長崎「被爆2世」が国を訴えた裁判2審 1審に続き訴え退ける

長崎で被爆した人を親に持つ「被爆2世」が、被爆者の援護を定めた法律の適用対象となっていないのは憲法に違反すると主張して国を訴えた裁判で、2審の福岡高等裁判所は、「被爆2世については原爆による放射線の遺伝的影響は証明されていない。被爆者などと同じ援護をしないことが差別的な扱いとはいえず憲法に違反しない」として1審に続いて訴えを退けました。

国は「被爆者援護法」に基づいて被爆者に医療費の自己負担をなくすなどの支援をしていますが、被爆者を親に持つ「被爆2世」はこの法律の適用対象にしていません。

これについて、長崎の被爆2世など28人が「放射線の遺伝的影響の可能性が否定できないのに援護の対象となっていないのは法の下の平等を定めた憲法に違反する」と主張して国に損害賠償を求めていました。

1審の長崎地方裁判所はおととし「遺伝的影響についてはその可能性を否定できないと言うにとどまる」などとして訴えを退け、原告側が控訴していました。

29日の2審の判決で福岡高等裁判所の高瀬順久 裁判長は「被爆2世については、原爆による放射線の遺伝的影響は証明されていない。放射線の影響は、被爆2世と被爆者などとを比較した場合、医学的、科学的知見の現状においては顕著な違いがある」と指摘しました。

そのうえで「被爆者などと同じ援護の対象に含めないことが差別的な扱いとはいえず、憲法に違反しない」として1審に続いて訴えを退けました。

「被爆2世」とは

「被爆2世」は、両親または父母のどちらかが被爆者で、原爆投下からおよそ10か月後、広島の場合は昭和21年6月1日以降、長崎の場合は昭和21年6月4日以降に生まれた人で、全国で数十万人いると推定されていますが正確な人数は分かっていません。

▽「被爆者」は被爆者援護法に基づいて国が医療費を負担するのに対し
▽「被爆2世」は基本的な健康診断を年に1回無料で受けられるのみとなっています。

「被爆2世」の中には、親の被爆によって何らかの影響がみずからに及んでいるのではないかと健康面を含めて不安を抱える人も多くいます。

7年前の2017年、広島と長崎で被爆2世たちが被爆者援護法の援護の対象に加えるべきだなどと主張して訴えを起こし、1審の長崎地方裁判所はおととし、広島地方裁判所は去年、それぞれ訴えを退け、いずれも原告側が控訴していました。

原告側「最悪の判決の印象」上告する方針

判決のあと、原告側は福岡市東区で報告会を開きました。

この中で弁護団長を務める在間秀和弁護士は、「予想した中で最悪の判決の印象だ。私たちが提起した問題のについて正面から受け止めようとするのではなく、いかに私たちの主張を排斥するかに腐心した判決だ」と述べました。

また、原告団の代表を務める崎山昇さんは「ひどい判決で福岡高裁は、長崎地裁や広島地裁よりもっと後退した判断を示した。皆さんと上告をして裁判の場で、引き続き闘っていきたい」と述べて上告する方針を明らかにしました。