中国 ことしの国防費 日本円で34兆8000億円余 昨年比7.2%増

中国政府はことしの予算案を明らかにし、国防費は去年よりも7.2%増えて1兆6655億人民元、日本円で34兆8000億円余りで、軍備を増強する姿勢を示しました。

中国政府は、5日から始まった全人代=全国人民代表大会で審議されることしの予算案を明らかにしました。

このなかで国防費については、去年と比べて7.2%増え、1兆6655億人民元、日本円で34兆8000億円余りにのぼっています。

中国は東シナ海や南シナ海への海洋進出を強化していて、アメリカ海軍をしのぐ数の艦艇を保有しているとみられています。

アメリカ国防総省が去年まとめた報告書では、中国が保有する運用可能な核弾頭は推定で500発を超え、予測を上回る速さで核戦力を増強していると指摘しています。

また、軍と民間の資源を相互に利用する「軍民融合」の重点分野としてAI=人工知能の活用が掲げられ、研究も進められています。

ただ、公表されている国防費には外国からの装備購入費や研究開発費は含まれていないとみられ、実態を反映していないとも指摘されています。

全人代の報道官は4日、「GDPに占める中国の国防費の割合はアメリカなどの軍事大国と比べて常に低い」として国防費は経済力にみあったものだと主張していますが、経済の先行きに不透明感が広がる中でも伸び率は去年と同じ水準を維持していて、軍備を増強する姿勢を示しています。

中国が公表の国防費 世界第2位の規模に 国防費の伸び率は

中国が公表している国防費は、アメリカに次いで世界第2位の規模で、毎年、右肩上がりに増加しています。

一方、前の年と比べて、どれくらい増えたかを示す伸び率は、その時代によって変化してきました。

中国では、
▽1980年代に、外国から資本や技術を導入する改革開放政策が進み、
▽1989年以降、国防費は毎年10%を上回る伸び率で増え続けるようになりました。
この時期は、中国が海軍の近代化を目指して軍備増強を始めた時期とされています。

▽2012年に発足した習近平指導部は、兵力の大規模な削減など、軍の運用を効率化する改革を推し進めたほか、軍幹部の汚職の摘発に力を入れてきました。

経済成長率の鈍化もあり、
▽2016年以降の国防費の伸び率は10%を下回り、1桁となっています。

一方で、中国が公表してきた国防費には、外国からの装備購入費や研究開発費などは含まれていないとみられています。

アメリカ国防総省は分析の結果として、
▽2021年の中国の国防支出は、公表された国防費よりも「著しく多い」としています。

中国は、アメリカに対抗するため、「今世紀半ばまでに世界一流の軍隊を作る」という目標を掲げていて、今後も国防費を引き上げていくものとみられます。

林官房長官 “責任ある行動強く求めつつ対話を”

林官房長官は、午後の記者会見で「十分な透明性を欠いたまま、軍事力を広範かつ急速に増強させており、わが国と国際社会の平和と安定を確保し、法の支配に基づく国際秩序を強化するうえで、これまでにない最大の戦略的な挑戦だ」と指摘しました。

そのうえで、「日中両国は、地域と世界の平和と繁栄に対して大きな責任を有している。戦略的互恵関係を包括的に推進するとともに、責任ある行動を強く求めつつ対話を重ね、共通の課題には協力する建設的かつ安定的な関係を、双方の努力で構築していく」と述べました。

専門家 “経済が困難状況に直面も 軍事力拡大したい表れ”

中国の国防費について、台湾の国防部系のシンクタンク「国防安全研究院」で中国軍の動向に詳しい蘇紫雲氏は5日、NHKの取材に対し「国防費の増加は、経済が困難な状況に直面していても、軍事力を拡大したいことの表れだ。こうした動きは、周辺の国や世界に影響を及ぼすだろう」と分析しています。

そのうえで「とりわけ海軍が、遠洋で活動するようになれば、台湾、日本、韓国の海上輸送に対する脅威となる」と指摘しました。

国防費の主な使い道について蘇氏は、中国軍の士気をあげるための兵士の給与、戦闘機や艦船などの開発や調達、AI=人工知能や衛星などの宇宙分野における研究開発をあげました。

そのうえで、経済の先行きが不透明な中、軍需産業で雇用を生み出し、経済を支えるねらいもあると指摘しました。