日本郵便グループの物流会社 アルコール検査で不正の10人処分

日本郵便グループの物流会社「JPロジスティクス」の兵庫県の支店で、社員のドライバーなど6人が、業務前のアルコール検査を別の社員に受けさせる不正を行っていたことが会社への取材で分かりました。6人はいずれも前日に酒を飲んでいたということで、会社は依頼に応じた社員も含め、合わせて10人を出勤停止の処分にしました。

アルコール検査で不正を行っていたのは「JPロジスティクス」の兵庫県小野市の支店で配送ドライバーなどを務める20代から60代までの社員、合わせて6人です。

会社によりますと、去年、不正に関する情報があり、内部調査を行った結果、6人が業務前のアルコール検査を別の社員に代わりに受けさせていたことが分かったということです。

検査に使われていた機器はなりすましを防ぐためにカメラが付いていて、本人の顔が画面に映った状態で機器に息を吹き込む仕組みです。

しかし、6人は自分の顔を画面に映しながら、別の社員に依頼して、画面に映り込まないよう長いチューブを使って息を吹き込んでもらっていたということです。

6人はいずれも前日に酒を飲んでいて、内部調査に対し、「アルコールが残っていないか不安だった。これまでに何回かやった」などと説明しているということです。

このため、会社は依頼に応じた社員も含め合わせて10人を先月までに出勤停止14日間の処分にしました。

今回の事態を受けて、会社は全国の支店を対象に調査を行いましたが、ほかに不正は確認されなかったとしています。

「JPロジスティクス」はNHKの取材に対し、「当社は“安全”を経営上の重要課題と考えていますが、その中で、貨物運送事業者としての基礎的な義務がおろそかになっていたことは極めて遺憾です。今後、万全の再発防止策を講じるとともに、会社全体で意識改革を行っていく所存です」とコメントしています。

“運行管理者などが立ち会っていない時に不正”

トラックやタクシーなど事業用の車の飲酒運転を撲滅するため、国土交通省は省令を改正し、2011年から荷物などを有料で運ぶ「緑ナンバー」の事業者に対してアルコール検知器による検査を義務づけています。

今回、支店の社員による不正が行われていたJPロジスティクスでは、ドライバーがアルコール検査を行う際は原則として運行管理者、または運行管理補助者が立ち会うことになっています。

ただ、早朝などで立ち会えない場合は、その後の点呼の際、検査の時に撮影されたドライバーの顔の画像とともに結果を確認しているということです。

会社によりますと、今回の不正はいずれも運行管理者などが立ち会っていない時に行われていました。

今回の事態を受けて、JPロジスティクスは、社員の教育や指導をさらに徹底するほか、アルコール検査の際の立ち会いを厳格化するなどの再発防止策を進めているとしています。

専門家「正しく検査を受ける意識を持つことが大切」

今回の不正について、飲酒運転の問題に詳しい福岡大学の小佐井良太教授は「物流業界全体としては適正な検査が行われていると思うが、同じような不正はほかの事業者でも起こりうる。アルコール検査が義務化される中、ドライバーは日頃の飲酒量について気を配る必要があるし、ハンドルを握るみずからの身を守るためにも正しく検査を受けるという意識を持つことが大切だ」と指摘しています。

そのうえで「規模の大きな企業になればなるほど、すべての従業員にルールを周知し、守ってもらうことの難しさはあると思う。人の目でチェックを徹底することは1つの対策ではあるが、一定の限界があることも踏まえたうえで、業界全体としてどう対応していくか考えていく必要がある」と話していました。