【詳細】バイデン大統領 2024 一般教書演説で何を語った?

アメリカのバイデン大統領は日本時間の8日昼前から今後1年の施政方針を示す「一般教書演説」を行いました。

再選を目指すことし秋の大統領選挙で、トランプ前大統領との再対決が見込まれる中、トランプ氏を批判して対決姿勢を鮮明にしました。

一方、共和党のトランプ前大統領は、SNS上でバイデン氏の一般教書演説の内容を批判する投稿を相次いで行いました。

演説は日本時間の午前11時半ごろから行われました。

「私たちは前例のない瞬間に直面している」

今、私たちは前例のない瞬間に直面している。今夜の目的は、議会を目覚めさせ、アメリカ国民に、これが普通ではないことを知らせることだ。自由と民主主義が、国内と海外で同時に攻撃を受けている。

「ウクライナに武器供与を」

もし、プーチンがウクライナで止まると思っている人がいれば、わたしは、彼は止まらないと断言する。ウクライナが必要とする武器を供与するなら、ウクライナはプーチンを止められる。

「前大統領は言語道断で容認できない」

前の大統領はプーチンに『好きなようにすればいい』と言った。言語道断で危険なことだし、容認することはできない。

「わずか3年で1500万人の新たな雇用を生み出した」

わたしが大統領職を引き継いだ時経済は瀬戸際の状況だった。しかし、わが国の経済はいま世界から羨望のまなざしで見られている。わずか3年で1500万人の新たな雇用を生み出した。これは、記録的なことだ。

バイデン大統領は、労働者の賃金は上がり続け、インフレ率もピーク時の9%台から3%台まで低下したと経済の好調さを強調しました。

一方バイデン大統領は、現在15%となっている法人税の最低税率について21%に引き上げる意向を表明しました。

また、所得税についても富裕層が支払っている税金は現在平均で8%程度にとどまっているとして最低税率を25%に引き上げることで、今後10年でおよそ5000億ドルの税収増が見込めると述べました。

バイデン大統領は富の再配分を通じ、低所得者層や中間層を底上げすることで経済を活性化させることを目指していて、法人税の減税を実施したトランプ前大統領との違いを改めて明確にした形です。

「恨みや報復の物語を見ている人、私とは違う」

私は人生を通じて自由と民主主義を大切にすることを学んだ。正直さ、良識、品位、平等。他者を尊重すること。公平な機会を与えること。今、私と同世代のほかの人びとの中には恨みや復しゅう、報復といった異なる物語を見ている人がいる。私とは違う。憎しみや怒り、復しゅう、報復は最も古い考えだ。私たちを後戻りさせるだけの古い考えでアメリカを率いることはできない。可能性の国、アメリカを率いるにはアメリカには何が可能で、何をすべきかという未来へのビジョンが必要だ。

「AIによるなりすまし音声を禁止する」

超党派によるプライバシー保護法案を成立させ、インターネット上で子どもたちを守る。AI=人工知能の可能性を活用するとともにその危険から私たちを守る。AIによるなりすまし音声を禁止する。

「イスラエルは罪のない人々の命を守ること優先を」

イスラエルにはハマスを狙う権利がある。ハマスは人質を解放し、武器を捨て、10月7日に責任がある者が降伏することで戦闘を終わらせることができる。私は事態を緩和し、すべての囚人そして人質を解放して家族のもとにかえすことができるよう6週間にわたる即時停戦を実現するため、不断の努力を続けている。イスラエルは人道支援を二の次にしたり、駆け引きの材料にしたりしてはならない。罪のない人々の命を守り、救うことが優先されなければならない。

議会下院の本会議場には人質の家族が招かれました。

私たちはあなたの愛する人をかえすまで休まないとすべての家族に誓う。

「中東の安定化はイランの脅威を抑えることでもある」

中東を安定化させることは、イランの脅威を抑えることでもある。だからこそ私は、紅海における国際海運と航行の自由を守るため、10数か国からなる連合を結成した。私はフーシ派の能力を低下させ、地域のアメリカ軍を防衛するため攻撃を命じた。最高司令官として、国民と軍人を守るためさらなる措置をとることもためらわない。

「中国の不公平な経済慣行に対抗、衝突は望まない」

バイデン大統領は中国について「われわれは、中国の不公平な経済慣行に対抗する」と述べ、ルールに基づいた競争の実現を目指すと強調しました。その上で「最先端のアメリカの技術が中国で使用されないようにした」と述べ、最先端の技術が軍事転用されないよう輸出規制を強化する姿勢を示しました。

一方で「わたしが望んでいるのは、競争であり、衝突ではない」と述べ、中国との衝突は望まないと重ねて強調しました。

「国民支持あれば 中絶の権利の保障 法制化を約束」

バイデン大統領は連邦最高裁判所がおととし、人工妊娠中絶は憲法で認められた権利だとする判断を覆したことについても言及しました。

連邦最高裁の判事がトランプ前大統領の指名によって、保守派が多数派となったことを念頭に、「私の前任者は判断が覆ることを期待していた。覆ったのは、彼が原因だし、それを自慢すらしている。その結果、どれだけの混乱が起きたのかみてほしい」と述べました。

その上で「議会を通じてアメリカ国民が支持するのであれば、中絶の権利を保障する法律の制定に取り組むことを約束する」と述べました。

「厳格な国境管理改革法案 可決するべき」

バイデン大統領は、法的な手続きを経ずにメキシコとの国境を越えてアメリカに入国を試みる人が急増していることをめぐり「超党派の上院議員グループと交渉し、かつてなく厳格な国境管理改革を盛り込んだ超党派の法案をまとめることにつなげた。しかし、政治によって法案は頓挫させられてしまった。私の前任者が議員に法案を阻止するよう要求したと聞いた。共和党はアメリカ国民のためにこの法案を可決する責任がある」と述べました。

このほか、バイデン大統領は「インド、オーストラリア、日本、韓国、太平洋島しょ国といった太平洋の国々との友好・同盟関係を再活性化している」と述べ、最大の競合国と位置づける中国を念頭に日本などとの関係を強化すると強調しました。

演説は日本時間の午後12時半ごろに終わりました。

トランプ前大統領「最悪の一般教書演説かもしれない」

バイデン大統領と秋の大統領選挙で対決することが見込まれる、共和党のトランプ前大統領は、SNS上で「もっとも怒りに満ちた、最悪の一般教書演説かもしれない」などとバイデン氏を批判しました。

トランプ氏は7日、バイデン大統領による一般教書演説が終わったあと、SNS上にみずからの演説の動画を投稿し、「バイデンは、彼自身と彼の政党がもたらしたぞっとするような破滅状態に対する責任からうそをつくことで逃れようとしている」などと批判したうえで、「いかさまバイデン、お前はクビだ」と述べました。

また、トランプ氏はバイデン大統領の一般教書演説にあわせてSNS上で内容を批判する投稿を相次いで行いました。

この中でトランプ氏は、ロシアによるウクライナ侵攻に関連してバイデン大統領が「前の大統領はプーチンに『好きなようにすればいい』と言った。言語道断で危険なことだ」などと批判したことに対し、「プーチンがウクライナに侵攻したのはバイデンに敬意を抱かなかったためだ。トランプ政権のもとでは起こり得なかった」と述べて反論しました。

また、バイデン大統領が「こんにち、われわれはNATO=北大西洋条約機構をかつてなく強力なものにした」と述べたことに対し、トランプ氏は「違う。NATOが強くなったのは、私が加盟国にもっと金を払わせるようにしたからだ」などと反論しました。

このほか、大統領選挙で争点となると見られる、メキシコとの国境管理をめぐってトランプ氏は「彼は移民問題や史上最悪の国境の問題にほとんど触れなかった。彼は我が国を移民であふれかえらせたいのだ」などとバイデン大統領を批判しました。

そのうえで「もっとも怒りに満ち、同情心に欠けた最悪の一般教書演説かもしれない」などと批判し、バイデン氏との対決姿勢を一段と鮮明にしました。

連邦議会前ではガザ対応めぐり抗議デモ

バイデン大統領が一般教書の演説を行った首都ワシントンの連邦議会前では、ガザ地区をめぐるバイデン政権の対応に抗議するデモが行われました。

このデモはパレスチナの支援団体が主催したもので、数百人が参加したとみられます。参加した人たちはプラカードなどを掲げながら「集団殺害を止めろ、パレスチナに自由を」などと声を上げ、即時停戦を訴えていました。

デモに参加した男性は「秋に大統領選挙を控えるなか全米からこんなにも多くの人々が停戦を求めて集まっている。バイデン大統領は集団殺害を止めるためにいますぐ行動を起こすべきだ」と話していました。