LINEヤフー情報漏えい問題 総務省 経営体制に踏み込む行政指導

LINEの利用者の情報など、およそ51万件が漏えいしたとみられる問題で、総務省は、LINEヤフーに対し行政指導を行いました。漏えいの原因となった韓国の企業との資本関係も含めて、経営体制を見直す検討を求める異例の内容となっています。

LINEヤフーは、韓国のIT企業「ネイバー」で、業務委託先の会社がサイバー攻撃を受け、2023年11月にLINEの利用者や取引先の情報など、およそ44万件が漏えいした疑いがあると公表し、その後の調査で、件数が51万9000件に拡大したことを、ことし2月に明らかにしました。

この問題で、総務省は5日、LINEヤフーの出澤剛社長を呼び、通信の秘密の保護を定めた電気通信事業法に基づき、再発防止を求める行政指導を行いました。

さらに、行政指導では、
▽ネイバーに対する管理監督が不十分であり
▽その背景として、LINEヤフーの親会社にネイバーが50%出資している今の資本関係が影響していると指摘しました。

そのうえで会社に対し、今の資本関係も含めて経営体制の見直しを検討し、ネイバーとともに50%出資する通信大手のソフトバンクに対しても、必要な働きかけをするよう求めました。

総務省が行政指導で経営体制にまで踏み込む、異例の内容となっています。

LINEヤフーは「総務省からの行政指導を踏まえ、セキュリティガバナンス体制の強化に向けて検討します」とコメントしています。

LINEヤフー 出澤社長「安心して利用できる環境を作る」

行政指導の文書を受け取ったあと、LINEヤフーの出澤剛社長は記者団に対し、「ユーザーの皆様、関係者の皆様に多大なるご迷惑をおかけし、心よりおわびを申し上げます。いただいた指導をしっかりと実施して、再発防止に努めて、ユーザーの皆様に安心してご利用いただけるような環境を全社をあげてしっかり作ってまいります」と述べました。

松本総務相「より強い措置視野に監督」

松本総務大臣は5日の閣議のあとの会見で「改善がみられず同様の事案が発生する場合には、より強い措置も視野に入れ、監督していく」と述べ、総務省は、改善策の状況について今後、報告を求めることにしています。

過去にも個人情報の管理めぐる問題

利用者の数が去年12月末時点で9600万人にのぼるLINEをめぐっては、運営会社による個人情報の管理をめぐる問題が過去にも明らかになっています。

2021年3月には、システム管理を委託していた中国の会社の技術者4人が日本国内のサーバーに保管されている利用者の名前や電話番号などの個人情報にアクセスできる状態になっていたことが明らかになりました。

これを受けて、総務省は2021年4月、会社の管理体制や利用者への説明が十分ではなかったとして、当時の運営会社の「LINE」に対して電気通信事業法に基づいて行政指導を行っています。

さらに、これとは別に、LINEの画像や動画のほか、スマホ決済の「LINEPay」の取引状況などが韓国のデータセンターで管理されていたことも明らかになりました。

当時の親会社の「Zホールディングス」は、有識者による委員会を設置して原因の調査などを行い、データの国内移転など再発防止策の実施を進めてきたとしています。

一方、その後、明らかになった今回の情報漏えい問題では、現在の運営会社の「LINEヤフー」は先月、委託先の情報管理の強化や従業員情報を扱う認証基盤をネイバーと分離することなど再発防止策をまとめましたが、すべての対策を終えるのは2026年12月になるとして、早急な情報管理の徹底が求められていました。

LINEヤフー いまも「ネイバー」と間接的な資本関係

LINEはグループの再編などに伴って運営会社の形が変わりましたが、いまもLINEヤフーと韓国のIT企業「ネイバー」は間接的な資本関係にあります。

LINEは2011年に国内でサービスが開始され、当時の運営会社「NHNジャパン」は韓国のIT企業「ネイバー」の子会社でした。

2013年には「NHNジャパン」は「LINE」に社名を変更しましたが、ネイバーとの資本関係は維持されました。

その後、2021年3月にLINEとヤフーが経営統合し、さらにグループ再編を経て、2023年にLINEの運営会社が今の「LINEヤフー」となりました。

LINEヤフーの親会社は中間持ち株会社の「Aホールディングス」で、この親会社にはネイバーと通信大手のソフトバンクがそれぞれ50%出資し、いまもネイバーは間接的な資本関係にあります。