの修繕や管理をめぐって国土交通省は2022年に「管理計画認定」という制度を始めました。
マンション管理組合が組織運営や資金計画などを地元の自治体に提出し、この制度にもとづいて認定されれば、共用部のリフォーム費用を住宅金融支援機構から借り入れた場合に、金利が年0.2%引き下げられる優遇を受けることができます。
国土交通省は、この認定の条件として、今回の目安にもとづく徴収計画を盛り込むことも検討しています。
住宅を購入する機会は一生に何度もあるわけではありません。
マンションで長く安全に暮らし続けるためには、老朽化に応じた大規模修繕は避けられません。
今回の動きをきっかけに、全国の管理組合でどれだけ計画の見直しが進むかが注目されます。
(2月28日「おはよう日本」などで放送)
経済部記者
米田 亘
2016年入局
札幌局、釧路局、新潟局を経て現所属
国土交通省を担当
米田 亘
2016年入局
札幌局、釧路局、新潟局を経て現所属
国土交通省を担当