【詳細】ガザ地区 ラマダン始まるもイスラエルの攻撃続く

イスラエルとイスラム組織ハマスとの戦闘は、イスラム教の断食月、ラマダンが始まった11日もイスラエル軍による攻撃がガザ地区の広い範囲で続き、多数の死傷者が出ている模様で、事態のいっそうの悪化が懸念されます。

※イスラエルやパレスチナに関する日本時間3月11日の動きを随時更新してお伝えします。

ラマダン始まるもイスラエル軍が広範囲で攻撃

ガザ地区では11日、イスラム教徒が日中の飲食を断つ最も神聖な月、ラマダンが始まりました。

仲介国などが目指していたラマダン前の戦闘の休止は実現せず、イスラエル軍は11日にかけて北部から南部にかけての広い範囲で空爆や砲撃を繰り返し、多数の死傷者が出ている模様で、地元メディアは、このうち北部のガザ市で16人が死亡したとしています。

ガザ地区の保健当局は11日、これまでに3万1112人が死亡したと発表し、犠牲者の72%が子どもや女性だとしています。

ハマスのハニーヤ最高幹部は10日のテレビ演説で、イスラエル軍がガザ地区から完全に撤収し持続的な停戦に応じるよう重ねて求める一方、ハマス側は交渉の用意があるもののイスラエル側が応じないと非難しました。

イスラエル首相 ラファへの地上作戦 強行の構え崩さず

一方、イスラエルのネタニヤフ首相は、アメリカの政治専門サイト「ポリティコ」に対し、避難者を含め150万人近い住民が身を寄せている南部ラファへの地上作戦について「われわれはそこに行く」と述べ、作戦を強行する構えを崩していません。

そのうえで、これまでにパレスチナ人の戦闘員およそ1万3000人を殺害したなどと成果を主張し、ハマスの壊滅まで戦闘をやめない姿勢を改めて強調しました。

ラマダンの期間中も住民の犠牲が増え続ければ、イスラム諸国で反イスラエル感情がさらに高まるとみられ、パレスチナのヨルダン川西岸も含めて事態のいっそうの悪化が懸念されます。

イスラエルとハマス 戦闘休止などめぐる交渉まとまらず

ガザ地区では11日、イスラム教徒が日中の飲食を断つ最も神聖な月のラマダンが始まりました。

イスラエルとイスラム組織ハマスとの交渉をめぐって、仲介国のカタールとエジプトなどはラマダンまでに戦闘休止や人質の解放などをめぐる合意の実現を目指していましたが、双方の立場の隔たりが大きく交渉はまとまりませんでした。

これについてロイター通信は10日、エジプトが双方への働きかけを続けていると伝えていますが、戦闘休止の見通しは依然として立っていません。

“ガザ地区 栄養失調などで死亡 25人に上る”保健当局

一方、ガザ地区では、10日もイスラエル軍による攻撃が続き、地元の保健当局はこれまでに3万1045人が死亡したほか、食料などの物資の不足によって栄養失調と脱水症状で亡くなった人は25人に上ると明らかにしました。

食料不足の状況を改善させようと、EU=ヨーロッパ連合のフォンデアライエン委員長がガザ地区に向けて海からの物資の輸送を始める方針を示したことを受けて、地中海の島国キプロスでは支援団体の船が出港の準備を進めているものとみられます。

食料を輸送する支援団体によりますと、この船には200トンの食料を積んでいるということです。

ただ、食料事情の改善には程遠い状況で、戦闘休止の見通しが依然として立たない中、人道状況はさらに厳しくなり、対応が急がれています。

バイデン大統領 戦闘休止の早期実現目指す考え

アメリカのバイデン大統領は10日、声明を出し「ことし、聖なる月は計り知れない苦しみのときに到来する。ガザ地区での戦闘はパレスチナの人々をひどく苦しめてきた」として、パレスチナの人たちに寄り添う姿勢をアピールしました。

そのうえで「アメリカは引き続き、ガザ地区に陸、空、そして海からより多くの人道支援物資を届けられるよう国際社会の取り組みを主導していく」としています。

さらに、バイデン大統領は「アメリカは、人質解放に向けた交渉の一環として、少なくとも6週間の即時かつ持続的な戦闘の休止を目指し取り組んでいく」として、早期の戦闘休止の実現を目指していく考えを強調しました。

ガザ地区では住民がラマダンに向け準備

ガザ地区で11日から始まるラマダンは、イスラム教徒にとって最も神聖な断食月で、多くの人が日中の飲食を断ち、日没後に家族や親戚と「イフタール」という断食明けの食事をして連帯を強めます。

戦闘が続き食料不足が続くガザ地区でも、ラマダンに向けた準備が進められていました。

NHKが8日、南部ラファ郊外の避難者のテントがならぶ地区を取材したところ、仮設のテントで営業する菓子店が人々に少しでもふだんと変わらぬラマダンを過ごしてもらおうと、イフタールのための菓子作りに追われていました。

オーナーの男性によりますと、この菓子店はもともと北部のガザ市で営業していましたが、去年10月以降、イスラエル軍の攻撃で工場や店員の自宅が破壊されたため、南部ラファに避難してきたということです。

食料不足から砂糖やバターなどの価格も高騰していますが、ラマダンに向けて原材料をなんとか確保し、厳しい生活を送る避難者たちにイフタールを楽しんでもらいたいと、夜通しあめや焼き菓子を作っているということです。

お菓子を買いに来ていた女の子は「ラマダン中に無事、断食ができること、そしてラマダンには停戦が実現することを願います」と話していました。

オーナーの男性は「私たちが望んでいるのは一時的な戦闘の休止ではなく、この戦争が終わり人間らしい生活を送ることを望んでいるのです」と訴えていました。

ガザ地区に海から物資搬入へ準備

アメリカ政府はガザ地区に桟橋のある仮設のふ頭を建設し、海から物資の搬入を目指す方針を明らかにしていて、運用が開始されれば1日あたり200万食以上を届けることができるとしています。

アメリカ中央軍は9日、桟橋を建設するための機材を積んだ艦船がアメリカ南部バージニア州を出発し、東地中海に向けて航行していると発表しました。

一方、EU=ヨーロッパ連合のフォンデアライエン委員長が近くガザ地区に向けて海からの物資の輸送を始める方針を示したことを受けて、地中海の島国キプロスでは支援団体の船が出港の許可を待っています。

キプロス南東部のラルナカ港で10日に撮影された映像では、スペインのNGO「オープン・アームス」の船が支援物資を運ぶ準備をしている様子が確認できます。

このNGOによりますと、輸送される物資はアメリカが建設するものとは別の桟橋を使って荷降ろしを行うということです。