「珠洲が一番いい場所」能登半島地震から2か月 地元に残る男性

能登半島地震の発生から1日で2か月です。石川県珠洲市で古くからの銭湯を受け継いできた男性は、被災後も地元に残り、「珠洲が一番いい場所で、どこにも移りたくない」と住み慣れた場所への強い思いがあります。

珠洲市正院町の坂口清次さん(84)は、祖父の代から3代にわたり自宅の隣で銭湯を経営しています。

銭湯は大正10年に祖父が開いた100年以上続くもので、坂口さんは、27歳のときに父親から受け継ぎ、50年以上にわたって番台に座ってきました。

銭湯は今回の地震によって建物の1階部分が潰れるなどして再開の見通しはたっていません。

自宅も傾くなどして妻は金沢市に住む子どものところに避難していますが、坂口さんは思い入れのある場所を離れたくないと地元に残り、今も銭湯を経営するかたわら車中泊での生活を続けています。

停電と断水が続く中、倒壊した銭湯の片づけを行い、銭湯で保管していた地元の秋祭りに使われる輪島塗の道具などを柱の隙間から見つけたということです。

ただ、強い思いが残る銭湯は屋根から大きく崩れているため、すべてのものを捜し出すのは難しいと考えています。

坂口さんは「小学校のときから手伝いをしてきた思い入れのある銭湯です。ガシャンと潰れてしまいましたが、崩れた建物から何か1つ出てくると、『こんなことがあったね』と家族と昔の思い出話をしています」と話しています。

そして、地元に残る理由については「珠洲には山も海もあり、ここがやっぱり一番いい場所です。どこにも移りたくないです」と住み慣れた場所への強い思いを語っていました。