参院予算委 集中審議 次期戦闘機輸出や政治資金問題などで論戦

国会は参議院予算委員会で集中審議が行われ、次期戦闘機の第三国への輸出を認めるかどうかや、自民党の派閥の政治資金パーティーをめぐる問題などについて論戦が交わされました。

北朝鮮による拉致問題

自民党の小林一大氏は北朝鮮による拉致問題をめぐり、「残されている時間は一切ないという強い気持ちを持って、こう着している事態に風穴を開けなければならない。家族の思いを受けた決意を示してほしい」と質問しました。

これに対し、岸田総理大臣は「私自身の手で解決するという強い思いを申し上げている。北朝鮮との諸問題を解決するにはトップとの会談が重要で、キム・ジョンウン(金正恩)総書記との首脳会談を実現すべく、私直轄のハイレベルでの協議を進めていく」と述べました。

政治資金問題 参院政倫審

立憲民主党の塩村文夏氏は自民党の派閥の政治資金パーティーをめぐる問題を受けて、14日に参議院で開かれる政治倫理審査会について、「出席する『裏金議員』はたったの3人だ。これでは全く説明責任を果たしていることにならないのではないか」とただしました。

これに対し、岸田総理大臣は「政治倫理審査会は説明者の意思を尊重するルールになっており、それを踏まえて開催される。いずれにせよ、こうした場を含め、あらゆる場を通じて関係者が説明を尽くすよう、党としても促していく」と述べました。

また、関係議員の処分について問われ、岸田総理大臣は「今の時点でタイミングなどを予断を持って申し上げることは控えるが、関係者の処分は厳正かつ公正なものでなければならず、党則などに基づいて、党紀委員会で適切な手続きを経て判断したい」と述べました。

さらに、この問題を受けた自民党の党則の改正をめぐり、岸田総理大臣は関係議員が新たな党則での処分対象になるか問われ、「政治家の責任を厳格化するため党則改正を行うが、こうした規則やルールは遡及(そきゅう)して適用することはありえない。新しいルールがスタートしてから適用ということになる」と述べました。

次期戦闘機の第三国輸出 認めるか

公明党の西田参議院会長は次期戦闘機の第三国への輸出を認めるかどうかをめぐり、「これまで日本がとってきた安全保障政策の重大な変更だ。なぜ方針を変更するに至ったのか、なぜ輸出する必要があるのかについて、新たな閣議決定を行うべきではないか」と求めました。

これに対し、岸田総理大臣は「第三国移転の必要性の認識が変化した点に鑑み、改めて政府方針を閣議決定する。さらに、将来、実際に移転する際も、個別の案件ごとに閣議決定を行い、いわば二重の閣議決定による、より厳格なプロセスを経ることを考えている」と述べました。

共産党の山添政策委員長は次期戦闘機の第三国への輸出を認めるかどうかをめぐり、「次期戦闘機は紛れもない殺傷兵器だ。現に戦闘が行われていると判断される国は輸出先から除くというが、輸出時点で戦闘中でさえなければ歯止めになるのか。国際法に違反する攻撃に使われかねない」とただしました。

これに対し、岸田総理大臣は「他国への侵略など国連憲章に反するような行為に使用されることがないよう、国連憲章の目的と原則に適合した使用や、第三国移転の事前同意を義務づける国際約束の締結国に移転先を限定する。国際法違反の攻撃に使用されるとの懸念はあたらない」と述べました。

また、「政府・与党の協議だけで閣議決定を行い、輸出を認めるのは、国会を無視している」と指摘されたのに対し、岸田総理大臣は「歯止めとして輸出全体の容認と個々の輸出の判断という二重の閣議決定を行うことで、国会でよく議論いただくことになる。国会無視であるとは考えていない」と述べました。

賃上げ

日本維新の会の片山大介氏は賃上げをめぐり、「きょうは春闘の集中回答日だが、主要企業による回答は一里塚にすぎない。従業員数の7割を占める中小企業にどのように波及させていくのか。その道筋はどうなっているか」と質問しました。

これに対し、岸田総理大臣は「今後の中小企業や小規模企業の賃金交渉に向け、去年を上回る水準の賃上げを呼びかけていきたい。労務費転嫁の指針の活用や賃上げ促進税制の拡充など、政策を総動員し、中小企業の賃上げを後押ししていきたい」と述べました。

少子化対策

国民民主党の伊藤孝恵氏は少子化対策をめぐり、「政策の評価指標となる『KPI』がなければ効果の検証も改善もできない。的外れな政策を量産しても責任を取る人がいないことになる。具体的な評価指標の導入を提案したい」と質問しました。

これに対し、岸田総理大臣は「評価指標が大事だという指摘は同感だ。子ども政策でどういった評価指標を導入するかは、いろいろと配慮しなければならない難しい点もあるが、できるかぎり導入し、政策の評価につなげる姿勢は大事にしていきたい」と述べました。

能登半島地震の被災地支援

れいわ新選組の山本代表は能登半島地震で被災した住宅の再建を支援するための新たな交付金制度について、「被災者は対象地域の拡大や使いたい時に使える資金を求めている。災害救助法が適用される全世帯の被災者が生活再建に向け、裁量で使える当面の資金として300万円を一律に支給してほしい」と求めました。

これに対し、岸田総理大臣は「被災者の声は政府として真剣に受け止めたい。対象地域以外でも県の支援制度をあわせた取り組みを進め、幅広い支援を行う。ほかの住宅支援制度などもできるだけ対応を柔軟化し、支援が行き届くよう努力する」と述べました。

また、能登半島地震の液状化被害に対する国の支援強化策について、岸田総理大臣は、来週中にも政府の復旧・復興支援本部を開き、具体策をとりまとめる方針を示しました。

経済情勢に対する認識

経済情勢に対する認識を問われ、岸田総理大臣は「日本経済が再びデフレに戻る見込みがないと言える状況にはまだ至っておらず、したがってデフレ脱却には至っていない。一方で30年ぶりの賃上げや株価など明るい兆しが出てきており、経済の好循環を実現するため、今が正念場だ」と述べました。