【詳細】戦闘休止交渉進展なし 米とWHOが合意求める

イスラエルとイスラム組織ハマスの間で続く戦闘の休止などに向けた交渉について、イスラエルは参加せずハマスと仲介国の協議が続いているとみられます。ハマス幹部からは「進展がない」とする不満の声も伝えられていて、交渉が進展するかは不透明さを増しています。

※イスラエルやパレスチナに関する日本時間3月5日の動きを随時、更新してお伝えします。

米副大統領 イスラエル前国防相と会談 “速やかな合意必要”

エジプトで行われている、イスラエルとイスラム組織ハマスとの戦闘休止などをめぐる交渉については、これまでに進展は伝えられていません。

アメリカのハリス副大統領は4日、イスラエルの戦時内閣に入っているガンツ前国防相とワシントンで会談しました。

ホワイトハウスの声明によりますと、副大統領はガザ地区の人道状況に深い懸念を示し、交渉での速やかな合意が必要だという認識を伝えたうえで、ガザ地区への人道支援を増やすため、さらなる措置を求めたということです。

ハリス副大統領は3日の演説でも強い表現でイスラエル側に対応を求めていて、ロイター通信などはアメリカ政府内の強い不満を表していると伝えています。

“ガザ北部唯一の小児科 危機的状況” WHO 改めて停戦訴え

WHOのテドロス事務局長は4日、SNSに投稿し、スタッフが先週末にガザ地区北部を訪れたことを明らかにしました。

このなかでテドロス事務局長は、北部で唯一小児科がある病院について、「患者が多すぎて対応しきれていない。食料不足で10人の子どもが命を落とし電力不足で集中治療室や新生児室などは危機的な状況にある」として、改めて停戦を求めました。

国連報告書 “音楽祭会場などで性暴力 拘束中の人質もか”

国連で紛争下の性暴力問題を担当するパッテン事務総長特別代表は報告書をまとめ、去年10月にイスラム組織ハマスがイスラエルを攻撃した際に、複数の場所で性暴力が行われたことを示す根拠が見つかったと発表しました。

報告書は、パッテン特別代表ら調査チームが2月14日までの17日間、イスラエルを訪問してとりまとめ、4日、発表しました。

調査では、イスラエル側の目撃者や医療従事者などへの聞き取り調査や映像や写真の分析を行ったとしています。

報告書では、「去年10月7日、音楽祭が行われていた会場など少なくとも3か所で、性暴力が行われたと信じるに足る合理的な根拠が見つかった」などと指摘し、中には非人道的で残虐な行為があった可能性もあるとしています。

さらに、ハマスに拘束されている人質も性暴力の被害を受けている可能性があるとしています。

一方、事実とは異なる情報が報道などで伝えられていたケースも確認されたということで、真相の解明には数年かかる可能性があり、完全には明らかにならないおそれもあるという見方を示しています。

UNRWA事務局長 資金支援を各国に訴え “子どもを犠牲にするな”

ガザ地区の支援を担っているUNRWA=国連パレスチナ難民救済事業機関をめぐっては、一部の職員が去年10月のハマスによるイスラエルへの攻撃に関与した疑いが出たことを受け、アメリカや日本など一部の国が資金の拠出を停止しています。

こうした中、UNRWAのラザリーニ事務局長は、ニューヨークで4日、すべての国連加盟国が参加できる国連総会の会合に出席して報告を行いました。

この中でラザリーニ事務局長は、ハマスによる攻撃に関与した疑いについては、事実関係を立証するための独立した調査が続けられているとする一方、ガザ地区の人道状況が深刻になる中、資金拠出の停止は、16か国であわせて4億5000万ドル、日本円にして670億円余りにのぼると説明しました。

そのうえで、「われわれはいま、ぎりぎり機能しているが、追加の資金がなければ未知の領域に入ることになり、それは世界の平和と安全に深刻な影響を及ぼす可能性がある」と強い危機感を示しました。

そして、UNRWAだけががれきの中で暮らす多くの子どもたちの教育や健康管理を担っていると強調し「UNRWAの解体は近視眼的だ。そんなことをすれば子どもたちの世代を犠牲にすることになり、憎しみや将来の紛争の種をまくことになる」と訴え、資金面での支援を各国に呼びかけました。

日本政府 ハマスの資金調達担う幹部ら8人追加制裁

イスラム組織ハマスなどによるイスラエルの一般市民を狙った攻撃や誘拐について、日本政府は、テロ攻撃であり、断固認められないと強く非難してきています。

政府は、こうした日本の立場を改めて明確にし、ハマスの収入源を絶つ取り組みを強化するため、資金調達を担う幹部5人と、組織に送金を行っている両替商3人を、新たに資産凍結の対象に加えるなどの追加制裁を科すことを、5日の閣議で決めました。

政府は、去年10月のハマスによるイスラエルへの攻撃以降、ハマス関係者への制裁を拡大していて、今回の措置で22人と5団体になりました。

林官房長官は記者会見で、「ハマスの資金源を絶ち、テロ資金の流れの抜け穴を作らない観点から、資産凍結の対象に追加した。今後も追加指定の必要性を適時適切に検討していく」と述べました。

イスラエル不参加の戦闘休止交渉 ハマス幹部から不満の声

イスラエルとハマスの間でカタールなどを仲介役として断続的に続いている戦闘の休止と人質の解放などの交渉では、ハマスの代表団が3日にエジプトの首都カイロに到着しています。

しかし、イスラエルのメディアは、ハマス側が生存している人質のリストを示さなかったことなどを理由にイスラエルはこれまでのところ代表団を派遣していないと伝えていて、ハマスと仲介国側だけで協議を続けているものとみられます。

交渉についてハマスの幹部は5日、ロイター通信に対して「イスラエルの代表団が参加しているかに関係なく協議は続く」と話したということです。

一方でレバノンのメディアは、ハマスが要求する完全な停戦やイスラエル軍のガザ地区からの撤退についてイスラエル側が回答をしておらず、「カイロでの協議では実質的な進展がない」というハマス幹部の不満の声を伝えています。

3月10日ごろに始まるイスラム教の断食月、ラマダンまでに戦闘の休止が実現するかは不透明さを増しています。

国連人口基金事務局長 “ガザ地区 母親も乳児も危険な状況”

世界の女性を取り巻く状況を調査している国連人口基金のトップがNHKの取材に応じ、戦闘が続くパレスチナのガザ地区では女性が子どもを産み育てることが極めて困難になっているほか、軍事侵攻が長期化するウクライナでは社会で活躍していた女性の多くが貧困に陥っているとして、強い危機感を示しました。

日本を訪れたUNFPA=国連人口基金のナタリア・カネム事務局長が4日、都内でNHKのインタビューに応じました。

この中でカネム事務局長は、戦闘が続くガザ地区では人々のもとに最低限の物資も届けられていないとしたうえで、とりわけ妊婦が置かれている状況について、食料や水も限られ十分な栄養をとれていないほか、毎日180人がお産しているものの医療物資の不足などから流産につながるケースも後を絶たない、と指摘しました。

そのうえで「母乳で子どもを育てるには栄養を与えられるかが重要だが、飲料水の確保すらままならない中、母親はほかの子どもの食料を確保するので精いっぱいで、自分たちは空腹に耐えている」と述べ、母親も乳児も危険な状況に置かれていると訴えました。

映像の世紀バタフライエフェクト イスラエル

3月11日(月)午後10:44までNHKプラスで配信中