石川 能登町 今月から海産物の競りが再開 港町の活気少しずつ

能登半島地震で被害を受けた石川県能登町では、今月から海産物の競りが再開され、港町ならではの活気が少しずつ戻ってきています。

能登町の宇出津港では、7日午前7時すぎから海産物の競りが行われ、威勢のいい掛け声が飛び交う中、水揚げされたばかりのぶりやさばが次々に競り落とされていきました。

この港では、国内有数の水揚げ量を誇るぶりをはじめ、豊富な海の幸が競り場に並ぶのが日常の光景でしたが、県漁業協同組合によりますと、地震で製氷機などの設備が壊れたことなどから、競りができない状態が続いたということです。

しかし、地元の人たちから「再開してほしい」という要望があったほか、設備の一部が復旧したことを受け、金沢市内から運んだ氷を利用するなどして、今月1日から再開に踏み切りました。

競り場に並ぶ海産物は200キロ程度と地震の前の20分の1ほどですが、今後、徐々に取り扱う量を増やしていく予定です。

鮮魚店を営む60歳の男性は「ようやく競りが再開してありがたい。新鮮な魚をすぐに手に入れられるし、活気も戻ってきた」と話していました。

競りを運営する県漁協能都支所の空林政男参事は「地元からも強い要望があり、漁業の町としてなんとか競りを再開しないといけないと思っていた。ようやくスタートラインに立ったという段階だが、少しでも盛り上げていけるよう頑張りたい」と話していました。

地元の鮮魚店「何とかふんばって店や地域を支える」

7日の競りには、地元で100年余り続く鮮魚店「したひら鮮魚店」を経営する下平真澄さんも参加し、スルメイカやヒラメを競り落としていました。

この店は地震の前、飲食店や小売店などへの卸売り販売のほか、ショーケースの魚をその場でさばいて切り身や刺身にする店頭販売も行っていて、地元の人や観光客が数多く訪れる人気店でした。

地震の影響で一時は休業していましたが、1月下旬から少しずつ営業を再開し、「復興のために協力したい」と声をかけてくれた石川県外の業者や個人への販売を中心に行っています。

下平さんは競りを終えたあと、水揚げされたばかりの新鮮な海産物を箱詰めして東京や大阪に向けて発送する準備をしていました。

下平さんは「多くの励ましの声をいただき、ぜひ支援したいと定期的に購入してくださる方もいて、本当にありがたい。これを機に、能登町の魚の魅力を改めて全国各地に伝えたい」と話していました。

一方で、能登町では多くの人たちが地震のあと、町の外に避難していることから地元の人たちへの販売はほとんど行われていないということです。

店頭販売のためのショーケースは地震のあと一度も使われておらず、かつて新鮮な魚を求める人たちで混み合っていた店のにぎわいは戻っていません。

下平さんは、「お客さんと会話をしながら販売するのが鮮魚店の魅力なので、来てくれる地元の人がいないのは本当にさみしい。避難先から一時的にでもこちらに戻る機会があればまた顔を出してもらいたいし、その日が来るまでは何とかふんばって、自分たちがこの店や地域を支えていこうと思っている」と話していました。