SNSでの勧誘きっかけの投資詐欺急増 去年の被害総額450億円超

投資に関心を持つ人が増える中、SNSでの勧誘がきっかけとなる投資名目などの詐欺の被害がこのところ急増していて、去年1年間の被害の総額が450億円を超えていたことが、警察庁のまとめでわかりました。

警察庁によりますと、SNSでの勧誘がきっかけとなる投資名目などの詐欺の被害は去年1年間に全国で3846件確認されていて、被害の総額は455億円余りにのぼっています。

被害の内訳では、▽効率のよい資産運用などを持ちかける投資名目の詐欺が、2271件で、およそ277億9000万円、▽恋愛感情を抱かせたうえで、投資などを持ちかけ金銭をだまし取る、いわゆる「ロマンス詐欺」が、1575件、およそ177億3000万円となっています。

Facebookやインスタグラムなどに届くダイレクトメッセージや、LINEに表示された広告をクリックしたことなどがきっかけで、被害につながるケースが最近特に増えているということです。

また、投資名目の詐欺では、何度も金を支払ってから被害を申告してくるケースが目立つということで、中には3億円以上をだまし取られた人もいるということです。

政府が個人投資を増やすための政策を打ち出し、投資に関心を持つ人が増える中、警察庁は今後もこうした被害が増えるおそれがあるとして注意を呼びかけるとともに、全国の警察本部に対策強化を指示しています。

約1億円だまし取られた夫婦は

SNSの広告をきっかけに投資の勧誘を受け、およそ1億円を振り込んでしまったという関東地方の40代の被害者夫婦がNHKの取材に応じました。

夫婦は将来に備え、投資で資産を増やしたいと考えていました。

去年4月、妻がフェイスブックで無料の投資相談会の広告を見つけクリックすると、LINEのグループチャットに誘導されたといいます。

チャットで投資の指南をしていたのはイギリスに実在する金融機関の副社長を名乗る人物で、インストールするよう指示されたスマホのアプリでは、振り込んだ金がFX取引によってどんどん増えているように表示されたということです。

入金の総額はおよそ1億円に上りましたが、「詐欺会社」などと名指しするインターネット上の投稿を目にしたため、ホームページに記載されていた住所に足を運んだところ会社は存在していなかったということです。

LINEで担当者を問い詰めましたが、その後チャットは閉鎖され、指南役やほかのメンバーとの連絡も途絶えたということです。

妻は「完全に信じていたので、しばらくごはんも食べられず、夜も寝られませんでした」と話していました。

夫は「怪しいと思うときもありましたが、違和感を解消するような答えが用意されていて、納得してしまいました。なぜだまされてしまったのか、自責の念にかられています」と話していました。

被害者らがNPO設立を目指す集会

投資詐欺が急増する中、3月に神戸市で、NPOの設立を目指す被害者らの集会が開かれました。

この団体には、過去に投資詐欺の被害にあった人たちに加え、消費者問題に詳しい弁護士などが名前を連ねています。

団体によりますと、投資詐欺の被害に遭った人が、相談先を探す際、まず頼るのはインターネットですが、実際には専門的なアドバイスをほとんど受けられなかったり、高額の着手金を請求されたりするケースも少なくないといいます。

団体では、投資詐欺専門の相談窓口として、経済的な影響を最小限にとどめるためのアドバイスや、被害者の心のケアなどの活動に力を入れていくことにしています。

「投資詐欺被害者の会」の国府泰道 弁護士は「全国には投資被害の問題を考え専門的に取り組むスキルのある弁護士もいるが、被害者がアクセスできる情報は限られている。必要な支援につなげていきたい」と話しています。