能登半島北部 診療所の約7割が再開も 立て直しに大きな課題

能登半島地震から2か月がたちました。被害が大きかった能登半島北部では診療所のおよそ7割が再開したものの、その一部では機器が壊れ検査を行えないなど診療を制限せざるをえない厳しい状態が続いていることがNHKの取材でわかりました。今後、被災地の医療をどう立て直していくのか大きな課題となっています。

NHKが能登北部医師会をはじめ、診療所を運営している公立病院などに取材したところ、地震の発生から2か月たった3月1日までに、輪島市、珠洲市、穴水町、能登町にある35の診療所のうち、およそ7割に当たる26の診療所が再開したことが確認できました。

しかし、再開した診療所の中には、確認できただけでもレントゲンなどの機器が壊れたままのところが2か所、断水の影響で内視鏡が使えないところが5か所あり一部の検査を行えなくなっている診療所があることがわかりました。

また、看護師や事務職員が被災して人手が足りなくなるなどして、26の診療所の3割余りで診療を、かかりつけの患者にしぼったり、薬の処方だけにとどめたりするなど制限せざるをえない厳しい状態が続いているということです。

一方、再開できていない9か所の診療所は、建物が壊れたり、診療所につながる道路が復旧していなかったりしていて、医療を提供できるめどが立っていないということです。

能登半島北部では、もともと医師が不足していた中で今回の地震が発生し、今後、医療をどう立て直していくのか大きな課題となっています。

日本医師会「医療機能維持のため支援を」

齊藤典才 医師

日本医師会の災害医療チーム=JMATの石川県の調整本部長を務める齊藤典才医師は能登半島地震から2か月の被災地の医療の状況について、「現時点で被災地は水道がまだ復旧しておらず、下水も流せないなど厳しい地区が多い。医療機能も、機器の故障などから検査が十分にできない中で、本当になんとか耐え忍んでいるのが現状だ。復旧復興の道のりはまだまだ長い」と話していました。

さらに課題として、「患者数が地震前から大きく減っている地域もあり、今後、医療を続けて経営が成り立つのかどうかや、看護師や医療事務が離職した人手不足などで、先が見通せない」と指摘しました。

そのうえで、「患者さんが戻ってくることを見据えて開業医は頑張っているが、能登北部はもともと医師が非常に少ない地域だ。中には高齢の医師もいて、今月で閉院するところも出てきている。重要なインフラの1つである医療機能を維持するために、公的病院だけではなく、開業医も引き続き頑張れるように、我々も支援したいし、国や県にも支援してもらいたい」と訴えていました。

能登町の診療所では時間短縮し患者受け入れ

能登町にある内科などの診療所では、地震のあと2人いた看護師のうち1人が仕事を休まざるをえなくなりましたが、地域の住民のためにできるだけ続けようと午後6時までとしていた診療時間を3時間短縮し、患者を受け入れています。

2日も朝から患者が相次いで受診し、このうち転倒してひざをけがしたという80代の女性の診察では、瀬島照弘院長がひざにガーゼを貼った上で、自宅で過ごす際の注意点などを伝えていました。

診療所のある能登町ではいまも一部で断水が続いていて、診療所でも、手を洗うときにはタンクに入れた水を使用しています。

患者の数は地震の前と比べておよそ1割減ったということです。

診察を受けた女性は、「地震の影響で休診している診療所もあると聞きますが、すぐに診察してもらえてとても感謝しています。診察も関わり方が丁寧で、安心できます」と話していました。

地震から2か月がたち、瀬島院長が課題だと感じているのが重症患者が出た場合の対応です。

新型コロナやインフルエンザが悪化するなどして受診した患者に入院が必要な場合、診療所で応急的な処置をした上で設備や人員が整った病院に搬送する必要があります。

地域では人手不足から診療を短縮したり休止したりする医療機関が相次いでいて、以前のように対応できるか不安を感じているといいます。

瀬島院長は、「看護師が全員退職して医師1人だったり、建物が壊れて仮設のプレハブで診療したりしているところもあり、地域の医療機関はどこも厳しい状況の中でできる診療を頑張っています。入院や検査、手術の体制が十分に整っていない今の状況で例えば、避難所で感染症が拡大した場合などに対応できるのか懸念しています」と話していました。