【詳細】ロシア ウクライナに軍事侵攻(3月9日の動き)

ロシアによるウクライナに対する軍事侵攻が続いています。

ウクライナの各地でロシア軍とウクライナ軍が戦闘を続けていて、大勢の市民が国外へ避難しています。戦闘の状況や関係各国の外交など、ウクライナ情勢をめぐる9日(日本時間)の動きをまとめています。

(日本とウクライナとは7時間、ロシアのモスクワとは6時間の時差があります)

ウクライナ エネルギー相 ザポリージャ原発の安全性に強い懸念

ウクライナ軍は8日から9日にかけて、ロシアの無人機15機による攻撃が東部などにあり、このうち、12機を撃墜したと発表しました。また、南部ヘルソン州では、地元の知事によりますと、ロシア側からの空爆で集合住宅や医療施設などが破壊され、少なくとも2人が死亡し、子ども1人を含む2人がけがをしたということで、市民の犠牲が続いています。

こうしたなか、ウクライナのハルシチェンコ・エネルギー相は8日、ウィーンで行われた会見で、ロシアが占拠する南部ザポリージャ原子力発電所の現状について、原子炉の冷却に必要な外部からの電力の供給が途絶える事態が繰り返し発生しているなどと指摘し、「問題の数は日々、増えるばかりだ」と強い懸念を示しました。そのうえで、「全体的な状況は原発事故へと向かっていて、ロシアの占拠を直ちに止めることが非常に重要だ」と述べ、ロシア側の撤退の必要性を改めて強調しました。

ザポリージャ原発をめぐっては、ウクライナの原子力発電公社「エネルゴアトム」のトップが今月4日、勤めていた職員が立ち入りを拒否されるなどして原発内に残ることができず、ロシア側が運営を担っているという認識を示しています。

また、6日には、IAEA=国際原子力機関のトップ、グロッシ事務局長がロシアでプーチン大統領と会談し、ザポリージャ原発の安全確保に向けて協力を求めています。

リトアニア分析 “NATOとの長期対立にらみ軍再編も”

リトアニアの情報機関は7日、自国の安全保障の脅威について評価した報告書を公表しました。

報告書では、ウクライナ侵攻を続けるロシアについて、短期的にはルハンシク州やドネツク州など東部と南部の4つの州で支配地域を拡大することを目標とし、長期的にはウクライナの非軍事化を含む当初の計画をあきらめていないと指摘しています。

また、軍需産業への大規模な投資や経済制裁の回避などで予測よりも好調な経済状況を背景に、「2年にわたって戦争を継続するための能力を有している」と分析しています。

いわゆる「制裁逃れ」については、ロシアの対外情報庁など3つの情報機関が関与し、制裁の対象となっている機器や部品を第三国を経由して欧米側から調達しているとしています。

そして、報告書では、ロシアはウクライナ侵攻を続ける一方で、バルト海周辺でNATOとの対立が長期に及ぶことをにらみ、軍の再編など準備を進めているという見方を示しました。

ウクライナ軍 女性兵士が大幅増 前線配置へ装備充実の方針

8日の「国際女性デー」にあわせ、ウクライナ国防省はウクライナ軍に所属する女性兵士などの統計を公表しました。

それによりますと、ことし1月時点で6万2000人以上の女性が軍に所属していて、このうち、戦闘の任務をになう兵士は10年前の2.7倍以上にあたる4万5000人余りで、ロシアがウクライナ南部のクリミアを一方的に併合して以降大幅に増えています。

現在、実際に前線に配置されている女性兵士は4000人以上だということです。

カルミコワ国防次官は去年11月、「現在、ウクライナの戦場には近代史上で最も多くの女性がいる」と述べ、ウクライナ軍は今後も女性兵士を前線に配置するため、専用の装備を充実させる方針を示しています。

中国代表 ロシアとウクライナを相次ぎ訪問 仲介役の姿勢示す

中国外務省はユーラシアを担当する李輝特別代表が7日、ウクライナの首都キーウでイエルマク大統領府長官などと会談したと8日発表しました。

イエルマク長官によりますと、この中で▽ウクライナからの穀物輸出の安定や、▽ロシアが北朝鮮から兵器を調達していると見られる問題、それに▽「ロシア軍の撤退」などウクライナが提唱する和平案に基づく、ウクライナの領土と主権の回復などについて話し合ったということです。

中国外務省は「率直で友好的な会談だった」としています。これに先だって、李特別代表は2日、ロシアの首都モスクワでガルージン外務次官とも会談しました。

ロシア外務省によりますと、ロシア側は「安全保障上の国益が考慮されることなしに、政治的、外交的な解決の議論はあり得ない」として、ウクライナ側の和平案は受け入れられないという姿勢を改めて示しました。

一方、中国外務省によりますと、李特別代表は「いかなる衝突も最終的には交渉によって解決されるべきだ」と述べ、和平交渉を促す努力を続ける考えを示しました。

アメリカなどは中国について、「ロシア寄りの姿勢を示している」として批判していますが、中国としてはロシアとウクライナ双方との外交関係をいかして、仲介役を担う姿勢を示した形です。