NTT西日本 森林社長 3月末で退任 子会社の個人情報不正流出で

「NTT西日本」の森林正彰社長は、29日に開いた記者会見で、子会社の元派遣社員が900万件を超える個人情報を不正に流出させた問題の責任をとって、3月末で退任する意向を明らかにしました。

この問題では、NTT西日本の子会社の「NTTビジネスソリューションズ」で、コールセンターシステムの運用保守を担当していた元派遣社員が去年2月までの10年近くにわたって委託元の69の自治体や企業などが保有する個人情報、およそ928万件を不正に流出させていました。

これについて、NTT西日本の森林正彰社長は、29日に大阪市内で開いた記者会見で、「この社会的責任は極めて重大だ」などと述べ、3月末で退任する意向を示しました。

森林氏は、おととし6月に社長に就任していて、就任から1年8か月で退任の意向を固めた形です。

そのうえで、森林氏は、今後、関係する役員や社員の処分も行う考えを明らかにしました。

この問題をめぐっては、おととし4月にマーケティング事業を手がけるNTT西日本の別の子会社に、取引先から顧客情報の流出について指摘が寄せられ、子会社2社が共同で社内調査を行いましたが、不正を見抜けず、被害の拡大を招きました。

これに関連し、NTT西日本は外部の弁護士でつくる調査チームによる検証結果を公表し、社内調査でログの改変や虚偽回答などの不適切な対応が行われていたことを明らかにしました。

そのうえで、NTT西日本は、データの持ち出しなどへのチェック体制を強化するとともに、情報セキュリティーに関する部署を統合して新たな組織を立ち上げたうえで、100人規模まで増員することなどを柱とした再発防止策をまとめ、これらの対策に3年程度でおよそ100億円を投じるとしています。

元派遣社員は企業の顧客情報を不正に持ち出し名簿業者に漏えいしたとして不正競争防止法違反の罪で起訴されています。

森林社長「過去の調査 ずさんで重大な問題あった」

森林社長は29日の記者会見で、おととし4月に顧客からの情報流出の指摘を受けて、子会社が行った社内調査について、「過去の調査の内容はずさんなもので、重大な問題があった。この時点で事実が判明していれば、もう少し早く解決したことを考えると、非常に残念だ」と述べました。

また、森林社長は「今回、お客様情報の不正な持ち出しによって多くの皆様に多大なご迷惑をおかけしてしまった。この社会的責任は極めて重大であり、その責任をとって3月末で退任する」と述べました。

そのうえで、森林社長は「私どもは不正に情報流出をされていた側なので、ある意味、被害者になる。しかし、そういった行為がやりやすい環境になっていて、それが10年以上続いていたことは会社として反省すべき点だ。元派遣社員に対して、民事訴訟で責任追及することを検討している」と述べました。

調査チーム弁護士 “子会社による社内調査 極めてずさん”

今回の個人情報の流出を受けてNTT西日本が設置した調査チームの畝本毅弁護士は「子会社による社内調査は『調査』と呼ぶには似ても似つかず、『作業』でしかなかった。事なかれ主義的な対応が繰り返されたほか、一部で虚偽回答がなされるなど、極めてずさんなものだった」と述べました。

そのうえで、畝本氏は「会社として猛省してほしい。再発防止策をじっくり作ってもらい、信頼を取り戻していく必要がある」と述べました。

情報流出の経緯は

NTT西日本の子会社、「NTTビジネスソリューションズ」でコールセンターシステムの運用保守業務を担当していた元派遣社員が去年2月までの10年近くにわたって情報を不正に持ち出していました。

その後の調査で、関係する自治体や団体が相次いで明らかになり、流出した個人情報は委託元の69の自治体や企業などが保有する合わせておよそ928万件に上っています。

会社側によりますと、この元派遣社員には顧客情報の入ったサーバーにアクセスする権限が与えられていて、サーバーから自身が業務で使用する端末に情報をダウンロードできるようになっていました。

そして、その端末にはUSBメモリなどの外部記録媒体を接続でき、情報を持ち出すこともできたということです。

おととし4月にはマーケティング事業を手がけるNTT西日本の別の子会社に、取引先から「自社の顧客情報が流出している可能性があるので、社内調査を実施してほしい」という依頼があり、会社が調査をしたものの、不正に気付けず、被害が拡大する結果となりました。