「もういっぺんやっていこう」被災した本屋 教科書販売へ準備

石川県珠洲市の創業75年の書店。能登半島地震で店舗が大きく被災しました。

「地域の本屋さんとして子どもたちの笑顔を見たい」

その思いから、4月の新学期を前に高校生に教科書を販売できるよう仮店舗での営業再開に向け、準備を進めています。

助け出したい 約1万冊の本

珠洲市飯田町にある創業75年の「いろは書店」

高校生向けに教科書の販売を行ってきましたが、今回の地震で店舗の1階部分が潰れるなどして、営業ができなくなりました。いまもおよそ1万冊の本が、潰れた店舗に残されたままです。

発災当時は営業中で、住居を兼ねた店舗には店主の八木久さんと家族や従業員の5人がいたといいます。

店主 八木久さん
「(当日は避難しようと)夢中でしたね。あとから聞かれたらそういうことだったのかという感じです。いまも店舗に残っているおよそ1万冊の本はなんとかして助け出したいね」

新学期を楽しみにする子どもたちのために

八木さんは息子の淳成さんと店舗の近くにあるもとはタクシー会社の事務所だった空き店舗を借りました。来月から新学期が始まるのを前に3月21日の営業再開を目指しています。

7日は店の立て看板を修繕したり、ガレージに運び込まれた真新しい教科書を開封して店頭に並べたりする作業に追われていました。

店主 八木久さん
「とにかく学校のために教科書を販売しなきゃならん。3月中にやってしまわんとね。やっぱり子どもたちは新学期に新しい教科書をもらって、勉強するってことが楽しみになるからね。この時期に地元の本屋さんがいないと大変困るだろうと思って」

「根気よく前へ 子どもたちの笑顔も」

地域に根ざして続けてきた書店。常連客の女性は大切な場だと話します。

75歳の女性
「私が子どものときから親子何世代にもわたってずーっと来てて。息子も知ってるから。だって本屋さんがないって寂しいですもんね。息子と避難所行くときにいろは書店だけ見たいと言ってここにきたら、もうショックで言葉が出なかったんです。再開されるのはよかったです」

八木さんは当面、仮店舗での営業を続け、来年の夏ごろには店を建て直したいと思っています。

店主 八木久さん
「こういう状態ですからね、先は随分長いんだろうなあっていうような思いはしています。ただでも、根気よく少しずつ前に進めるように一歩一歩前に進んでいこうって気持ちで続けていければっていうふうに思ってるんです。諦めちゃだめだ。
仮店舗で営業してそれが終われば、次また地域の本屋さんとしての役割を果たせるような店舗づくりをもういっぺんやっていこうと思ってるんです。やっぱり子どもたちの笑顔をみたいですしね」

(能登半島地震取材班 山内司)