東日本大震災では、およそ5万3000戸の仮設住宅が新たに建設されました。
当時は、平らなまとまった土地が津波の浸水被害を受けるなどしたため用地の確保が難しく、中には、被災者が暮らしていた地域から離れた高台や、別の自治体のほか、大雨で土砂災害のおそれがある場所に建てられたケースもありました。
仮設住宅 この13年で改良重ねる 東日本大震災の教訓も踏まえ
東日本大震災の教訓も踏まえ、仮設住宅は、この13年でさまざまな改良が重ねられてきました。
震災で5万3000戸建設
“移動式”仮設住宅登場
仮設住宅は、プレハブが主流でした。
プレハブは、あらかじめパーツを工場で製造するため工期を短縮できますが、土地をならしたりパーツを組み立てたりする必要があり、着工から完成まで1か月ほどかかります。
能登半島地震の被災地でもプレハブの仮設住宅が建設されていますが、被災者に最も早く提供されたのは「移動式の仮設住宅」でした。
このタイプの仮設住宅は、すでに完成した建物を活用するほか、トイレや風呂のほか暖房器具も備わっていて、水道や電気を接続すればすぐに入居できます。
車で運べるため繰り返し利用でき、2018年に北海道で震度7の揺れを観測した地震や西日本豪雨などで使用されたものもあります。
“熊本モデル”
東日本大震災では、仮設住宅に長期にわたって入居するケースが相次ぎ、建物の老朽化が課題となりました。
こうした教訓から、基礎を木のくいに代わって鉄筋コンクリートにする工法が取り入れられました。
基礎が頑丈なため、災害公営住宅に転用することができます。
熊本地震で多く採用されたことから「熊本モデル」と呼ばれ、能登半島地震の被災地でも先月から建設が始まっています。
“石川モデル”
さらに、石川県は新しいタイプの仮設住宅を「石川モデル」として提供する方針です。
災害公営住宅に転用できる点は「熊本モデル」と同じですが、「熊本モデル」が長屋なのに対して「石川モデル」は戸建てです。
集落の空き地などを活用して建設される予定です。
能登半島地震では、多くの被災者がふるさとを離れて避難生活を送っているため、戸建てに長く住めるようにすることで、再び戻ってきてもらうねらいがあるということです。
このほか、用地が不足する中で2階建ての木造の仮設住宅も建設されるなどさまざまな改良が続いています。
災害時の仮設住宅を研究している専修大学の佐藤慶一教授は、「東日本大震災は建設型が多かった岩手県とみなし仮設が多く活用された宮城県、原発事故による広域避難が行われた福島県と、それぞれ違った特徴があり、当時の教訓から学べることは多くある。仮住まいの問題は被災後すぐに直面する問題で、用地や供給量の不足などは事前に備えることができるためひと事と考えず、生活を守るために各地で備えを進めてほしい」と話しています。