【詳細】ガザ地区北部 支援物資待ちの住民115人が死亡

ガザ地区北部で支援物資を待っていた100人以上の住民がイスラエル軍の攻撃で死亡したと現地の保健当局が発表しました。

ガザ地区北部では支援物資の搬入が困難な状況が続いていて、住民からは「私たちは死にかけている」など悲痛な声も聞かれ、危機的な状況となっています。

※イスラエルやパレスチナに関する日本時間3月2日の動きを随時、更新してお伝えします。

国連の担当者「銃撃によるけが人がいた」

ガザ地区の保健当局が29日、支援物資を待っていた100人以上の住民がイスラエル軍の攻撃で死亡したと発表したことについて、多くの死傷者が運び込まれた病院を訪れた国連の担当者は「銃撃によるけが人がいた」と証言しました。

ガザ地区で活動するOCHA=国連人道問題調整事務所の担当者は1日、SNSにビデオメッセージを投稿し、北部のガザ市にあるシファ病院を訪れた際の様子を明らかにしました。

この中で、担当者は「シファ病院では29日の攻撃で負傷した200人以上の人たちが治療を受けている。銃撃によるけが人がいた」と述べました。

また、アメリカのAP通信は別の病院の関係者の話しとして、運び込まれた176人のけが人のうち142人が銃撃によるもので、残る34人が押し倒されるなどしたためのけがだったと伝えています。

一方、イスラエル軍は暴徒化した住民を追い払おうと警告のため発砲したが、物資を求めて集まった人は攻撃していないと主張していて、国際社会からは事件への非難や真相を求める声が相次いでいます。

ハマス軍事部門「イスラエル軍の攻撃で人質新たに7人死亡」

イスラム組織ハマスの軍事部門カッサム旅団は1日、声明を発表し、イスラエル軍の攻撃によってこの数週間で7人の人質が新たに死亡したことが明らかになったと主張しました。

また、声明では、戦闘が始まってからイスラエル軍の攻撃によって死亡した人質はこれまでに70人以上にのぼるとみられるとも主張しています。

ガザ地区ではいまも130人以上が人質にとらわれているとされていますが、これまでのところ、イスラエル側の反応はでておらず、ハマス側の主張の信ぴょう性は分かっていません。

イスラエル軍の報道官は先月6日、人質のうち31人の死亡が確認されたとしています。

“ハマスが人質リスト明らかにしないかぎり交渉行わず”

イスラエルが戦闘休止などをめぐる交渉の仲介役を務めるエジプトとカタールに対し、ハマスが生存する人質のリストを明らかにしないかぎり、新たな交渉は行わないと伝えたとアメリカのニュースサイト、アクシオスが1日、報じました。

アクシオスによりますと、イスラエルの政府高官は「イスラエルがどの人質が生存しているかというリストを受け取るまで、また、人質1人に対して刑務所に収容しているパレスチナ人を何人釈放するのかという“比率”についてハマスからの回答がないかぎり、再協議を始める意味はない」と述べたということです。

バイデン大統領“ガザ地区 数日中に追加の食料や物資投下”

ガザ地区では食料などの不足が深刻化していて、支援物資の搬入が南部の2か所の検問所からしか認められていないため、とりわけ北部への搬入は困難な状況が続いています。

アメリカのバイデン大統領は1日、イタリアのメローニ首相とホワイトハウスで会談し、冒頭でガザ地区の状況に言及しました。

この中でバイデン大統領は「罪のない人々がひどい戦争に巻き込まれ、家族を養うこともできず、絶望している。ガザ地区への支援物資の搬入は到底、十分とは言えない」と指摘しました。

そして、「数日中に追加の食料や物資を空から投下する」と述べて、上空から支援物資の投下を行うと表明しました。

さらに、バイデン大統領は「ほかのルートを開くことも目指す」と述べて、多くの支援物資を輸送するための海上ルートの確立にも取り組む考えを示しました。

支援物資の投下について、ホワイトハウスで安全保障分野の広報を担当するカービー大統領補佐官は「1回で終わるものではなく、さらなる空輸が計画され、実行される」と述べて、複数回、実施されるという見通しを示しました。

一方、バイデン大統領は戦闘の休止と人質の解放の交渉について、記者団から、今月10日ごろに始まるイスラム教の断食月、ラマダンまでに合意に達するか問われたのに対し、「そう願っている。われわれは一生懸命取り組んでいるが、まだそこに達していない」と述べました。

ガザ地区北部 支援物資待ちの住民115人が死亡

ガザ地区の保健当局は29日、北部ガザ市で支援物資を運ぶトラックを待っていた住民がイスラエル軍に攻撃され、115人が死亡し、760人がけがをしたと発表しました。

イスラエル軍は暴徒化した住民を追い払おうと警告のため発砲したものの、物資を求めて集まった人には攻撃していないと主張していますが、国際社会からはイスラエルを非難する声があがっています。

ガザ地区北部にはいまも数十万人が住んでいるとみられていますが、人道支援物資の搬入は南部の2か所の検問所からしか認められていないため、最も離れた北部への搬入は困難な状況が続いています。

NHKガザ事務所のカメラマンが28日にガザ市などで撮影した映像では、住民たちが燃料となるまきや食料を調達するため歩き回ったり、複数の家族が協力してスープなどを調理したりして飢えをしのいでいる様子が確認できます。

避難生活を送っている女性は「私たちは死にかけています。ガザ地区北部にはパンも砂糖も豆も何もありません。私たちは飢えに直面しています」と話すなど、住民からは悲痛な声が聞かれました。

ガザ地区ではイスラエル軍による攻撃が続いていて、現地の保健当局は1日、過去24時間に193人が死亡し、これまでの死者は3万228人にのぼったとしています。

WHO事務局長 ガザ北部シファ病院に「燃料 医薬品届けた」SNSに

WHO=世界保健機関のテドロス事務局長は1日、ガザ地区北部にあるシファ病院に「1万9000リットルの燃料や150人分の医薬品、重度の栄養失調に苦しむ50人の子どもの治療に必要な物資をようやく届けることができた」とSNSに投稿しました。

テドロス事務局長は病院では240人以上の患者が治療を受けているとした上で、SNSに投稿された写真では部屋の中に所狭しとストレッチャーが置かれているほか、床の上に横になる人の姿や、天井からいくつもの点滴をぶら下げて治療しているような様子が確認できます。

テドロス事務局長は「医療品や燃料、水、食料が不足していて、医療サービスは非常に限られている。病院周辺の破壊状況はことばでは言い表せない」として、改めて一刻も早い停戦を訴えました。

WHO報道官「食料と物資 あまりに不足しこの状況生まれている」

WHO=世界保健機関の報道官は1日、支援物資が行き届いていない現地の状況を踏まえ、改めて停戦を求めました。

このなかで、WHOのリンドマイヤー報道官は「人々は食べ物や水、あらゆる物資を必死に求めている。食料と物資があまりに不足しているためにこうした状況が生まれている。食料の供給は意図的に断たれていることを忘れてはならない」と述べ、ガザ地区北部で支援物資の搬入が困難な状況が続き、人道状況の悪化が続いていると訴えました。

また、ガザ地区の保健当局は、ガザ地区北部では栄養失調と脱水症状で、これまでに子ども10人が死亡したとしています。

リンドマイヤー報道官は「ガザ全土で3万人が死亡したのと同様に悲しいことだ」と述べたうえで、「今すぐに停戦が必要だ。停戦が実現したら、ガザの人々を助けるために十分で安定した食料と物資の供給も必要だということを忘れてはならない」と話しました。

イギリス キャメロン外相「二度とあってはならない」と声明

ガザ地区で支援物資を待っていた100人以上の住民が死亡したという現地からの発表を受けて、イギリスのキャメロン外相は1日、声明を発表し、「二度とこのようなことがあってはならない」と強調しました。

そして、「ガザに先月入ったトラックの数は1月の半分しかなかった。これは断じて容認できない。イスラエルにはより多くの人道支援がガザの人たちに届くようにする義務がある」として、イスラエルに対し、より多くの検問所を早急に開放するなど、対応を求めています。

EU UNRWAへの資金拠出継続へ 赤十字通じた支援など多様化も

EU=ヨーロッパ連合は、UNRWA=国連パレスチナ難民救済事業機関の一部の職員がハマスによるイスラエルへの攻撃に関与した疑いを受けて、3月以降の資金拠出について明確にしていませんでした。

しかし、ガザ地区の人道危機が深まるなか、1日、ことしの拠出額8200万ユーロ、日本円にして130億円余りの一部、80億円余りについて、来週、支払い手続きを行うと発表しました。

EUはこの決定について、UNRWAとの間で内部調査を行う部署や管理の強化で合意したことなどを踏まえたものだとしていて、残りの拠出金は合意の履行状況に応じて支払うとしています。

一方で、EUはUNRWAとは別に新たに110億円余りを赤十字や赤新月社などを通じてパレスチナの人々への支援にあてると発表しました。

これについて、EUで近隣国に対する政策などを担当するバールヘイ委員はSNSへの投稿で、「パレスチナの人々への支援を多様化するものだ」と説明しています。

また、EUのミシェル大統領は支援物資を待っていた100人以上がイスラエル軍の攻撃で死亡したとするガザ地区の保健当局の発表について、SNSへの投稿で1日、「罪のない市民が殺されたことにショックを受け、嫌悪感を抱いた」としたうえで、独立した調査を速やかに行い、責任を追及することが必要だという考えを示しました。