【動画解説】知ってほしい「準備と心構え」能登半島地震の支援

能登半島地震で甚大な被害が出ている石川県内では、すべての自治体で災害ボランティアの受け入れが行われています。復旧・復興に向けた一助のためにボランティアとして被災地に入る前に、これだけは準備しておきたいこと、考えておかなければいけないことを、日本防災士会理事の岩井慶次さんに聞きました。

ボランティアにしかできない活動

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日本防災士会理事で岐阜県支部長の岩井慶次さんは、全国の被災地で災害ボランティアの活動にあたってきました。

特に2011年の東日本大震災の時には、地震発生の2週間後から宮城県石巻市の小学校でボランティアとして、避難所の運営に携わりました。

その中で岩井さんが考えたのが、“洗髪スペース”です。

ホースにじょうろの先をつけ、ぬるま湯を流すシャワーを手作りし、校舎脇の手洗い場でお年寄りの頭を洗ってあげたということです。

お風呂も入れず厳しい避難生活が続く中、“ひとときの安らぎを作ってあげたい”

岩井さんの避難者を思う気持ちから出た行動でした。

岩井さんはボランティアにしかできない役割をこう話します。

岩井慶次さん
「行政は行政の仕事があります。一方で僕ら民間の人間がやることというのもいっぱいあります。『できることをできる人がやる』。これがボランティアの鉄則で、行政ができない業務の隙間を埋めてあげるということがとても大事なことだと思います」

ボランティアは “自己完結” できるよう備えを

“災害ボランティア活動”は、必要だと思う準備をすべて自分で行い、現地でも自分で対処できるような準備を、事前にいかにするかが大切だと岩井さんは話します。

岩井慶次さん
「自分ですべてが完結できるというのがボランティアの建て前です。自分自身が2次被害にあわない、けがをしないということがとても大事です。自分の身を自分で守るためにどういった備えをしておくかが重要だということです」

準備のポイント1 事前登録と準備手続き

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事前登録は、石川県災害ボランィア情報の特設サイトなどから行います。

情報は常に更新されているので、最新情報を確認しておきます。

その際、登録の前に「どの地域で」「どんな活動を募集しているか」自分でWEBなどを見て調べます。

できるかぎり現地に電話での問い合わせをしないようにすることが大切です。

岩井慶次さん
「もし皆さんが現地に電話をされますと、向こうの職員の方の電話対応をする時間を作ってしまうことになり、その間は現地での災害対応ができなくなってしまいます」

▽集合場所までの交通手段や宿泊場所なども事前に確認し、自分で手配します。宿泊先が用意されている活動地域もあるので最新情報を確認してください。

▽さらに大切なのが「ボランティア保険」です。活動中の自分自身のけがだけでなく損害なども補償するため必ず事前に加入してください。

「ボランティア保険」は最寄りの各市町村にある社会福祉協議会の窓口でも加入できるので、保険の期間や内容などを確認しておきます。

準備のポイント2 活動内容を考え自分にあった装備を

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大切なのが持ち物の準備です。

現地では余震も続いているため、けがをしないよう身を守るための装備や、活動内容が多岐にわたることを想定して必要な準備を進めます。

▽ヘルメットは必需品。
自分にあったサイズをホームセンターなどで買っておきます。

大切なのが、自分の血液型の情報を、ヘルメットのわかりやすい位置に明示しておくことです。万が一危険な作業でけがをしてしまい、話すことができない状態になった場合でも、この情報をもとにかけつけた救急隊員などが対応できます。

ヘルメットは奥までしっかりとかぶり、あごひもをしっかりと締めてください。

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▽手袋は数種類用意。
活動内容に応じて使い分けられるようさまざまな材質の手袋を用意しておきます。作業の効率化だけでなく、けがの予防など身を守るためにも必要です。

・水仕事などを想定し、ゴム製の手袋は厚手から薄手のものまで数種類用意します。けがの防止や感染症の予防にもつながります。

・革の手袋も大切です。片付けをするときに、木材の破片などでけがをしないよう、作業に応じて使い分けます。

・作業用の手袋は物を運ぶときに手が滑らないよう、できるだけゴムの付いたものを選びます。

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▽長靴も欠かせません。
靴底が厚く雪でも滑りにくいものを選びます。

被災地ではくぎや木材の破片など、さまざまなものが落ちています。靴の中には、踏み抜き防止用に厚みのある中敷きを入れておくと、くぎも貫通しにくくなります。

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▽マスクも数種類。
防じんマスクなども用意しておきます。

▽袋も数種類。
汚れたものなどを入れられるようジッパー付きの袋もあると便利です。

▽粘着テープは破れた服の補修やメモがわりにも使えます。

▽トイレットペーパーはさまざまな用途で使えます。
芯を抜けば、コンパクトに持ち運べます。

ボランティア活動に臨む心構え

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ボランティア活動に向かううえで大切な心の準備、最も大切な“災害ボランティア活動”の意義とは。

▽時には作業の手を止めて、現地の方の声に耳を傾ける。

▽復旧復興、生活の再建に向かうための「気持ちの後押し」をする。

▽ボランティアだからこそできる活動がある。

そのうえで、岩井さんはこう締めくくってくれました。

岩井慶次さん
「現地の方と目線を合わせてフェイス・トゥ・フェイスで話をしてほしいと思います。こちらからしゃべるのではなく、まずは被災した方の声を聞く、『傾聴』ということしてあげてほしいと思います。壊れたものをただ搬出すればいいというものではありません。地震が発生するまでは、すべて生活に使われていたものなのです。いろいろな思いが詰まっていると思います。被災した方の生活の糧だったという思いを大事にして、すべてのものを取り扱ってほしいと思います」