日本製鉄工場 被ばく事故 “年間限度10倍相当の放射線”と評価

3年前、兵庫県にある日本製鉄の工場でエックス線装置の点検中に社員2人が被ばくした事故で、原子力規制庁は1人が最大で年間限度の10倍に相当する500ミリグレイの放射線を浴びたと評価し、IAEA=国際原子力機関に報告しました。規制庁は事故の深刻さについて、国際的な基準で「重大な異常事象」を示す「レベル3」に当たるとしています。

3年前の2021年5月、兵庫県姫路市にある日本製鉄の工場で、製品の厚さを測定するエックス線装置の点検を行った男性社員2人が誤ってエックス線が照射されている部屋に入って被ばくし、その後、広島大学の施設に入院して検査や治療を受けました。

原子力規制庁によりますと、2人の腕や顔には被ばくによって皮膚に発赤という障害が出たということです。

また、異常な染色体が発生する頻度を調べた結果、被ばく線量は1人が400から500ミリグレイと最大で年間限度の10倍に相当すると評価されたほか、もう1人が100ミリグレイ未満と評価されたということで、規制庁は先月、この結果をIAEAに報告しました。

規制庁は事故の深刻さについて、放射線による致命的ではない健康影響があったとして、「INES」と呼ばれる国際的な評価基準で、0から7までの8段階のうち上から5番目の「レベル3」と評価しています。

「レベル3」は「重大な異常事象」とされ、1997年に茨城県東海村にある核燃料の再処理施設で起きた爆発事故と同じレベルで、同じく東海村にある核燃料加工会社で1999年に発生し、被ばくにより2人が亡くなった臨界事故は「レベル4」です。

今回の事故を受けて厚生労働省は対策の検討を進めています。

専門家「重大な事故 施設管理者はしっかり安全確保を」

放射線防護に詳しい大分県立看護科学大学の草間朋子名誉学長は「レベル3に評価されたということは、大変重大な事故と考えてよい。『発赤』が出るということは、局所的にはかなりの線量を受けている可能性がある。それだけの被ばくをする事例はまれで、相当なインパクトがある」と話していました。

その上で「放射線はさまざまな領域で使われている。施設の管理者はしっかり安全を確保し、放射線作業者は安全の視点を忘れず、何を守らなくてはならないか常々考えながら作業に当たらなくてはいけない」と述べ、設備面の対策に加え、定期的に教育や訓練を繰り返していく必要があると訴えていました。