【詳細9日】ガザ地区 人道状況が日増しに悪化

ガザ地区では戦闘休止の見通しが立たないなか、人道状況が日増しに悪化し、地元の保健当局は、新たに子ども3人が栄養失調や脱水症状で死亡したと発表しました。空からの支援物資の投下に加え、海からの輸送も準備が進められていますが、最も効率的な陸路での物資の搬入を増やすべきだという声もあがっています。

栄養失調や脱水症状で子ども死亡

ガザ地区では9日にかけてもイスラエル軍による攻撃が続き、地元メディアは避難者などおよそ150万人が集中する南部のラファで集合住宅が空爆され、多数の住民がけがをしたほか、近くのハンユニスでも空爆によるけが人が出ていると報じています。

人道状況が日増しに悪化する中、地元の保健当局は8日、新たに子ども3人が栄養失調や脱水症状によって死亡し、これまでの死者は23人に上ったと発表しました。

食料不足を改善するため、空からの支援物資の投下も行われていますが、8日には投下された物資が住民にあたって5人が死亡するなど、安全性が疑問視されています。

また、海からの輸送についてもアメリカやEU=ヨーロッパ連合などが準備を進めていますが、本格的な搬入にはガザ地区でのふ頭の建設などの準備が必要とされています。

こうしたなか、UNRWA=国連パレスチナ難民救済事業機関の報道官は中東の衛星テレビ局アルジャジーラに対して、支援の増加は歓迎する一方、空や海からの輸送が注目されることで、最も効率的に物資を運べる陸路での搬入が軽視されてしまうと懸念を示し、陸路での搬入を増やすべきだと訴えました。

ガザへの支援 海からの物資輸送 迅速に届けられるかが焦点に

イスラエルとハマスとの戦闘の休止をめぐる交渉はいったん中断され、ガザ地区では8日も戦闘が続き、地元の保健当局はこれまでに3万878人が死亡したと発表しました。

人道状況が日増しに悪化する中、アメリカやヨルダンなどは空から物資の投下を行っています。

地元の当局は8日、投下された物資が住民にあたって5人が死亡したとしていて、支援の難しさを改めて突きつけています。

こうした状況の中、EU=ヨーロッパ連合のフォンデアライエン委員長はアメリカなどと調整を進めてきた海からの支援物資の輸送を今週末にも始めたい考えを示しました。

ただ、アメリカのホワイトハウスの高官は7日、記者団に対し、実際の搬入開始まで数週間かかるとしていて、迅速に届けられるかが焦点となっています。

一方、イスラエル軍は、先月29日にガザ地区で支援物資を運ぶトラックを待つ100人以上の住民が死亡したとされることについて、報告書の概要を8日、発表しました。

この中でイスラエル軍は、およそ1万2000人がトラックに詰め寄り、群衆事故が起きたなどとした上で、数十人が近づいてきたため、警告射撃のあと、脅威を取り除くため正確に発砲したと主張し、発砲について認めました。

パレスチナ暫定自治政府はSNSで、この報告書を認めないとした上で、「独立した国際調査を求めた国々がその責任を果たすのを待つ」とし、第三者による検証が必要だと訴えました。

米国防総省「仮設ふ頭の運用で1日あたり200万食以上」

イスラエルとイスラム組織ハマスの戦闘が続くガザ地区への支援の一環として、アメリカ政府がガザ地区に仮設のふ頭を造り、海から物資の搬入を目指していることについて、アメリカ国防総省のライダー報道官は8日、記者会見で、その概要を説明しました。

それによりますと、仮設のふ頭は後方支援船や浮き桟橋などで構成されるということで、建設には1000人以上の兵士が参加し、最長で60日かかるということです。

そのうえで、ライダー報道官は「運用が開始されれば、ガザの住民たちに1日あたり、200万食以上を届けることができるようになると期待している」と述べました。一方、ライダー報道官は、一部のメディアがアメリカ軍が空から投下した物資が住民にあたって死者が出たと伝えていることについて、「報道は誤りだ。われわれはすべての物資が安全に着地したのを確認している」と述べ、否定しました。

バイデン大統領“ラマダンまでに戦闘休止 厳しそうだ”

アメリカのバイデン大統領は訪問先の東部ペンシルベニア州で8日、記者団から、今月10日ごろに始まるラマダンまでに戦闘の休止が実現するか問われたのに対し、「厳しそうだ」と述べました。

バイデン大統領はこれまで、「ラマダンの間も戦闘が続くような状況になればとても危険だ」と述べて、これ以上、緊張が高まらないよう、早期に戦闘休止を実現する必要があると強調しています。

カナダ政府 UNRWAへの資金拠出を再開

ガザ地区の支援を担っているUNRWA=国連パレスチナ難民救済事業機関をめぐり、資金の拠出を停止していたカナダ政府は、ガザ地区の人道状況が悪化していることを踏まえて、資金の拠出を再開すると発表しました。

UNRWAをめぐっては、一部の職員が去年10月のイスラム組織ハマスによるイスラエルへの攻撃に関与した疑いが出たことを受けて、アメリカや日本などが資金拠出を停止していて、UNRWAのラザリーニ事務局長は4日、停止しているのは16か国にのぼると明らかにしました。

このうちのひとつ、カナダのフッセン国際開発相は8日、声明を発表し、事実関係を明らかにするための独立した内部調査などが厳格に進められているとして評価した上で、「ガザ地区の壊滅的な人道状況を踏まえ、カナダ政府はUNRWAへの資金拠出を再開する」と述べました。

さらに、ヨルダン軍などが行っている空からガザ地区に人道支援物資を投下する作戦に協力し、パラシュートの提供などを行うとしています。