中国 あすから全人代 恒例の閉幕後 首相会見 行わないことに

中国で5日から始まる全人代=全国人民代表大会で、閉幕後に行われるのが恒例となっていた首相の記者会見が、ことしは行われないことになりました。来年以降も当面は行わないとしています。

中国の北京で5日から重要政策を決める全人代が始まるのを前に4日、全人代の婁勤倹報道官が記者会見しました。

この中で婁報道官はことしの全人代は今月11日まで7日間の日程で開かれ、期間中、外交、経済、民生のテーマで3回の記者会見を行うほか、さまざまな取材機会を設けるなどと説明しました。

その一方で、閉幕後に行われるとみられていた李強首相の記者会見については行わないと明らかにしました。

特殊な事情がないかぎり、来年以降も当面、首相の記者会見は行わないとしています。

全人代の閉幕後の首相会見は、経済政策や国際情勢など幅広いテーマについて首相が直接答える場で、国営メディアによりますと、1988年から行われてきたということです。

中国共産党のナンバー2で、政府のトップを務める首相が、外国の記者も含めて直接発信する数少ない機会がなくなることで、習近平国家主席が国家運営のすべてを掌握する「習一強」をより印象づけた形です。

全人代開会を前に厳重な警備態勢

5日から全人代=全国人民代表大会が開かれるのを前に、会場のある北京では厳重な警備態勢が敷かれています。

全人代の会場となる人民大会堂へと続く大通りには、交差点や歩道沿いに警察車両や私服警官などが数多く配置され、通りがかった人を呼び止めてかばんの中を確認したり、停車中の車に積まれた荷物を確かめたりして、不審物がないか念入りに調べていました。

また、人民大会堂に面する天安門広場の周辺では、さらに多くの警察官などが警戒していて、隊列を組んで行進するなどものものしい雰囲気となっています。

北京の公安当局は、全人代の期間中の安全を確保するためとして、市内でドローンなどを飛ばすことを禁止しているほか、危険物とみなされる化学物質の運搬車両の立ち入りを禁止するなどの措置もとっていて、厳重な警備態勢が敷かれています。

◆全人代 閉幕後の首相会見とは

国営メディアなどによりますと、全人代の閉幕後の首相会見は、1988年に当時の李鵬首相が3人の副首相とともに記者会見に出席したのが始まりだということです。

▽翌1989年に、全人代の議事規則に記者会見の開催が明記され
▽1993年からは、閉幕後の首相による会見が、
毎年開催されるようになったということです。

これまで朱鎔基元首相や温家宝元首相など、歴代の首相が会見に臨み、中国の政策を国内外に発信してきました。

去年亡くなった李克強前首相が、2020年の全人代の閉幕後に行った会見では「中国では6億人の平均月収が1000人民元程度だ」と述べ、習近平国家主席が貧困対策の成果をアピールする中、収入の低い人が依然として多い実態を認めたとして注目を集めました。

専門家“中国経済の低迷に配慮か”

中国の全人代=全国人民代表大会で恒例となっていた閉幕後の首相会見が、ことしは行われないことについて、中国の政治や社会に詳しい神田外語大学の興梠一郎教授はNHKの取材に対し「ちょっと驚いたが、中国がいま置かれている状況を見ると記者会見を開きたくない理由も分かる」と述べました。

そして「若者の失業問題の深刻化や、株式市場それに不動産市場の低迷など、経済に関してはほとんどいい題材がない。そこを突っ込んで聞かれると回答しにくいのではないか」と述べ、中国経済の低迷に配慮した可能性があるという見方を示しました。

さらに、習近平国家主席への権力集中が強まる中で、政治的な配慮が働いた可能性もあると指摘しました。

そのうえで興梠教授は「首相が政府を代表してオープンに受け答えしているというイメージが大事だ。会見を取りやめることが国内外に与える影響は非常に大きい」と述べ、今後、中国の投資環境に対する見方などにも影響する可能性があるという見方を示しました。