“帰ることができないふるさと” 地元の踊りを受け継ぐ大学生

東日本大震災と東京電力福島第一原子力発電所の事故の発生からまもなく13年となる中、福島県浪江町から当時小学生で避難した女性が、今も帰ることができないふるさとの民俗芸能を絶やさないようにと継承する活動を続けています。

「自分は踊りを知っている最後の世代」

小学2年生で浪江町から避難し、いまは仙台市の大学に通う今野実永さん(21)は、ふるさとに伝わる「南津島の田植踊り」を継承する活動を行っています。

この踊りは浪江町の山あいにある南津島地区で200年以上受け継がれてきた伝統の民俗芸能で、五穀豊じょうや家内安全を願い毎年旧正月に披露されてきました。

しかし地区はいまも大部分に避難指示が出され、今野さんをはじめほとんどの住民が帰還できておらず、踊りを次の世代に継承する機会が失われていました。

「自分は踊りを知っている最後の世代だ」と感じた今野さんは南津島の人たちに恩返しがしたいと、2年前に有志の学生とともに地元の保存会のメンバーから田植踊りを継承するプロジェクトを立ち上げました。

今野さんたちは地区の歴史や文化を学びながらイベントなどで保存会のメンバーとともに田植踊りを合同で披露しています。

10日は福島県二本松市で練習会が行われ、10人の学生たちが保存会のメンバー17人から衣装を着付けてもらったり、細かな動作の指導を受けたりしていました。

今野さんは「自分たちの代で途絶えさせるのは良くないと思ったし、ぬくもりであふれている(南)津島で繋いできたものだからこそ、後世に伝えていきたい」と話していました。

「南津島郷土芸術保存会」会長の三瓶専次郎さん(75)は「(南)津島の生い立ちを調査し知った上で継承してくれるので安心した。今は学生さんと呼ぶのではなく我々の会員だと思っている」と話していました。

田植踊りは、3月17日に仙台市の中心部で披露されることになっています。