【詳細10日】ガザ地区 ラマダン前も深刻な状況改善されず

イスラエルとイスラム組織ハマスの戦闘が続くガザ地区では、3月10日にかけてもイスラエル軍による空爆で死傷者が出ていて、イスラム教徒にとって最も神聖な断食月ラマダンの開始を間近に控えながらも、現地の深刻な状況は改善されていません。

※イスラエルやパレスチナに関する日本時間3月10日の動きを随時更新してお伝えします。

イスラエルによる空爆続き死傷者 栄養失調などによる死亡も

ガザ地区では10日にかけてもイスラエル軍による激しい空爆などが続いていて、地元のメディアは、北部のベイトラヒヤや南部のハンユニスなどで複数の死傷者が出ていると伝えています。

また、北部では支援物資を待つ住民に再びイスラエル軍が発砲し、複数の死傷者が出ているということです。

地元の保健当局は10日、これまでに3万1045人が死亡し、戦闘に加え食料などの物資の不足によって、新たに生後2か月の赤ちゃんと20歳の女性の2人が栄養失調と脱水症状のために死亡したと発表しました。

戦闘休止など交渉 “まず2日間休止で合意できないか”米有力紙

難航している戦闘の休止と人質の解放をめぐる交渉について、アメリカの有力紙、ウォール・ストリート・ジャーナルは、10日夜にも発表されるイスラム教の断食月ラマダンの開始にあわせて、まずは2日間の戦闘休止で合意できないか、アラブ諸国が仲介を続けていると伝えています。

ただ、ハマス側が一貫して持続的な停戦を求めているのに対し、イスラエル側はこれを拒絶していて、交渉がまとまる見通しは依然立っていません。

男性「住む場所を破壊されるのはこれで3度目」

ガザ地区では9日もイスラエル軍が各地で空爆を行い、このうち、避難者など150万人近くが身を寄せる南部のラファでは集合住宅が空爆され、NHKが9日正午ごろに撮影した映像では、建物の片側が完全に破壊され、がれきの山になっているのがわかります。

事前に攻撃の通告があったということですが、避難していた数百世帯がさらなる避難を余儀なくされ、男性の1人は「ハンユニスでも住む場所をすでに2度失っていて、これで住む場所を破壊されるのは3度目です」と疲れ切った様子で話していました。

また、地元のメディアは、中部の難民キャンプでも空爆があり、少なくとも10人が死亡したとしています。

ガザ地区の保健当局はこれまでに3万960人が死亡したと発表しました。

ガザ地区では8日に、空から投下された支援物資にあたって住民5人が死亡したのに続き、9日も複数の人が投下された物資でけがをしたと中東の衛星テレビ局アルジャジーラが伝えました。

ガザへの支援 海からの物資輸送も

人道危機が深まる中、陸路や空からに加えて、海上からも支援物資を届けるための調整が進められていますが、いかに物資を安全に届け人道状況を改善できるかが課題となっています。

スウェーデン政府 UNRWAへの資金拠出再開を決定

ガザ地区の支援を担っているUNRWA=国連パレスチナ難民救済事業機関の一部の職員がハマスによるイスラエルへの攻撃に関与していた疑いがあるとして、16か国が資金拠出を停止していた問題をめぐって、カナダに続いて、スウェーデン政府は9日、ガザ地区の人道状況を踏まえて拠出の再開を決めたと発表しました。

バイデン大統領 ネタニヤフ首相批判も 軍事支援やめない考え

アメリカのバイデン大統領は9日、MSNBCテレビのインタビューに応じました。

この中でバイデン大統領は、市民の犠牲が増え続ける中、ガザ地区での攻撃を続けるイスラエルのネタニヤフ首相について、「彼にはイスラエルを防衛する権利があるが、行動の結果として失われている命のことにもっと目を向けなければならない。彼は自国を救うよりも、むしろ傷つけている」と述べて対応を批判しました。

また、バイデン大統領はイスラエルによる南部ラファへの侵攻が、レッドライン=越えてはならない一線になるかと問われたのに対し、「それはレッドラインだ」と述べました。

その一方で、「イスラエルを見捨てることは決してない。イスラエルの防衛は重要で、武器の支援を停止するようなレッドラインはない」と述べ、アメリカがイスラエルへの軍事支援をやめることはないという考えを重ねて示しました。