【詳細】ロシア ウクライナに軍事侵攻(3月11日の動き)

ロシアによるウクライナに対する軍事侵攻が続いています。

ウクライナの各地でロシア軍とウクライナ軍が戦闘を続けていて、大勢の市民が国外へ避難しています。戦闘の状況や関係各国の外交など、ウクライナ情勢をめぐる11日(日本時間)の動きを随時更新でお伝えします。

(日本とウクライナとは7時間、ロシアのモスクワとは6時間の時差があります)

“おととし ロシア軍が核兵器使用を議論” 米メディア

アメリカの複数のメディアは、ウクライナへの侵攻を続けるロシア軍がおととし10月ごろ、核兵器をウクライナで使用することについて具体的に議論を行っていたとして、バイデン政権がこれに対応するため綿密に準備を進めていたと伝えました。

アメリカの有力紙、ニューヨーク・タイムズは9日、アメリカ側がおととし10月ごろ、ロシア側の極秘の通信を傍受したところ、ロシア軍の内部で核兵器の使用について頻繁に議論が行われていたと伝えました。

軍の最高幹部の1人は、戦地で核兵器を爆発させるための後方支援についても話していたとしています。

核兵器が実際に移転された証拠は見つからなかったとしていますが、CIA=中央情報局は、ウクライナ軍が南部クリミアを奪還しようとすれば、ロシア軍が核兵器を使用するおそれが50%以上に高まる可能性があるとバイデン大統領に警告していたということです。

バイデン政権はその年の11月、CIAのバーンズ長官を派遣して、プーチン大統領の側近で対外情報庁のナルイシキン長官と接触して警告したところ、ナルイシキン氏は「プーチン大統領が核兵器を使用するつもりはない」と話したといいます。

アメリカのCNNテレビも9日、政権の当局者の話として、この時期、ロシアが核兵器でウクライナを攻撃する可能性があるとしてバイデン政権は綿密に準備を進め、具体的には戦術核兵器などの使用を懸念していたとしています。

プーチン大統領は、先月行った年次教書演説でも「戦略核兵器の戦力は、確実に使用できるよう準備が完了している」と述べ、威嚇を繰り返しています。

ロシア大統領府報道官が否定「臆測のたぐいの報道」

アメリカの複数のメディアがロシア軍がおととし10月ごろ、核兵器をウクライナで使用することについて具体的な議論を行っていたなどと伝えたことを受けて、ロシア大統領府のペスコフ報道官は11日、記者団に対し「臆測のたぐいの報道だ。コメントする必要はないと思う」と述べ否定しました。

ウクライナ東部でロシア大統領選の投票開始

ウクライナ東部ドネツク州内の、ロシアがおととし9月に併合を一方的に宣言した地域では10日、大統領選挙の期日前投票が始まったとロシアの国営メディアが伝えました。

ロシアの大統領選挙は今月15日から17日にかけて投票が行われ、プーチン大統領の再選が確実視されていますが、プーチン政権はドネツク州など併合を一方的に宣言したウクライナの4つの州でも選挙だとする活動を強行し、支配の既成事実化を強める構えを見せています。

ウクライナ 「竜の歯」など防御陣地構築を加速か

イギリス国防省は10日に発表した戦況分析で、ウクライナが前線の複数の地域でざんごうや地雷原、さらに「竜の歯」と呼ばれる戦車の前進を防ぐ構造物の設置など、防御陣地の構築を加速させているとしました。

その上で「ロシア軍が前進したり戦術的利益を得たりする能力は低下する可能性が非常に高い」として、戦況は一層こう着するという見方を示しました。

ウクライナのゼレンスキー大統領は、ロシア軍がことし5月にも大規模な攻撃を仕掛ける準備をしているとして警戒を強めていて、ウクライナ国防省も、南部ザポリージャ州方面で「竜の歯」を設置している写真などをSNSに投稿し、守りに重点を置いていることをうかがわせています。

ローマ教皇 インタビューで「白旗」発言 報道官は釈明

ロシアの軍事侵攻を受けるウクライナをめぐって、ローマ・カトリック教会のフランシスコ教皇は、9日に公開されたスイスメディアのインタビューで「最も強いのは国民のことを考え白旗をあげる勇気を持って交渉する人だ。負けたと分かったときや物事がうまくいかないとき、交渉する勇気が必要だ」と述べました。

一般的に「降伏」を意味する「白旗」ということばを使ったことについて、ローマ教皇庁の報道官は「インタビュアーの質問を引用したもので、敵対行為をやめ、交渉する勇気によって達成される停戦を示すためだった」とコメントし、ウクライナ側に降伏を促したものではないと釈明に追われる事態となりました。

これに対してウクライナのクレバ外相はSNSに「最も強いのは、善と悪の戦いにおいて両者を『交渉』と称し同じ立場に置くのではなく、善の側に立つ者だ。命を懸けて戦うウクライナと国民を支援するよう強く求める」と投稿し、不快感を示しました。

教皇はインタビューの中でみずから仲介役を担う意欲も改めて示しましたが、去年8月には帝政ロシアをたたえるような演説をしたとして、ウクライナではその姿勢に懐疑的な見方も広がっています。