【詳細】ガザ地区 “食料支援待つ住民が再び攻撃受けた”

イスラエル軍とイスラム組織ハマスの戦闘が続くガザ地区では、12日、食料支援を待つ住民が再び攻撃を受けたと現地メディアが伝えるなど、イスラム教の神聖な断食月ラマダンの最中も深刻な人道状況が続いています。

※イスラエルやパレスチナに関する日本時間3月12日の動きを随時更新してお伝えします。

ガザ地区保健当局“かつてない規模の飢餓による死者のおそれ”

ガザ地区の地元メディアは、北部のガザ市で12日未明に食料支援を待っていた住民たちがイスラエル軍による攻撃を受け、9人が死亡し20人以上がけがをしたと伝えています。

ガザ地区の保健当局は12日、「何も手を打たなければ世界はかつてない規模の飢餓による死者を目の当たりにするだろう」と声明を出して、北部への食料支援を拡大するよう訴えました。

数十万人が残っているとみられるガザ地区の北部では、戦闘の影響やイスラエル軍による検問などでトラックで食料などを運び込むことが難しくなっていて、栄養失調や脱水症状で死亡する子どもが出るなど、深刻な食料不足に陥っています。

現地で支援にあたるUNRWA=国連パレスチナ難民救済事業機関のラザリーニ事務局長も11日、「すべての住民が生存するため支援物資に頼っているが、搬入は少なく制限は増えている。トラックが医療用のはさみを積んでいたため、引き返さざるを得なかった」と厳しい状況を訴えています。

アメリカ軍などは輸送機からパラシュートを使って食料を投下していますが、状況の大きな改善にはつながっていません。

ガザ支援の食料など載せた船が出港

EU=ヨーロッパ連合のフォンデアライエン委員長は8日、UAE=アラブ首長国連邦などと食料を海上輸送する計画を明らかにし、EUの加盟国である地中海の島国キプロスから船を出す考えを示していました。

キプロスのフリストドゥリディス大統領は12日、自身のSNSで、「ガザ地区の人道支援のための最初の船が出航した。これは民間人にとっての命綱だ」として、船が出発したことを明らかにしました。

現地からの映像では、支援物資を積んだはしけとともに船が出発していく様子が確認できます。

キプロス外務省の報道官によりますと、輸送するのは食料や医薬品などおよそ150トンで、ガザ地区への到着にはおよそ60時間、2日余りを見込んでいるということです。

イスラエル軍 “ハマス幹部利用の地下施設空爆”

ガザ地区では11日、イスラム教徒が日中の飲食を断つ最も神聖な月、ラマダンが始まりました。

AP通信が現地で撮影した映像では、南部ラファにあるモスクが空爆によって破壊されたため、近くの路上で礼拝を行う様子が写っています。

一方、イスラエル軍のハガリ報道官は11日の記者会見で、ガザ地区の中部ヌセイラトでハマスの幹部が利用していたとする地下施設を空爆したと発表しました。

ハガリ報道官は、この地下施設にはハマスの軍事部門ナンバー2の幹部や、ガザ地区内で兵器関連の責任者となっている人物の2人がいたと主張したうえで、攻撃の結果、殺害したかどうかは確認中だとしています。

現地の保健当局は11日、過去24時間だけでも67人が死亡したほか、106人がけがをしたと発表しています。

ガザ地区では、人道状況が悪化している影響で攻撃の犠牲者だけでなく栄養失調などで亡くなる人も増えていて、WFP=世界食糧計画は空からの支援物資の投下では食料の支援は不十分だとして、陸路からの物資の搬入を急ぐべきだと訴えています。

「こんなにひどい気持ちでラマダンを過ごしたことはない」

ロイター通信が11日ガザ地区南部ラファで撮影した映像では、北部から避難している男性が「こんなにひどい気持ちでラマダンを過ごしたことはない。日没後の食事のための食料もないし、それを買うためのお金もない」と訴える様子が写っています。

戦闘の休止と人質の解放に向けた交渉は進展が見られず、レバノンのメディアは11日、ハマス幹部が仲介役のカタールとエジプト、そしてアメリカについて「われわれの味方ではなくイスラエルの要求に理解を示している」と述べ、完全な停戦を求めるハマス側が交渉に不満を持っているなどと伝えました。

一方、イスラエルのネタニヤフ首相は11日、アメリカのFOXテレビのインタビューで「すでにわれわれはハマスの部隊の4分の3を壊滅させていて勝利はまもなくだ」と述べて、ハマスの部隊を壊滅させる考えを改めて示しました。

国連 グテーレス事務総長「ラマダンの精神に敬意を」

イスラム教の断食月、ラマダンが始まったのにあわせて国連のグテーレス事務総長が11日、ニューヨークの国連本部で会見しました。

この中でグテーレス事務総長は、「ラマダンが始まってもガザでは殺りくと爆撃と流血が続いている」と述べた上で、「わたしが最も強く訴えたいのは、ラマダンの精神に敬意を表して銃を置き、人命救助に必要な支援を迅速かつ大規模に届けるためにあらゆる障害を取り除くことだ」と訴えました。また、すべての人質の即時解放を求めました。

そしてグテーレス事務総長は「世界が見ている。歴史が見ている。われわれは目をそらすことはできない。防ぐことができる死をこれ以上増やさないために行動しなければならない」と呼びかけました。