IAEA事務局長“処理水放出の誤情報への対処法は情報の透明性”

12日来日したIAEA=国際原子力機関のトップ、グロッシ事務局長がNHKのインタビューに応じ、東京電力・福島第一原発の処理水の放出について「多くの誤った情報や混乱があるが、唯一の対処法は情報の完全な透明性だ」と述べ、IAEAとして収集した安全性に関する情報を、反発や懸念を示す各国などと共有していく考えを示しました。

IAEAのグロッシ事務局長は福島第一原発にたまる処理水の海への放出の状況を確認するため12日から日本を訪れていて、13日の視察を前にNHKのインタビューに応じました。

この中で事務局長は、IAEAが福島第一原発で、独立した立場から処理水の安全性を検証していることに触れ「日本の計画は国際的な安全基準に合致している。重要なのは計画どおりに実行されるかどうかだ」と述べ、13日の視察で、現場の状況を確かめる考えを示しました。

また中国など、処理水の放出に反発や懸念を示す国への対応について問われると、事務局長は「現在も対話が続いていて、懸念が解消されることを願っている。私の感触では、各国の人々は処理水の状況を少しずつ理解してきていると思う」と述べました。

そのうえで「処理水について恐れている人もいるし、多くの誤った情報や混乱もある。これらに対する唯一の対処法は情報の完全な透明性だ」と述べ、科学的な理解を促進するため、IAEAとして収集した安全性に関する情報を、各国と共有していく考えを示しました。

テロ対策上の問題相次いだ柏崎刈羽原発について

また、グロッシ事務局長はインタビューの中で、テロ対策上の問題が相次いだ新潟県にある東京電力の柏崎刈羽原子力発電所で、今月下旬から現地調査を行うことについて「あらゆる対策が講じられるよう支援と助言を提供する」と述べました。

柏崎刈羽原発では、テロ対策上の問題が3年前に相次いで発覚し、原子力規制委員会から事実上の運転禁止命令が出されました。

命令は、去年12月に解除されましたが、東京電力はIAEAに、第三者の立場から改善状況を評価することを依頼し、今月25日から来月2日にかけて現地調査が行われる予定です。

グロッシ事務局長は「東京電力は対策強化の必要性を認識している」と述べたうえで、「われわれが要請されたのは、広大な柏崎刈羽原発で核セキュリティーのあらゆる対策が講じられるよう支援と助言を提供することだ。タイムリーなアドバイスを行いたい」と話しました。

東京電力によりますと、IAEAの専門家チームは現地調査の期間中、テロ対策に関連する設備の確認や所員への聞き取りなどを行うということです。

ザポリージャ原発の状況にあらためて懸念

グロッシ事務局長はロシア側が占拠し、安全性への懸念が続く、ウクライナ南部のザポリージャ原子力発電所をめぐって、今月、ロシアでプーチン大統領と会談しました。

事務局長はインタビューで、会談の詳細については言及を避け「原発の状況に対する私たちの技術的な評価を伝えた」と述べるにとどめました。

そして「原発の安全性を確保するためにもっとも直接的で効果的な方法は、平和であり、戦争の終結だ。原子力発電所を軍事的な目的で使うことは絶対にあってはならず、原発事故は誰も得をしない」と述べてザポリージャ原発の状況にあらためて懸念を示しました。

ザポリージャ原発は、相次ぐ砲撃などによって、原子炉の冷却などに必要な外部からの電力の供給がたびたび途絶えるなど安全性への懸念が続いています。