茨城県 原発事故時 避難指示出ていない地域の避難抑制を要請

13年前の東京電力福島第一原子力発電所の事故で、当時、大勢の福島県の住民が避難する中、隣接する茨城県が福島県に対して、避難指示が出ていない地域の住民の避難を抑制するよう文書で要請していたことがNHKの取材で分かりました。茨城県は「原子力災害時の対応をとってもらうため必要なものだったと認識している」としています。

2011年3月11日に発生した巨大地震に伴う福島第一原発の事故で、国は当時、周辺の住民に対し、避難指示や建物の中にとどまる屋内退避指示を相次いで出しました。

しかし、水素爆発が起きるなど事態が深刻化すると、国による避難指示が出されていない地域の住民も福島県の内外へ自主的に避難を始めました。

そうした中、茨城県が福島県に対して、避難指示が出されていない住民の避難を抑制するよう要請していたことが、NHKが行った情報公開請求で分かりました。

茨城県が公開した文書によりますと、要請は事故の発生から5日後の2011年3月16日に茨城県知事から福島県知事に宛てて出されたもので、「避難が要請されていない住民には、個別、自動車による避難をできるだけ抑制されるようお願いします」と求めています。

茨城県は当時、避難指示が出ている福島県の住民の受け入れを進めていましたが、それ以外の地域からも避難する人たちの車で深刻な渋滞が発生していて、緊急車両への給油に支障が出るなど不安や影響が広がっていたということです。

要請を行ったことについて茨城県は「行政の指示に従って避難行動をとるという、原子力災害時の対応をとってもらうため必要なものだったと認識している」としています。

一方、福島県は要請があったことは認めたうえで、「実際に呼びかけを行ったかどうかは当時の記録からは確認できない」としています。

全国では原発事故に備えた避難計画が作られていますが、福島第一原発の事故が広域で避難する難しさを改めて浮き彫りにしています。

専門家 “不断に避難計画を見直し続けることが重要”

原子力防災に詳しい東京大学の関谷直也教授は、原発事故が起きた当時、不安になった人が身を守ろうと避難を始めることは自然な行動だとしたうえで、「原子力災害の避難の基本は遠くに避難することではなく、放射性物質から身を守るため、内部被ばくを抑えるヨウ素剤の服用や屋内退避、それに広域への避難を組み合わせて防護することを十分理解することが大切だ」と指摘しています。

そして、避難計画の実効性を高めるためには、行政による住民への正確で迅速な情報提供が必要だとしています。

それに加えて、関谷教授は「原発の避難計画は住民が行政の指示どおりに避難をすることを前提に組み立てられているが、むしろ、計画どおりにいかなかった場合の対応を考えておく必要がある。13年前の原発事故を踏まえて、不断に計画を見直し続けることが重要だ」と話しています。