能登半島地震 必要な支援と課題は?首長発言から【3月12日】

12日、石川県の「災害対策本部員会議」が開かれました。

輪島市と珠洲市の市長は“水”と“住まい”の確保、それに“建物の解体”がいま重要になっているなどと訴えました。6つの自治体の首長の発言をまとめました。

※発言の順番に掲載しています。

輪島市 坂口茂市長「水、住まい、家屋解体が最も重要」

「少しずつだが復旧・復興にむけ進んでいると感じている」

「輪島市では避難所の集約に努めているが、(避難所の数は)先週と比べて2か所減って53か所になった。避難者も49人減って1857人となっている」

「建物の被害調査はおよそ9割で終わった。住家の『り災証明書』の交付は54%まできた。さらに進めていきたい」

今、最も重要なこととして力をいれているのは“水・住まい・倒壊家屋の解体撤去”だ

「水道の復旧率は先週と比べておよそ9%伸びて58%まできた。毎日水道に関して打ち合わせすることがなくなり、少し安心している」

「住まいについて。仮設住宅の建設に着手していて住戸の数も伸びてきているが、引き続き建設の促進をお願いしたい」

「倒壊家屋の解体撤去は、膨大な事務量も含め、資機材の支援もないとなかなか進まない。市は3月15日に広報し、18日から相談の予約を開始する。4月1日から申請の受け付けをし、震災がれきの撤去を進めていきたい」

「輪島市からお願いだが、市には被災した公共施設が多数あり、ぜい弱な財政の中でこれを解体するのは非常に困難だ。公共施設の公費解体を認めてもらいたい

珠洲市 泉谷満寿裕市長「公費解体の作業員 宿泊場所の確保課題」

「輪島市の市長からもあったが、市民が待ち望んでいるのは“水と住まいと全半壊建物の解体撤去”だ

「断水の解消について。人口の9割をカバーする宝立浄水場エリアで、予定どおり3月10日に珠洲市役所、珠洲市総合病院、避難所になっている上戸小、飯田小、緑丘中とその周辺で給水を開始した」

「蛸島漁協で底引き網の船の出漁に向け準備を進めていて『油と氷』が重要だ。氷を作るための水は通水・給水できるように努めていくが、給油施設は仮の施設など県や国に対応策を工夫をしてもらい、早急に支援をお願いしたい」

「仮設住宅は126戸完成。3月14日にはまた60戸が加えて完成する。3月までにあわせて1087戸を着工し、456戸が完成する予定。希望する人すべてに入居いただくための仮設住宅はあともう少しでめどが立つところで、引き続き尽力をお願いしたい」

「全半壊の建物の解体撤去、市では公費解体の仮申請を2月13日から始めていて、現在、申請が約1300件。本申請は4月1日で、できるだけ前倒したいと思っているが、始めたい。緊急公費解体は2月26日から一件着手し、今週4件着手できると思う」

「この解体にかかる作業員の方々、徐々に市に入ってきていただいているが、寝泊まりする場所が非常にネック。今後、相当規模の人数の方々が入られる予定で、市として宿泊施設の手配などに努めているが、仮設のプレハブ、寝泊まりする場所の整備で県や国の支援をお願いしたい

穴水町 吉村光輝町長「中堅クラスの技術職員の派遣を」

「避難者数は326人、避難所数は17か所。ラインおよび電話による避難者登録は735人」

「仮設住宅は、現在76戸が整備済みで今後、417戸について随時、整備を行っていく予定」

みなし仮設の入居継続の要件について。今は(自宅の被災状況によっては)町が上水道復旧を発表してから40日以内にみなし住宅を出なければならないことになっているが、宅内配管の漏水の完全復旧までは自宅に戻れず、修理を依頼しても時間を要する。可能ならば要件緩和してもらいたい」

通学路の確保について。国道249号線から向洋小学校までの歩道が土砂で埋まったままだ。町から県に依頼しているが現在もまだ通行ができていない。新学期も近づいていて早期対応をお願いしたい

「介護保険事業について。町民が県内外に避難せざるをえない状況となり、生活環境が大きく変化したため、町外の避難先で介護保険サービスの利用者が急増している。保険者は穴水町であるため、保険給付に関わる負担が急増することが危惧される」
「震災以降、転出による人口減が進み、介護保険料収入が減るおそれがある。町全体が大きく被災していて各種減免が行われる中、介護保険料の値上げも見送った。保険料不足で介護保険の健全な運営ができないことが危惧される」
「多くの社会福祉施設の建物などが大きく被災した。国の補助金では原形復旧が基本で、耐震対策や機能追加を講じることは災害査定上認められていない。創造的復興の観点から柔軟に対応いただきたい」

「最後に人的支援について。県などを通じ全国の自治体に復旧・復興業務に携わる中長期の技術系職員を中心に30人規模で派遣を要望している。しかし穴水町のような技術系職員の少ない自治体では、受け入れ態勢を整えるのに限界がある。全国から派遣される技術系職員をたばねる、石川県の中堅クラスの技術系職員の派遣をお願いしたい。これら派遣職員には、この難局を乗り切るため、県や国の各省庁をつなぐ役割と、町の復興を引っ張る役割を果たしていただきたい」

能登町 大森凡世町長「長期避難世帯の認定調査に支援を」

「避難者は469人で、前回(5日)の報告から32人減っている」

「断水解消は累計3630戸で、通水率は58%まできた。まだまだなので復旧体制を強化し、断水解消を加速化していく」

「次に医療に関する保険者の事務負担の軽減について。医療機関を受診された方が負担金の猶予を受けた場合、保険者である町などがレセプト(診療報酬明細)を確認し、免除対象者に手続きをお願いしなくてはならないなど、保険者に多大な事務負担が生じる。少しでも事務負担軽減につながるよう配慮をお願いしたい

「『長期避難世帯』の認定について。町では地滑りほか、崖崩れなど危険性がある地区に避難指示を発表しているが、現状改善しておらず、避難指示解除の判断が非常に難しい状況。長期にわたる見込みの地区もあり、被災者生活再建支援法の『長期避難世帯』の認定が必要と考えている。認定は町の調査や報告をふまえ県が行うことになっているが、町単独では危険性の把握など専門的な調査は非常に困難で、できれば県の助言や支援をいただきたい」

「地区が管理する小規模な水道施設の復旧支援について。平成19年の能登地震の際には基金が設けられ、地元管理の水道施設の復旧助成が行われた。町内では地元の組合が管理する施設が被災し、応急復旧でつないでいる状況で資金繰りに非常に苦慮している。早期復旧につながるよう支援制度の創設をお願いしたい」

「支援者の宿泊施設について。町でも宿泊施設が必要で、具体的な敷地の候補について伝えている。ぜひ町内の宿泊拠点の整備もお願いしたい」

「仮設住宅のサポートセンターについて。仮設住宅の入居後、住民のサポート体制の整備は非常に重要な課題。運営面も含め、早急に準備をお願いしたい

「最後に、輪島市の市長からもあったが、公共施設の公費解体を能登地区全体のことを考え、お願いしたい」

七尾市 茶谷義隆市長「仮設住宅が最優先 できるだけ早く建設を」

「避難者は543人で前回から比べ57人減少している」

「断水の割合が13.3%。およそ9割で通水しているが、和倉温泉や能登島地区、石崎地区では断水となっている。名古屋市を中心に尽力いただき、通水エリアを広げていただいている」

「り災証明の証明書の発行割合は90%となっている。2次調査の申請件数は1322件で、このうち調査を進めているのが106件」

「公費解体の申請件数は273件。七尾市にもさまざまな公共施設があり、解体もあるが、修繕では県所有の建物、例えば県立美術館などもあり、そのあたりの対応もお願いできればと思っている」

「避難している人に日常生活を早く取り戻してもらいたい。そのためには仮設住宅の建設が最優先だと思っている。市では計画はほぼできているが、仮設住宅の建設の進行状況があまり良くないと聞いており、できるだけ早い建設をお願いしたい

志賀町 稲岡健太郎町長「全壊など公費解体の受付16日に開始」

「避難所は13施設。避難者は373人で前回(5日)の報告から76人減少している」

「り災証明は1次調査が1万1685棟、89%まで調査が進んでいる。発行件数は80%」

公費解体は3月16日から全壊・大規模半壊の住家を対象に受け付けを開始し、3月23日からはそれ以外の家屋について受け付けを開始したい。混雑を避けるため、予約制としている」

「災害ゴミについては、1日平均686台、平均およそ118トンで、前回の報告より減少してきている」

「災害ボランティアについて。ニーズの受け付けが累計902件に達した。完了したのは682件で、75%と順調にきている。参加したボランティアの人数もおよそ3760人に」

公費による解体撤去の申請は必要書類が大変多く、事務的にも、申請者にも煩雑で、多くの人員が必要となる。申請事務を簡素化する観点から、登記情報の確認は市町でできることから、申請に必要な登記事項の提出が省略できるとされた。しかし、現在の登記情報システムでは(職員が)土日祝日に利用することができない。申請者の予約が土日祝日に大変多く入っていて、申請者にも不便をおかけすることにもなり、登記情報システムを土日祝日でも閲覧可能にできるよう、国や県に検討してもらいたい

石川県の「災害対策本部員会議」の内容は県のホームページから誰でも確認できます。資料を確認できるほか、会議の動画を見ることもできます。