能登半島地震 石川県の“在宅避難者”4500人超 実態の把握急ぐ

能登半島地震のあと、断水などが続く自宅で不自由な生活を送る“在宅避難者”が少なくとも4500人に上り、実際にはさらに多くの人たちが在宅避難を続けていると見られることが石川県への取材で分かりました。中には十分な支援が届いていない人もいる可能性があり、県は実態の把握を急ぐ方針です。

能登半島地震で石川県内では住宅7万5000棟余りが被害を受け、地震の発生から2か月がたっても1万人以上が避難所での避難生活を余儀なくされています。

一方で、避難所に身を寄せていなくても水道などのライフラインが復旧しないまま自宅にとどまって生活を続ける、在宅避難者も多くいると見られ、県が実態の把握に乗り出しています。

避難所以外の場所で過ごす人に対して、県が電話やLINEで居場所などを登録するよう呼びかけた結果、先月末の時点で在宅避難者として登録された人の数が4557人に上ったということです。

ただ、登録作業が困難な高齢者がいることも考えられるため、県はさらに多くの人が在宅避難を続けていると見ています。

地震の発生から2か月がたち、避難生活が長期化する中で、県は「在宅避難者には支援が届きにくく、災害関連死にもつながりかねない」と懸念を強めていて、先月上旬からはケアマネージャーなどを巡回させるなど、実態の把握を急いでいます。

“在宅避難”続ける高齢者 先行き見えず 不安広がる

“在宅避難”を続ける高齢者の間では、地震から2か月がたっても先行きが見えない現状や、徐々に支援の手が届かなくなることへの不安が広がっています。

輪島市二勢町の70代以上の高齢者が多く暮らす市営住宅は、断水が続いているものの建物の被害は大きくありませんでした。

ここに暮らす人たちは避難所での感染症のリスクをおそれて自宅にとどまる人などが少なくありません。

近くの避難所にはレトルト食品や薬、下着などの支援物資が届くため、住民はこうした支援を頼りに在宅での生活を続けてきました。

市営住宅に住む大塩政一さん(74)は、40世帯余りが住む棟の責任者を務めていて、この棟でもおよそ20世帯が自宅で暮らし続けているということです。

大塩さんは、避難所まで支援物資などを取りに行って高齢の住民の部屋に届けてきたということですが、輪島市は職員の態勢の縮小を理由に、今月から、支援物資の届け先を避難者が多い指定避難所に集約することを決めたため、近くの避難所に物資は届かなくなりました。

大塩さんは「今後は自分で買い出しに行かないといけないので困ると思います」と話していました。

ただ、買い出しにも簡単には行けない事情があります。

以前はコミュニティーバスを使えば5分ほどで生活用品や食料品を買いに行くことができましたが、地震による道路の被害で運行が休止され、再開の見通しは立っていません。

輪島市は先月から無料の巡回バスの運行を始めましたが、コミュニティーバスと比べて本数は半分程度に減っています。

市営住宅に住む70代の母親と40代の娘は片道30分かけて徒歩で買い出しに行っていて、足が不自由な母親は、亀裂が入った道路を手押し車を引いて進まなければなりません。

40代の娘は「コミュニティーバスはスーパーの前にも停車するし利用しやすかったが、巡回バスは朝の便を逃すと昼すぎまで来ないので、私たちには利用しづらいです。大きな荷物を持つので30分歩くのはきついです」と話していました。

長引く断水も住民たちの生活に影響を及ぼしています。

市営住宅に住む86歳の女性は、地震のあと2か月間、入浴できていないといいます。

歩いて20分ほどの避難所に行けば入浴支援を受けることができますが、湯冷めして体調を崩すことなどが不安で、利用していないということです。

女性は「体調を壊すほどではないので私は大丈夫です。断水が解消するまで我慢するしかないと思います」と話していました。

責任者を務める大塩さんは「年金暮らしの高齢者も多く、日常生活が戻らない中で、これからどうなるのだろうと不安になります。家が全壊した人だけでなく在宅で過ごせる人にも少しでも支援が届けばありがたい」と話していました。

在宅避難を続ける人たちにとって、不自由な生活の終わりが見えないことが、大きな不安となっています。